第147号
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瀋陽ハイテク産業開発区:スマート化をコアに、中国東北地区におけるイノベーションの要地に

2018年12月3日 郝暁明(科技日報記者)、庄昕(科技日報通信員)

 先日、瀋陽ハイテク産業開発区中国科学院と瀋陽市政府が共同で設立する中国科学院大学ロボット・スマート製造学院が、始動した。当学院は、中国科学院大学(略称「国科大」)の二級学院として、中国のロボットとスマート製造分野のハイレベル人材の育成拠点となるだろう。

 遼寧省では先ごろ、省内初の国家製造業イノベーションセンターとして、国家ロボットイノベーションセンターが中国科学院瀋陽自動化研究所内に設立されたばかりだ。国家ロボットイノベーションセンターと双璧をなすかのように、敷地面積637ムー(約42万5千平方キロメートル)、総投資額50億元超のいわば「ロボット未来城」として当学院が着工したことにより、「雨林式」という形容詞のとおりに産業拠点が林立し、高度に発達したロボット産業エコシステムが瀋陽で構築されようとしている。

 当初は広大な野菜畑だったこの瀋陽市の市街地も、今やスマート化、知識集約型、スマート製造によって牽引される「中国智谷」(中国のインテリジェント・バレー)となった。20年余りの発展を経て、瀋陽ハイテク産業開発区は、今まさに中国東北地区の科学技術イノベーションセンターの中でもスマート化の「コア」として台頭しようとしている。

時勢に逆行、人材集めに秘訣あり

 今年は創業人材が3000人以上増加―

 瀋陽国家ハイテク産業開発区は1991年に正式に設立された。今や、同区は瀋陽市の中でも人口構成が最も若く、人口成長のスピードが最も速く、ハイエンド人材が集中する行政区となっている。中国東北地区では人材流出問題が深刻だが、それにも関わらず同区では今年、イノベーション人材が3000人以上増加した。

 産業発展によって人材を集め、政策制定によって人材を誘致し、投資拡大によって人材を支援する。これが、当地の人材集めの秘訣だ。

 瀋本産業大道沿いにある瀋陽新松スマート産業パークでは、「ロボットによるロボット製造」が行われるスマート製造のパイロットラインがまさに建設中である。ロボット生産ラインが最も整ったメーカーとして、またデジタル化スマート製造設備が世界で最も整備されたハイテク上場企業として、新松機器人公司の時価総額は世界のロボットメーカーのベスト3に入っている。近年、同社の発展に牽引される形で、瀋陽のロボット産業の年平均生産高も2桁成長を続けている。今年1月から9月の生産高は64.3億元で前年同期比12%の成長であった。これに伴って必要となる多くの専門的人材が集まってくる。

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6軸パラレルリンクロボットのデモンストレーションを手動で行う新松機器人公司のエンジニア

 瀋陽ハイテク産業開発区の共産党工作委員会や管理委員会は特色ある産業の発展に力を入れるとともに、人材を発展における最重要リソースと重要サポートと位置づけて体制・制度革新で模索を続け、競争優位産業の人材と各レベルの人材が集まる人材発展の構想を作り上げた。このため、同区は5000万元の人材特別資金を設定して人材リソースの開発や人材投資を支援するほか、20億元余りの産業誘致ファンドを創設し、企業のシード期、成長期、成熟期並びに合併再編等の各段階における融資ニーズを満たす「全ライフサイクル型」のファンドサービス体制を構築し、リスク資金プールを設置し、中小企業向け融資という難題の解決に効果を上げている。

 瀋陽市渾南区の共産党委員会常務委員であり、同委員会組織部部長でもある李東江氏によれば、「現在、ロボットやソフトウェア、IC装置、バイオ・医薬等の分野に関しては、国家レベル・省市レベルのハイエンド人材を区全体で600人以上、業界をリードする実業家を10人以上擁している」。今年、同区では区全体で1255万元の一時金を出して、企業の幹部や科学技術の中堅人材並びに区レベルの優秀な専門家を手厚く褒賞した。渾南区に根ざしたイノベーションや創業に向けて、彼らの意欲をかき立てるのがその目的だ。

優れたエコシステムの構築により、イノベーション・創業を成長コースに

 イノベーション・創業の媒体として、渾南区内に54社を誘致―

 瀋陽オリンピックセンターを中心とする商業地域に「瀋陽·中国智谷双創街」(瀋陽·中国インテリジェント・バレーのイノベーション・創業街)というビジネス街が創設された。これは、中国東北地区で初となるイノベーション・創業をテーマとする特色ある区域だ。これまでのインキュベーターや創業空間との違いは、入居するすべての会社の扉が通り沿いに設置されていることであり、このおかげで起業家たちはあたかも隣人同士でおしゃべりをするように、近隣の企業とアイディアを出し合い、創業についていつでも話し合うことができる。

 創業の道は険しく、スタートアップ期の困難はさらに大きい。創業初心者にとって必要なのは、創業に精力を傾け、雑事に振り回されないことだ。「会社の設立当初は、工商関係や税務関係の簡単な手続でさえ、訳が分からず呆然としたものだ」。瀋陽華数科技有限公司の総経理を務める衣運通氏は、スタートアップ当初の困惑を今でもありありと思い出すことができる。

 2018年、華数科技は双創街に入居した。衣運通氏は「このビジネス街に充満する創業文化やイノベーションのムードが、企業リソースのマッチングや人材誘致に非常に役立った。双創街の職員は政府の補助金手続や工商税務、人力資源社会保障部からの情報集め等の仕事も手伝ってくれた」と語り、当時の選択は幸いだったと喜ぶ。

「若い人たちは個性を際立たせるのが好きだから、我々はデモンストレーションのための空間を設定したまでだ」と説明するのは渾南区科技経信局局長の沈小舒氏である。双創街は創業者の対外窓口であり、創業のスピリットをかき立て、交流する場所でもあり、また、イノベーション・創業のための整備されたエコシステムの形成を加速する場でもある。

 展示型創業ビジネス街や共同成長型創業パーク、全産業チェーン・サービス型基地、「創業・就業エコシステム」を理念とするインキュベーター等、この2年間という短い期間に、国家・省市級のインキュベーターやマス・イノベーション空間が瀋陽ハイテク産業開発区に相次いで入居し、イノベーション型発展のためのエコシステムや創業の成功コースが形成されつつある。

 近年、瀋陽ハイテク産業開発区はイノベーション・創業を強力に推進しており、「1+1+1+6+10+N」というイノベーション・創業の発展構想が確立されている。現時点で区内にはイノベーション・創業媒体が54社あり、これには国家級インキュベーターが6社、国家級マス・イノベーション空間が12社含まれている。中国初で、東北地区唯一の地域性「イノベーション・創業モデル基地」として、渾南区(瀋陽ハイテク産業開発区)はすでに瀋陽市で成長性が最も高く、投資熱が最も高く、イノベーションの活力が最も充足し、インフラ設備が最も整備され、政策優遇が最も集中した中心市街地である上に、瀋陽市の国際化ビジネス環境先導区やハイテク産業集積区、国家イノベーション・創業モデル区、瀋陽近代化中心市街地のモデル地区を建設するという重責も担っている。

サービスを統合し、イノベーション支援への「暖かい」環境を創出せよ

 累計サービス総額22.24億元を実現―

 国家レベルで最初の科学技術サービス産業の地域モデルとして、瀋陽ハイテク産業開発区は、科学技術サービスプラットフォームを構築し、科学技術サービスリソースを統合し、科学技術サービスの新たな業態を育成することによって、科学技術+インターネット+金融+インキュベーションによる新たなサービスモデルを構築した。

 2017年5月、遼寧省科学技術庁、瀋陽市科学技術局及び渾南区政府の共同建設による東北科学技術大市場が瀋陽国際ソフトウェアパークで正式に運営開始され、中国東北地区初のイノベーションサービスプラットフォームが時流に乗る形で誕生した。そして、国家知識産権局専利局瀋陽代弁処やハイテク企業認定管理弁公室サービスセンター、瀋陽市生産力促進センター等の省市級のサービス機関が相次いで入居し、政務サービスステーションや北京・瀋陽科学技術サービス協力プラットフォーム、科学技術金融(渾南)サービスプラットフォーム等がまもなくサービス運営をスタートさせた。

「科学技術サービスチェーンの各結節点を連携させることによって、科学技術成果の実用化における『ボトルネック』を解決する」。沈小舒氏によれば、「イノベーション型の科学技術サービスプラットフォームとして、現時点では科学技術及び金融関連のサービス機関43団体が入居しており、10大分類の130項目余りに及ぶ科学技術サービスを企業に提供することができる。サービス機能が整備されるにつれ、東北科学技術大市場は瀋陽ハイテク産業開発区の新たなランドマークとなるだけでなく、東北地区の全産業チェーンを対象とする科学技術サービス体系の構築がスピードアップされるだろう」。

 東北科学技術大市場は、現時点でサービスリソースプロバイダー213社を統合し、のべ3700社余りの企業向けにサービスを行い、イベントを110回余り実施し、科学技術や金融等の各種サービス契約を6602件締結し、累計でサービス総額22億2400万元を実現している。

 また、瀋陽ハイテク産業開発区では、遼寧省ロボット産業技術イノベーション戦略連盟や遼寧省集成電路産業連盟等の16の産業技術イノベーション戦略連盟が相次いで設立され、遼寧成大集団の新型ワクチン専門技術プラットフォームや錦聯産業技術イノベーション総合サービスプラットフォーム等の産業技術イノベーションプラットフォームが36件創設されており、さらには重点実験室やエンジニアリング技術研究開発センター、企業技術センター等の研究開発プラットフォームを159件保有することから、各分野のさまざまな規模の企業向けに科学技術サービス支援を提供することができる。

 これを基盤に、スマート製造や情報技術、バイオ・医薬、ヘルスケア・医療、民間航空、電子商取引等の産業に主導される形で、渾南区(瀋陽ハイテク産業開発区)ではすでにデジタル医療やIC装置、ロボット、ビッグデータ等の一連のハイテク産業化基地の基盤がおおむね確立され、現在もその計画や建設が進められるとともに、多くの指標で急速成長やオーバーテイクを実現している。また、渾南区科学技術局は、「全国科技管理システム先進グループ」という価値の高い称号も獲得している。


※本稿は、科技日報「瀋陽高新区: 以智為核 隆起東北創新高地」(2018年11月20日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。