ナノフォトニクス、光子と物質の「内緒話」を解明
2019年1月7日 劉園園(科技日報記者)
ナノスケールで、光子と物質の間ではどのような不思議な反応が生じるのだろうか。それらの「内緒話」を解明したら、科学技術にどのような革新をもたらすことになるのだろうか。このほど開かれた第Y3回香山科学会議(第3回青年学術討論会)は「ナノフォトニクス材料」をテーマとし、特に注目されたのはこれらの話題だった。
ナノスケールで光を操る
中国科学院院士、武漢大学物理科学・技術学院の徐紅星教授は「現代のマイクロナノ加工技術と光学技術の発展に伴い、ナノフォトニクスがこの20年近くにわたり世界規模で急成長し、強い生命力を示している」と指摘した。
ナノフォトニクスとは、ナノスケールの光と物質の相互作用メカニズムと応用を軸とする学際・境界領域だ。国家ナノ科学センターナノフォトニクス研究部の戴慶研究員は、科技日報の取材に対し、「ナノフォトニクス技術は主にナノスケールの光の操作を研究し、光の回折限界を打破し、光の発射・吸収などの性能をより精密に調整・コントロールする。そのためこの技術は高感度測定、センサー、LED、ソーラーパネル、通信などの分野で高い応用のポテンシャルを秘めている」と説明した。
ナノフォトニクスの研究は広範で、主にナノフォトニクス材料の成長、ナノ構造の組み立ておよび加工、表面プラズモン、フォトニック結晶、超高速スペクトル、近接光学特性の材料、メカニズム、キャラクタリゼーション、器具、応用などが含まれる。
多くの不思議な物理効果
中国科学院物理研究所の魏紅研究員は、「材料のスケールがナノスケールに縮小されると、多くの不思議な物理効果が生まれる」と話した。
量子サイズ効果がそのうちの一つだ。この効果を利用すると、研究者はナノ構造(量子ドットなど)のスケールを変えることで、その光の波長を調節できる。
さらに研究者はナノ構造を用い、サブ波長のスケールで光を調整することで、周波数の異なる光に異なる透過度・反射度を持たせ、鳥の羽毛の色などの構造色を生み出すことができる。
他にも金属ナノ構造において表面プラズモンを引き出し、光の回折限界を打破することで、光場をナノスケールに縮小し強度を高めることができる。
戴氏は「表面プラズモンは材料の中で電子に引き出されると、光周波数全体振動によって波の形式で材料表面に伝わる一種の素励起だ。石を水に投げれば波紋が広がるようなものだ」と説明した。
徐氏によると、表面プラズモンは光場を光の波長をはるかに下回る空間範囲内に束縛することで、名実相伴うナノフォトニクスを実現できる。これは各分野で高い応用の将来性を示している。
例えば表面プラズモンによるサブ波長光導波路、光スプリッタ、モジュレータ、レーザー、検出器などの機能ユニットが揃いつつある。金属ナノ構造を光学アンテナとする光エネルギー変換は、がん温熱療法、海水淡水化、活性の強化などでも頭角を現し始めている。
南京大学現代工学・応用科学学院の李涛教授は「一方、人工マイクロ構造、人工原子もしくは分子を単位として構築する超構造材料と超構造表面も、ナノフォトニクスの発展を促す重要な力だ。これらは高透過、負の屈折、ステルスなどの不思議な光学現象を持ち、光学研究を新たな方向に導く」と述べた。
量子情報技術との強者連合も
徐氏は「ナノフォトニクスは量子情報分野と結びつくと、量子状態の作成、量子情報装置の設計、SOCに新たな基礎を提供する。ナノフォトニクスの光触媒、精密センサーなどの分野における絶え間ない進展も、次世代変革的技術の研究開発の基礎を築くことが期待されている」と説明した。
徐氏によると、ナノフォトニクス技術は国の未来のコア競争力に影響を及ぼす重要な戦略研究方向の一つであり、新たな経済成長源を支える技術の一つでもある。ナノフォトニクス技術の知的財産権を取得し、これらの技術を普及させれば、中国は経済・国防安全などの重要分野で競争力を高めることができる。
北京大学物理学院の施可彬研究員によると、ナノ材料および構造の設計・作成技術、先進光学的キャラクタリゼーションなどの近年の急成長、そして人材の充実に伴い、中国はナノフォトニクス分野で一連の重要かつ独創的な成果を上げている。一部の重要研究方向では、すでに世界一流水準に達している。
徐氏は「ナノフォトニクス分野には現在、基本理論にも実用化にも依然として多くの難題が残されている」と述べた。
プラズモン分野のエネルギー消耗はそのうちの重要な問題で、プラズモンナノ光導波およびその他のナノフォトニクス装置の応用を制限している。科学研究者はこの問題の解消を試みる一方で、これを利用し新たな装置を設計する手段を模索している。
※本稿は、科技日報「納米光子学:破譯光子与物質間"悄悄話"」(2018年12月20日付5面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。