浙江「千園計画」:小規模・零細企業のための環境づくり
2019年2月15日 江耘(科技日報記者)/洪恒飛(科技日報実習記者)
浙江省寧波市の小規模・零細企業パークの品質の発展実施意見がこのほど発表された。寧波では、小規模・零細企業を主体とした民営経済の同市のGDPに対する寄与率は60%で、小規模・零細企業31万社は、同市の企業総数の97%を占めている。
97%というのは、ちょうど浙江省の小規模・零細企業が昨年、省の企業総数に占めた割合と同じだ。しかし、この膨大な数の小規模・零細企業の多くにとって、産業のレベルが低く、スペースに限りがあるなどの問題が足かせとなっている。その他、パークが分散的で、都市のサイフォン現象がエスカレートしているなどの問題があるのを背景に、本来なら小規模・零細企業の発展環境を最適化できるはずである一部のパークも発展のボトルネックに直面している。
寧波市経済・信息化局の関係者は、「小規模・零細企業の入園を加速させ、『専精特新』(専業化、高精度化、特有化、イノベーション化)の方向にモデル転換することは急務となっている」と指摘する。そのため、浙江省は近年、小規模・零細企業パークの質向上を加速させることで、産業エコロジーを整え、費用対効果を向上させ、2022年までに、1200ヶ所の小規模・零細企業パークの質の向上を完了させたい考えだ。
質の低い企業を淘汰し、質の高い企業の入園をバックアップ
浙江省最大の小規模・零細企業パークである温州万洋衆創城はサービスが行き届いていることで知られる。工業財産権の分割、プラットフォーム・企業を一時的に担保とするなどの方法を通して、小規模・零細企業は融資を受けるのが難しいという問題を解決したほか、入園している企業向けに、金融・資産運用、総務、許可申請、不動産管理、支援などのワンストップサービスを提供している。
パーク内の企業・旭博電器の曽開同総経理は、「当社は資金繰りに困った時があったが、パーク内のカスタマーサービスのスタッフがすぐに会社に足を運んでくれ、融資を受けられるようサポートしてくれた。以前は会社の規模が小さかったため、融資を受けるのは困難だったが、パークに入ってからは、証明書類を提出して、一度サインするだけで、融資を受けることができるようになった」と話す。
融資コストを削減し、産業の位置付けを明確にし、質の高いサービスを提供し、小規模・零細企業の集合密度を70%以上にするというムードが、今、高まっている。関連の政策が牽引役となり、浙江省各地では、その場所の必要に合わせた小規模・零細企業パーク発展計画を打ち出し、イノベーション型、テクノロジー型、成長型の小規模・零細企業に優先的に入園権を与えている。
ハイレベルの基準で小規模・零細企業パークを建設し、そこでハイクオリティサービスを提供すると同時に、低レベルの小規模・零細企業に対して、浙江省は目を光らせ、「低(許可証などがない)散(都市計画、土地利用計画にマッチしていない)乱(建物、生産、経営などが法律に違反している)」企業に対する取り締まりを強化した。昨年以降、浙江省は、「低散乱」企業を取り締まり、その多くが閉鎖、営業停止となった。そして、土地2万ムー(約1,333ヘクタール)を活性化させ、1ムー(約0.067ヘクタール)あたりの税収が1万元以下の効率の低い企業を重点的に整理した。
浙江省経済・情報化委員会の岳陽・副主任によると、2018年の1-9月期、浙江省は問題のある各種「低散乱」企業9871社を取り締まり、各種小規模・零細企業パーク590ヶ所を建設した。今後は、小規模・零細企業パークの質向上を突破口に、古きにとらわれずに新しいものを同時進行で発展させ、優れたものには手を貸し劣悪なものを淘汰することで、小規模・零細企業が健全に発展するための良い生態環境づくりに取り組むという。
2019年、浙江省は、高成長のテクノロジー型小規模・零細企業を重点的にサポートし、テクノロジー型小規模・零細企業を3500社以上増やし、少なくとも2億5000万元以上の「テクノロジー・イノベーションバウチャー」を発行することで、小規模・零細企業パークのテクノロジー・イノベーションの不足部分を補い、入園する企業の質を向上させている。
小規模・零細企業10万社と特色ある産業を融合させて開花へ
「製造業をメインとした小規模・零細企業パークの建築面積は2万平方メートル以上で、その他の小規模・零細企業パークは1万平方メートルでなければならない」。2018年、浙江省は「小規模・零細企業イノベーション発展促進に関する若干の意見」を発表して、特色ある産業の多元化発展を奨励し、中でも製造業を特に重視している。
浙江省経済・情報庁の統計によると、2018年1-11月期、紡績・機織り、衣類、化学繊維、化学工業などの浙江省の十大重点伝統製造業の利益は前年同期比15.8%増となった。これは、数百の小規模・零細企業パークの質向上の取り組みと密接な関係がある。
ゴムブロック産業の特色が際立つ台州市三門県は昨年、ゴムの小規模・零細企業パークを3ヶ所建設した。それまでに、同県は6000万元を拠出して、珠嶴鎮のゴムの小規模・零細テクノロジー・イノベーションパークに、中国国内最先端のインターナルミキサーセンターを増設し、入園する企業が生産水準を向上できるようサポートしている。
三力膠帯の鄭士中・総経理は、「以前の工場エリアは、主に石炭ボイラーでゴム製品を生産していた。個人の町工場はルールに沿っておらず、企業も効率が悪く、汚染物質の排出量も多い。パークに入園して以降、元々使っていた粗末な設備は処分して、最新設備を購入し、生産額が50%もアップした」と説明する。
地方の特色を備えた産業や中小規模・零細企業に的を絞って、小規模・零細企業パークを創設するという構想と、浙江省の「特色小鎮(コアとなる産業や特色のある資源を持ち、明確な発展ビジョンに沿った街づくりで知られる特定のエリア)」を構築するという構想は、図らずも一致している。
紹興新昌のスマート装置タウン内に新設された小規模・零細企業パークには間もなく小規模・零細企業32社が入園する。2017年末、ハイテク産業開発区は、工業不動産開発プロジェクトを実施し、企業が抵当貸付を通して工場を建設できるようサポートし、小規模・零細企業の用地をめぐる問題を解決した。
新昌ハイテク産業開発区管理委員会の何溢強・常務副主任は、「そのようにすることで、小規模・零細企業の負担が大きく軽減され、『軽装』で入園できるようになった。大きなパーク内に小規模・零細企業パークを設置することで、特色小鎮との融合発展が可能になり、イノベーションの活力を発揮させることができる」と説明する。
これまでに、浙江省では100ヶ所以上もの「特色小鎮」が創設され、特にハイエンド装置製造とデジタル経済の二大産業が小規模・零細企業パークと最もマッチしている。その他、浙江省の各地が積極的に、「区中園(エリア内パーク)」、「園中園(パーク内パーク)」を提唱し、多くの小規模・零細企業パークが産業の集まるエリア、開発区、ハイテクパーク、工業パーク内で大きく成長できるようサポートしている。
2022年までに、浙江省では、10万社以上の小規模・零細企業が集まり、構造が合理的で、サービスのクオリティが高く、特色ある小規模・零細企業パークの発展構造が形成される見込みだ。
※本稿は、科技日報「浙江"千園計画"為小微企業広築 "新巣"」(2019年1月29日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。