企業が大木に育つまでサポート―起業サービスセンター
2019年2月22日 張景陽(科技日報記者)/李宝楽(科技日報通信員)
内蒙古華申創達科技有限公司は、博士9人が専門家チームに在籍し、主にバイオマスを基材とした機能性高分子材料の設計、研究開発、製造を行っており、その主力商品である農林用保水剤、フミン酸肥料は砂漠化対策、生態修復、造園・緑化など多くの分野に応用できる。同社の王鵬総経理はこのほど、科技日報の取材に対して、裸一貫で起業しながら、今や会社の純利益が188万元(1元=約16.33円)に達し、市場でしっかりとした基礎を築いたと胸を張った。
華申創達科技有限公司は、内モンゴル自治区の包頭レアアースハイテク産業開発区でインキュベーションに成功した企業の一つだ。包頭レアアースハイテク産業開発区テクノロジー起業サービスセンターでは、このようにインキュベーションに成功した企業が、正確に数えるのが難しいほどの数に上っている。成長した企業が同センターから出て行っても、起業者たちはたくさんの恩恵を与えてくれた「全要素保障サービス」という概念を忘れることはない。同開発区の陳宏傑センター長は、「『全要素』というのは、規模が大きいということではなく、精巧なトータルサポートが行われていること」と説明する。
企業タイプを細かく区分し、インキュベーションチェーンを実現
中国包頭牛羊肉産業大会の運営企業である内蒙古哈木格文化伝媒有限公司は、会社を立ち上げた当初、ハイテク産業開発区起業サービスセンターに事務所を構えていた。その後オフィスの「アップグレード」に成功し、現在では360平方メートルの独立したオフィスを構えるまでになったが、わずか4年しかかからなかった。現在、同社のブランド価値は3億9,100万元に達しており、4年連続して中国・包頭国際牛羊肉産業大会を開催している。
同社の葉飛・総経理は、「ハイテク産業開発区において、当社は、賃貸料などの面で優遇されただけでなく、起業指導、各種政策などによるサポートなども受け、スムーズに起業の道を歩むことができた。正直に言って、他の地域と比べると、ここのほうが起業のムードも条件も良く、安心して起業できると感じている」と話す。
陳センター長は取材に対して、「現在、当センターは、シードエリア+インキュベーター+アクセラレーター+産業パークの一連のプラットフォームインキュベーター体系を形成し、シードステージ、アーリーステージ、ミドルステージ、レイターステージのイノベーション型企業に成長プラットフォームを提供している」と説明する。
そして、「全要素サービス保障を提供するために、当センターはインキュベーター企業を科学的に整理し、細かく区分した。このメリットは、的を絞った政策を実施し、優位性を最大限発揮させることができる点だ」とする。
「シードステージの企業」に対して、レアアースハイテク産業開発区は、大学生起業モデル拠点、ソーシャル・イノベーション・プラットフォームなどの、伝統型と新型のインキュベーションモデルに基づき、場所のほか、資本のマッチング、投資家向け説明会など、起業のためのトータルサービスを提供している。そして、3ヶ月から6ヶ月の間に短期間で、資金的負担も少なく、発展スピードも速い「短、平、快」育成方式を通して、プロジェクトを商品化し、チームを規範化することで、まだ成熟していないテクノロジー起業プロジェクトを少しずつ整え、商業価値を持たせることで、シードステージ企業が発芽して根を張れるようにサポートしている。
一方、「レイターステージの企業」に対しては、発展の段階に応じて、シードエリア、ミドルエリア、独立したオフィスなどの「インキュベータースペース」を提供して、それぞれの発展の段階で企業が必要とする物理的スペースを提供するほか、資本、人材、技術などにおける関連サービスを提供し、スタートアップ企業が商業モデルや管理体制、融資理念を変え、技術をめぐる難題を克服し、「花を咲かせて、結実できる」ようサポートしている。
よく成長し、飛躍的に発展しているハイテク企業の「ガゼル企業」に対して、同センターは、2期に分けて包頭ハイテク特色産業拠点を建設し、国有企業が土地を一括購入し、統一して企業の必要に合わせた工場を建設し、研究開発、パイロット・テスト、事務、生活サービスなどを集約した関連サービスを提供している。こうしたモデルを導入することで、企業はスタートアップ期に必要な資金を大幅に節減できるほか、建設工期も短縮できる。現在、企業22社がハイテク特色産業拠点に進出している。全てが設計生産能力の生産量に達すれば、100億元規模の開発区が誕生し、ガゼル企業が大きく成長することになる。
政策を最適化しながら実施してイノベーションの活力を刺激
2018年、包頭レアアースハイテク産業開発区内の青山電器はテクノロジーイノベーション、集約とシェアリング、コネクティビティ、産業と金融業の融合などを特徴としたスマートエネルギークラウドサービスプラットフォームを自主研究開発し、エネルギー管理とサービスを一つにした業務基準とソリューションを構築し、電力品質モニタリング製品や分散型新エネルギーを提供して、ユーザーに信頼品質の電力を供給している。インターネット、IoT(モノのインターネット)、ビッグデータ、人工知能、クラウドコンピューティングなどの技術を十分に活用したイノベーションの典型的なケースで、2018年、同社の売上高は1億5,100万元に達した。
インキュベーションに成功し、安定的に機能している企業・青山電器のビッグデータサービスのバックグラウンド(画像提供・青山電器)
同社の周健・董事長は、「今年初め、テクノロジーイノベーションサービスセンターから800万元の支援を受け、それを利用して生産維持のための設備を購入した」と話す。
陳センター長によると、「イノベーションと起業のコストをできるだけ減らすというのが、当センターが提供する起業サポートの重要な部分。そのため、『起業者の実力が低い』や『イノベーションと起業のリスクが高い』などの問題に的を絞って、政策サポートや資金援助の強化を続けている」という。
ここ2年間で、包頭レアアースハイテク産業開発区は政策の「制定、改正、廃止」などを推進し、既存の政策や措置を整理することをベースに、「関于推進大衆創業万衆創新的実施意見(大衆による起業・イノベーション推進に関する実施意見)」と、それに関連した「関于推進科技創新創業20条政策措施(テクノロジーイノベーション、起業を促進する政策・措置20項)」、「高新技術特色産業孵化基地企業管理辦法(ハイテク特色産業インキュベート拠点企業管理規則)」などの一連の政策を打ち出し、「1+5」のサポート政策体系を構築した。同開発区は毎年1億元の資金を拠出し、支援機関の構築、企業のイノベーション、ハイレベル人材の起業、テクノロジー成果の実用化などの分野をサポートしている。
一連の新政策の刺激と牽引の下、多くのイノベーション資源がテクノロジー起業サービスセンターに集まり始めている。同センターの統計によると、ハイテクパークは、インキュベーターのために各種ハイレベル人材を389人招聘した。また留学生が立ち上げた企業は374社に達し、スタートアップ企業は159社、企業技術研究開発センター44機関のうち国家級センターが1機関、自治区級センターが23機関、市級センターが6機関となっている。
そればかりでなく、レアアースハイテク産業開発区は、テクノロジー起業サービスセンターのために企業が株式制に変更して上場・登録するためのグリーンチャンネルを構築し、企業が上場・登録の過程で直面する問題を、ケースバイケースで解決している。
「当センターは企業の上場をサポートする政策を打ち出し、上場した企業には100万元の補助金を提供している。全国中小企業株式譲渡システム『新三板』に上場できるよう企業4社を、地域性株式取引センター『新四板』に上場できるよう企業10社をサポートしてきた。2019年、その数はもっと増えるだろう」と陳センター長。
主体の需要に立脚し、レールサービスを構築
レアアースハイテク産業開発区テクノロジー起業サービスセンターの大ホール展示エリアの壁には、活気に満ちた若者数十人の写真が掲げられていた。それらの董事長や総経理、創始者、技術発明者たちには起業に成功した大学生や留学生が多いというのがこのインキュベーターの特徴だ。
若者が起業するというのは難しいが、どのように最初から最後までサポートしているのだろうか?陳センター長は、「当センターは、国家級生産力促進センターをキャリアにして、『インターネット+』のイノベーション起業サービス拠点を構築し、アーリーステージの起業者が、アーリーステージとミドルステージを超えられるようにサポートしている。また、ハイテク産業開発区企業大学を創設したのも成功の秘訣だ」と説明する。
内モンゴル自治区のインキュベーターでハイテク産業開発区企業大学が創設されたのは同センターが初めてだ。同センターは、中国生産力学院や上海交通大学と提携して、「学院+大学+企業育成拠点+N」の職業教育育成モデルを構築し、中国の中・西部地域で唯一の国家生産力学院を通して、国家の各部(省)・委員会の専門家や中国全土の省地方生産力促進センター資源2,689機関を頼りに、複雑に交錯する育成資源ネットワークを構築し、イノベーションと起業の主体の資質を効果的に強化した。
「企業の『大学進学』を実現しただけでなく、できるだけの努力をしてマンツーマンの起業サポートを実現し、方向を定めるレール式サービスを構築しなければ、『最初から最後までサポートしている』とは言えない」と陳センター長。
ここ3年、同センターは、指導員による起業サポートの推進という取り組みを行い、「創業導師管理辦法(起業指導員管理弁法)」を打ち出して、起業指導員による指導制度を最適化し、テクノロジー起業指導員、成功した企業家、エンジェル投資家を中心とした専門の起業指導員チームを作り、定期的にマッチング交流を実施している。これまでに、指導員による座談会が30回以上開催され、起業する大学生1,000人以上を指導してきた。
陳センター長によると、「当センターが構築した起業指導員と指導を受ける候補企業がどちらも相手を選択できるシステムになっており、企業が各種問題を解決できるように的を絞ったサポートができるようになった。指導員による指導会や起業者が出向くことで、マンツーマンのサポートができる。また、定期的にサロンやマッチング交流を開催するほか、随時インターネットを使ったオンライン指導を行い、観念指導、政策指導、技能サポート、伝統的な導きといった面での疑問などに答え、間違った方向に行かないよう助け、起業の過程における融資、管理、マーケティングなどをめぐる難題を解決し、オンデマンドの起業サポートを実現している」という。
※本稿は、科技日報「企業従種子到大樹 都靠這里的"全要素"」(2019年2月11日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。