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鶏白血病の「元凶」突き止め、新技術を活用してウイルスを根絶

2019年3月18日 王延斌(科技日報記者)/郭翠華(科技日報通信員)

 家畜業界にとって、白血病の蔓延はまさに一種の災難に他ならない。中国は、巨額の資金を投じて白色羽装の肉用鶏Avian broilerを導入し、繁殖、飼育に成功した。しかし、鶏白血病の感染で、市場から完全に撤退し、その後、同種は完全に輸入に頼る状況となっている。さらに深刻なのは、中国国内で繁殖、飼育している採卵鶏、茶色羽装の肉用鶏などの原種鶏も鶏白血病に大量感染し、しかもそのピーク期には、毎年少なくとも6千万羽の採卵鶏が死んでおり、その被害は中国国内の養鶏業者3分の2に及び、年間損失額は約45億元(1元=約16.61円)にも上っていた。

 しかし、「克星」と呼ばれる新技術が登場したことで、こうした情勢に逆転が生じた。科技日報の記者はこのほど、河北大午農牧集団種禽有限公司の鶏舍を取材し、劉平総経理に同社の鶏白血病との戦いについて取材したところ、「今は、鶏白血病の診断と浄化技術ができたため、鶏白血病ウイルスをめぐっては、採卵鶏の原種鶏は完全な浄化を実現しているため、もう心配する必要はなくなった」とした。

 山東農業大学が自主研究開発したこの鶏白血病の診断と浄化技術は、すでに多くの養殖企業が導入し、病気の伝染を根本的に解決している。現在、この診断・検査技術は、中国農業大学、中国農業科学院、農業部獣医診断センターなど、鶏白血病研究に従事する大学や研究機関も導入している。ウイルス検査を通じて白血病の伝染を根絶するスタイルは、中国の65%の白色羽装の肉用鶏の原種鶏や60%の採卵鶏の原種鶏に応用され、経済的にも、社会的にも大きな利益をもたらしている。

鶏白血病の「元凶」を突き止める

「米国では何年も前から鶏白血病を発見しており、中国の白色羽装の肉用鶏のほとんどは米国から輸入されたものだ。このため、当時、私たちは中国の白色ニワトリが感染したのはおそらく鶏白血病と判断した」と、山東農業大学の崔治中教授は言う。

 崔教授の判断は正しかった。崔教授のチームは中国の白色羽装の肉用鶏から、亜群トリ白血病ウイルス(ALV-J)を分離して鑑定し、さらに、ゲノム上で源まで遡ることができるマーカーを発見し、そのウイルスは米国から来たものであることを突き止めた。これにより、中国国内の関連企業は、家禽をめぐる国際貿易トラブル交渉において有用な科学的証拠を得ることができた。

 研究が進み、同チームは、ALV-Jが中国のニワトリの白血病の主要な病因であることも突き止めた。感染が深刻だった年に、中国の全ての品種の白色羽装の大型肉用鶏の間でALV-Jの感染が広く見られ、市場のシェア約70%を占める採卵鶏飼育企業が裁判に巻き込まれた。

 ALV-Jの感染原理について、崔教授は、「感染様式は2種類ある。一つは、接触、飲食物、空気、ベクターなどを介することにより個体から個体へと感染する水平感染で、この場合、特定の条件下で、直接、血液循環の中に入ることもある。もう一つは垂直感染で、病原体が親から直接その子孫に伝播される。鶏白血病は、鶏白血病ウイルス(ALV)が原因の血液のガンで、主な感染様式は垂直感染。しかし、水平感染することもあり、鶏白血病に感染したニワトリがベクターとなり、大量のヒヨコに伝染し、さらに、孵化したばかりの他のヒヨコにも伝染する。理論からすると、原種鶏1羽から、24万羽のニワトリが生まれる。つまり、原種鶏1羽が感染すると、数万羽のニワトリも感染することになり、経済損失は非常に大きくなる」と説明する。このような疫病を前に、崔教授とそのチームは戦々恐々となった。

 そのため、崔教授チームは数年連続で、ALV-J各種合わせて200株を収集、保存し、系統的なソースバンクを作成した。そして、中国のALV-Jの分子進化の規律を発見し、鶏白血病ウイルスの「元凶」を突き止めた。

海外からのウイルス侵入を防ぐ

 「元凶」を発見した後は、それをコントロールしなければならないものの、中国の原々種鶏、または原種鶏は、ほとんど輸入されたもので、ALV-Jの進入を根本的に防ぐためには、輸入する種鶏に対していかに検査を実施するかが課題となった。「当時、世界のどこにも、この新型ウイルスの検査試剤はなかった」と崔教授。

 そのためまず突破しなければならない難関は、分子模倣だった。同チームがその突破方法を全く見つけられずにいた時、研究者らは別のウイルスに目を留めた。崔教授は、「当時、バキュロウイルス発現系が提起された。それにより大量の発現タンパク質を得ることができ、それを真核発現系として、分子模倣ができる。このウイルス発現系をベクターとして、ALV-Jの抗原タンパク質を得ることができた。そして、時を移さずに、そのウイルスを対象とした、モノクローナル抗体を研究開発し、蛍光顕微鏡を使って、ウイルスの存在を発見し、ALV-Jを検出できる間接免疫蛍光法を編み出した」と説明する。

 間接免疫蛍光法は現在では完全に普及しているものの、「当時の獣医学界ではまだあまり応用されていなかった」という。チームのメンバーである趙鵬氏は、その検査方法について、「検査の時に得たサンプルを使って、ALV-Jを対象にしたモノクローナル抗体を加える。その種の抗体はALV-Jとだけ結合する。その後、蛍光素マーカーを加える。抗体がウイルスと結合していれば、蛍光顕微鏡を使って見ると、ウイルスに感染している部分が赤と緑に光って見える。結合していなければ何も見えない。そのようにして、細胞の中でウイルス感染が発生しているかを判断することができる。そのプロセスも操作もとても簡単だ」と説明する。

 新しい診断技術は、中国国内の養鶏企業の間で広く採用され、ニワトリを病気から守ると同時にニワトリの品質を保証できるようになった。

 北京愛抜益加家禽育種有限公司など4社は、海外からAA、ROSSなどの肉用鶏の原種鶏を輸入していたが、鶏白血病ウイルスがもたらす危害の深刻性を認識し、間接免疫蛍光法を導入して、鶏白血病が海外から中国国内に侵入することを防いだ。そして、それら企業は、種鶏群での鶏白血病「発生ゼロ」をすぐに実現した。それら企業は、中国国内の家禽業界では現在もリーディングカンパニーとなっている。

中国国内にいる全てのニワトリを浄化

 「鶏白血病」の海外からの侵入を防ぐことができるようになったものの、以前に輸入した種鶏を通してすでに入って来た鶏白血病ウイルスは、中国で繁殖、飼育されているほぼ全ての採卵鶏と茶色羽装の肉用鶏の原種鶏群の間で蔓延してしまっていた。有効な薬やワクチンがない中、それらのニワトリの鶏白血病ウイルスをいかに速やかに、かつ徹底的に浄化すればよいのだろう?

 このウイルスの主な感染様式は垂直感染であることを考慮し、研究チームは種鶏群に対する検査を実施した後、ウイルスを持っているニワトリを処分して浄化を進める計画を立てた。しかし、ニワトリのどの成長段階で検査を実施すれば良いのだろう?ニワトリからどんなサンプルを採取すれば良いのだろう?研究において、これらが攻略しなければならない山として立ちはだかった。

 中国の原種鶏の養鶏場に合った鶏白血病浄化計画が打ち出され、上記の難題が解決された。その方法とは、種鶏の成長過程において、カギとなるいくつかの時期にウイルス検査を行い、鶏白血病ウイルスを持つニワトリを徹底的に処分する方法だ。その計画において採取されるサンプルは、卵が孵化する時に、ヒヨコから採取する胎便、ヒヨコとして飼育されている期間に全てのヒヨコから採取した血液、卵を産み始める前の全てのニワトリから採取した血液、オスのニワトリの精液を含む。

 趙氏は、「孵化したばかりのヒヨコは最もウイルスに感染しやすい。そして、水平感染が起こり、他のヒヨコにも伝染する可能性がある。ウイルスを根絶するためには、胎便の検査が必ず必要になる。その他、胎便の検査をすることで、ニワトリの感染状態を知ることができるだけでなく、ヒヨコのストレスも軽減することができる。孵化して8‐10週間はヒヨコの育成期で、その時期は気温を高くし、栄養ある飼料を与え、ヒヨコ専用の養鶏場で育てる必要がある。ストレス反応は小さければ小さいほどいい」と説明する。

 最後に検査漏れを防ぐために、ヒヨコの育成後期に、一般養鶏場に移す時にも、ウイルスを持ち込まないために検査を実施しなければならない。そして、卵を産み始める前にも最後の検査を実施する。

理解の間違いを証明し「死角」をなくして徹底浄化

 世界の鳥の病気研究界や家禽飼育企業は以前、精子には自己修正メカニズムがあるため、精子は鶏白血病ウイルスに感染せず、オスとメスのニワトリが直接接触した時にのみウイルスが伝染すると考えていた。また、生産段階において、人工授精が広く採用されたことにより鶏白血病が伝染することはないと考えていた。しかし、趙氏は、「当チームは、オスの種鶏の精液を通して、メスのニワトリがウイルスに感染し、それによって、垂直感染が起こることを証明した」と説明する。

 「鶏白血病の浄化を実施する過程で、鶏白血病に感染したオスのニワトリの精液を、メスのニワトリに人工授精してみたところ、そこから生まれたニワトリからも鶏白血病感染が確認された。そのため、オスのニワトリの精液を通して、鶏白血病ウイルスがメスのニワトリに伝染するのではと仮説をたてた」と趙氏。

 その後、一連の実験が直ちに行われ、ニワトリの胚の静脈にALV-Jを注射し、孵化後にウイルスに感染したオスのニワトリを見つけ出し、さらに、そのニワトリが成長するのを待って、精液を採取し、メスのニワトリに人工授精を行い、最後にメスのニワトリが感染していないかを調べた。また、そのメスのニワトリが生んだ卵から孵化したヒヨコからもウイルスを分離した。その結果、最後に生まれたヒヨコの体内からも鶏白血病ウイルスが検出された。趙氏は、「精液の成分は非常に複雑で、精子はそのうちのほんの一部分に過ぎない。精子がウイルスに感染していないからといって、精液の中にウイルスがないというわけではない。実験データは、仮説が正しかったことを示していた。それにより、オスのニワトリの血液から鶏白血病ウイルスが検出されなかったとしても、精液の中からウイルスが検出される可能性があるという新たな事実が掘り起こされた。この新しい方法であるオスのニワトリの精液に対するウイルス分離検査は、多くの養鶏企業で試験的に行われた。統計は、ニワトリの鶏白血病感染率がさらに下がったことを示している」とした。

 さらに趙氏は、「以前は世界中で、鶏白血病の伝染の過程におけるオスのニワトリの役割が見過ごされていた。そのため、ウイルスを持つたくさんのオスの種鶏が検査から漏れていた。西洋諸国は7-10年、ひいてはもっと長い年月をかけて浄化を実施しなければならないだろう。ただ、新技術を活用すれば、3-5年で原種鶏の鶏白血ウイルスを徹底的に浄化することができるだろう」とした。

 この技術の確立により、中国国内の原種鶏群の鶏白血病ウイルス浄化には「死角」がなくなった。


※本稿は、科技日報「翻出病毒"家底" 畜禽白血病有了克星」(2019年3月1日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。