2011年03月21日-03月25日
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人体への臓器移植用豚の育成に成功 南京

2011年03月25日

 南京医科大学の遺伝子工学専門家はこのほど、「遺伝子操作が行われた豚が今年下半期に誕生する予定だ。これらの豚は、人体への移植が可能な臓器を提供することができることから、移植用臓器不足という問題を将来解決できる望みが高い」と語った。

 南京医科大学によると、豚から人への臓器異種移植は、2,3年以内に臨床実験への応用が実現する見込みで、具体的な目途は、臓器の種類によって異なるという。

 研究代表者の載一凡教授は、「まずは、豚の角膜の臨床実験を2年以内に実現させたい。心臓、腎臓、肝臓などの大型臓器については、あと5年ほどかかるだろう」と話した。

 載教授によると、人体に適用できるように豚の臓器の遺伝子を操作しなければならないが、衛生面での厳格な監視コントロールのもと、無菌状態で行う必要があるという。

 研究者はまず、普通の豚か体細胞を取り出し、人体への移植の際に拒絶反応を引き起こす遺伝子を除去する。このように操作された遺伝子が、元の遺伝子に取って代わる。

 載教授はこの10 年近く、人体の拒絶反応発生を免れるため、このような豚の「遺伝子操作」に関する研究に携わってきた。教授の研究論文はこれまでに何度も、「サイエンス」や「ネイチャー バイオテクノロジー(Nature Biotechnology)」などの権威ある学術定期刊行誌上で発表されている。

 載教授は、「研究チームは操作遺伝子をもったクローン豚の作成に着手している。子豚が生まれるとすぐに母豚から引き離し、無菌状態で育てる。一連の検疫を受けた後、やっと臓器移植に応用可能となる」と説明した。

 共同研究者の趙子建教授は、「臓器移植の代替物として、豚の臓器は今後、移植コスト軽減に貢献する見通しが高い。たとえば、遺伝子操作が行われた豚の角膜の価格は、1500ドル(約1万元)で済む。ただし、手術費は含まれていない」と話す。

 北京中日友好委員臨床医学研究所の婁晋寧所長は、戴教授チームの最新研究成果は、国内研究での「重大なブレイクスルーだ」と高く評価、「海外では、この分野ですでにブレイクスルーを果たし、ヒト以外の霊長類の臓器への移植が可能な豚を育成している国もある。中国も、先進レベルに追いつくよう力を尽くしている」とコメントしている。

 ある研究者は、研究チームが直面している課題は、豚の臓器を移植した人体の体内で、長期的あるいは永遠に拒絶反応が起きないようにする方法だと指摘している。婁所長はこれについて、「現時点では、移植後、人体に急性の拒絶反応が現れる可能性はないことは断言できる。次なるポイントは、長期的な互換性・適応性という問題だ」と答えた。

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