2011年07月18日-07月22日
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中米の科学者、不妊症の最新研究成果を発表

2011年07月22日

 米「サイエンス」誌は20日、電話会議を行い、「精子表面のたんぱく質欠損が原因不明の男性不妊症解明の糸口となる」とする展開医療の最新の研究成果を発表した。この研究は、米カリフォルニア大学デービス校と安徽医科大学、安徽省生物医学研究所などの科学者13人により進められたもので、不妊症の治療と検査に新たな道が開かれ、同分野における重大なブレークスルーとなった。海外ハイレベルの人材を招致する「千人計画」で招かれた徐希平教授ら中国の科学者4人は同研究を18年間にわたって行ってきた。このたびの重大成果は、この分野における中国の研究が世界トップレベルに到達したことを示す。

 世界で10%から15%の夫婦が不妊症をわずらっているが、無精子症、又は精子の形状・質の問題はそのうち一部の原因でしかない。同研究では、精子表面のたんぱく質欠損が男性不妊症の新たな原因となることが明らかになった。

 同研究報告の作者の一人、カリフォルニア大学デービス校の微生物学者は「このことを発見したとき、科学者たちは興奮のあまり倒れそうになった」と述べる。

 精子表面のたんぱく質欠損は遺伝子変異によるものだ。βデフェンシン126のたんぱく質は精子表面をコーティングしており、精子が子宮粘液を突破する手助けをしている。もしこの遺伝子が突然変異を起こし、βデフェンシン126が欠損したDEFB126となった場合、精子は粘液を突破して卵子と出会うことが難しくなる。これにより、いままで原因不明だった多くの不妊症が説明できるようになった。

 同研究では中国の新婚夫婦500組を対象に検査が行われた。その結果、βデフェンシン126が欠損し、変異したDEFB126を持っている男性は、精子量が足りない、精子適合性が低いなどの一般的な不妊症の原因が見られないものの、妊娠能力が下がることが明らかになった。また、変異遺伝子をもつ男性の妻は他の夫婦に比べて妊娠率が30%低かった。研究者によると、検査を行った各グループのうち、5分の1の男性がこの変異遺伝子をもっており、その範囲は日本、アフリカ、欧州、カリフォルニアを含むという。

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