2011年09月26日-09月30日
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「天宮1号」の実験任務(2) 宇宙空間環境の探測実験

2011年09月30日

 宇宙船は、軌道上を運行している間に、微重力、低真空、荷電粒子、宇宙破片などによる影響を受けるが、これらも宇宙船空間環境の構成要素となり、安全な運行に対して重要な影響を及ぼす。「天宮1号」が担うもう一つの重要ミッションは、空間環境の探測に関する実験・研究だ。

 宇宙応用システムに詳しい中国科学院国家空間科学センター空間環境部の王世金主任によると、「天宮1号」には、2台の測定器が搭載されているという。ひとつは、多方向粒子輻射探測器で、多方向に飛ぶ高エネルギー荷電粒子を測量することにより、宇宙船を安全に防護し、乗組員が船外活動を安全に行う上で、重要な意義を持っている。もうひとつの測定器は、軌道大気データ総合探測器で、軌道上の大気の密度・成分を測量する。大気密度は、宇宙船に対する抵抗力として作用するため、「牽引効果」とも呼ばれる。つまり、極めて微小な大気の抵抗力でも、宇宙船の大幅な高度低下をもたらす可能性がある。

 「天宮1号」の飛行高度においては、大気成分の約90%が原子酸素という。原子酸素は強い酸化腐蝕作用を備えており、宇宙船の表面材料の腐蝕をもたらす可能性が高いため、大気成分の測定分析は非常に重要な任務となっている。

 王主任は「2台の探測器が獲得したデータは、数時間後に転送され、宇宙飛行プロジェクトで利用される。北京飛行指揮コントロールセンターはこれらのデータを用いて復路軌道などの軌道計算を行い、従来の計算値に修正を加えることができる。また、これらのデータを蓄積することで、軌道環境モデルを構築・修正することも可能で、長期にわたる宇宙空間環境の研究に応用できる」と説明した。

 中国有人宇宙飛行発展の第一段階は「神舟1号」から「神舟6号」までの時代で、計80項目以上の宇宙空間科学実験が行われた。第2段階は、「神舟7号」も行った伴走小衛星(子衛星)を飛ばす実験や宇宙空間での潤滑剤の船外装着・回収実験などを実施するという。

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