2011年12月26日-12月30日
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時速500キロの高速試験列車 形状は剣とロケットの結合

2011年12月27日

 中国の高速試験列車が25日、青島市の中国南車四方股フン公司にて完成した。同社の梁建英副チーフエンジニアは、「同試験列車の速度は、中国の全ての高速列車を上回る」と語った。北京晨報が報じた。

 同社の趙小剛董事長はこのほどメディアの取材に応じた際に、「同試験列車の時速は500キロを超える」と述べた。

 ◆車体は「剣」をイメージ

 同日9時頃、赤い布をかけられた列車が、同社の工場に置かれた。車体のシルエットを見ると、「長征ロケット」のデザインを取り入れて設計された車両「CRH380A」とは明らかに異なっている。落成式典が始まり、赤い布がめくられると、先端部分の両側にはラインが入り、剣に似ている姿が披露された。

 同社の丁首席技術専門家は、「同列車の車体は剣をイメージし、尖ったフォルムを強調した。同列車は6両編成で、その全てが動力車だ。車体の末端部分は、CRH380A型に倣った」と語った。

 ◆試験列車に型番はなし

 同社の技術者の説明によると、同試験列車はCRH380A型のイノベーション成果を基礎とし、より高速の条件下で、運行の安全性かつ信頼性を確保する。最高速度と出力の向上、空気抵抗の低下などを巡り、システム集成、先端部、車体、ボギー、出力、ブレーキなどのシステムを全面的に改善した。また中核技術の国産化、産業化を実現した。

 梁副チーフエンジニアは、「同列車の研究開発の主要目的は、中国で運行されている高速列車全体の安全性、快適性、環境保護・省エネなどに向け貢献を果たすため」と語った。

 ネット上のBBSでは、鉄道ファンたちが同列車の型番を「CIT500」と称しているが、趙董事長は、「同列車には現在、型番が存在しない」とした。

 ◆高速実現も量産化は未定

 落成式典で趙董事長は、「高速が実現したとは言え、その速度で運行するとは限らない。技術力向上を目指し、テストにより安全性能を高め、高速鉄道の運行の安全を確保する」と述べた。同列車は現在のところ1両しか生産されていないが、将来的に量産するかという問いに対して、趙董事長は未定と回答した。

 梁副チーフエンジニアは、「同列車の完成は段階的な成果にすぎない。今後さらに工場内で、静音モードのシステム適合調整、環状線モードの調整を行い、最終的に高速鉄道上でテストを実施する」と語った。

 ■注目点

 同列車はモノのインターネット等の技術を融合し、風・霜・雨・雪等の気候データを直接受信する。

 ◆落雷後、自動的にスピード制御を行う。

 現場の技術者の説明によると、列車の前後の先頭車両と後尾車両は異なり、非対称となっている。高速列車の試験において、非対称の組み合わせを行ったのはこれが初である。

 ◆形状 剣とロケットの結合

 丁首席技術専門家は、「同列車の先頭車両の技術プラン作成には、大量のコンセプト設計、データ模擬分析、風動テストを行っている。また先頭車両に『剣』、後尾車両に『ロケット』のフォルムを採用し、空気抵抗を低下させ、後尾車両の浮力がゼロに近づいた。これは最も効果的な技術の組み合わせである」と述べた。

 高速テストを実施する際、先頭車両は空気抵抗の低下、後尾車両は浮力の低下を目的とし、浮力のコントロールにより安全性を高め、後尾車両の揺れを低下させる。

 ◆コントロール 飛行機をイメージした空気抵抗制御

 飛行機は着陸の際、翼を動かすことにより空気抵抗を高め、スピードを低下させる。

 同試験列車は天井部に3つの空気抵抗制御装置を設置した。同制御装置は7段階のコントロールを実施する。3つの装置の操作には、コンピューターネットワークの同時制御モードを採用する。

 ◆安全性 気候変化データによる速度調整

 趙董事長は、「同列車はモノのインターネットやワイヤレスネットワーク等の技術を融合し、路線上の環境気候の変化に関するデータを、自動的に受信することができる。例えば風、霜、雨、雪、雷、地震等の気候変化データは、調整を経てから通信により運転手に告げる必要はなく、列車が気候に基づき運行速度を調整する。これにより安全性を高めることができる」と説明した。

 ◆材質 列車の硬度が22.7%増

 同試験列車は現在高速列車が使用しているアルミニウム合金の中空型材を使用するが、列車の先端カバーや車内シート等の設備には、炭素繊維やマグネシウム合金等の新材料を使用し、軽量化を実現すると共に、硬度を22.7%強化した。また防音効果を高め、車内の防音材料に新型のナノ防音材料を採用した。

 ◆動力 出力が2万kW超

 現在運行中の高速列車のうち、8両編成のCRH380A型の出力が9600kW、16両編成のCRH380ALの出力が2万440kW、16両編成のCRH380BLの最大出力が1万8400kWに達している。同試験列車は新たに開発された大出力システムを搭載し、最大出力が2万2800kWに達した。

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