2012年04月16日-04月20日
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中国 抗酸化物質を多く含むトマト新品種を開発

2012年04月16日

 中国科学院昆明植物研究所はこのほど、抗酸化作用を持つアスタキサンチンを豊富に含むトマトの新品種を開発した。同成果は雲南省科学研究機構聨合会が10日に行った2012年第1次プロジェクト推薦会で紹介された。科技日報が15日に報じた。

 アスタキサンチンは自然界における最強の抗酸化物質と言われており、皮膚や目をダメージから守り、免疫力を高め、心臓血管疾患・炎症・腫瘍を防ぐほか、アンチエイジングなどの作用を持つ。専門家は、アスタキサンチンが今後50年間で最も注目される天然活性物質になるだろうと指摘する。しかし、アスタキサンチンを生合成する植物は少なく、生産量も非常に少ない。

 天然アスタキサンチンの生産に限りがあることから、アスタキサンチンを豊富に含む経済的な植物の育成はこれまでにも注目されてきた。10年前には花の基部に少量のアスタキサンチンを含むタバコが開発されたほか、2008年にはアスタキサンチンを含むニンジン(含有量0.1%)、アスタキサンチンの生合成系遺伝子を導入した葉緑体形質転換タバコ(含有量約0.3%)などが開発された。 

 同研究所の研究員・黄俊潮氏らの研究チームは、微細藻類によるアスタキサンチンの生合成ルートおよび律速酵素遺伝子を約10年間をかけて全面的に解析・比較した結果、高等植物のアスタキサンチン生合成を抑制する重要問題を解決。世界初となるアスタキサンチンを豊富に含むトマトの新品種を開発することに成功した。

 このトマトは実の部分に ヘマトコッカス藻とほぼ同じ含有量の高濃度のアスタキサンチン(約1.6%)を蓄積することができる。同品種は現在、温室にて第3世代の育成が行われており、性質は安定的で、アスタキサンチンの含有量も安定している。トマトは経済的な植物であり、大規模栽培も可能だ。さらにトマトは収穫量が高く(1ムーあたり1万キログラム)、栽培も簡単でコストも低い。同研究成果は産業化・商業化に向け大きな可能性を秘めている。

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