2012年07月02日-07月06日
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中国の4G規格TD-LTE、世界的に普及へ

2012年07月05日

 2G時代の初期、中国の通信設備は全て海外からの調達だった。3G時代、中国は自主開発の3G規格TD-SCDMAを打ち出したが、国外では普及しなかった。そして4G時代、中国が主導する4G規格TD-LTEが世界に羽ばたこうとしている。もしこれが実現すれば、中国の通信業は「追従」から「ブレークスルー」、そして「リード」へと、大きな飛躍を果たすこととなる。中国新聞社が報じた。

 中国移動(チャイナモバイル)の李正茂副総経理はこのほど取材に答え、「2011年、サウジアラビアと日本でTD-LTEの商用ネットワークが開通した。2012年6月現在、日本、ブラジル、スウェーデン、英国を含む9カ国でTD-LTEの商用化がスタートしている。この他にも16カ国が導入に向けた明確な計画を発表した。世界でこれまでに開通したTD-LTE実験ネットワークは36に上る」と語った。

 杭州のバス車内では、TD-LTEを体験することができる。通信速度は最高で80Mbpsに達し、1ギガバイトの動画もわずか数十秒でダウンロードできる。中国の一般家庭で普及している2Mbps-4Mbpsを大きく上回るスピードだ。中国移動はこのほか、広州、北京、深セン、南京などでもTD-LTEの試験を行っている。

 李副総経理は「TD-SCDMAを進化させた技術であるTD-LTEは、LTEFDD方式と比べてメリットが大きい。FDDリソースは不足しているが、TDDリソースはまだ豊富にある。TDDを利用するTD-LTEは十分かつ効果的にリソースを利用できる」と語る。

 ある専門家によると、各国の通信キャリアは2012年から13年にかけ、ブロードバンド技術の選択・整備を行うと見られる。このため、TD-LTEが世界から選ばれるためには今年と来年が肝心となる。

 今年に入ってから、中国の関連部門はTD-LTEの整備を加速すると幾度も宣言してきた。工業情報化部の苗墟部長も、「TD-LTEの世界進出を支持する。国家レベルの戦略性新興産業計画でもTD-LTEを次世代通信ネットワークとすることを支持している」と述べた。

 TD-SCDMAの時とは違い、TD-LTEの産業チェーンにはクアルコム、サムスン、エリクソン、ノキア・シーメンス、インフィニオンなど、各国のメーカーが参与しており、アップルのような最大手ブランドもTD-LTEへの対応を計画している。世界のメーカーが参与することはTD-LTEのグローバル発展に役立つ。

 さらに重要なのは、TD-LTEの発展を華為、中興、展訊といった多くの中国企業が支えている点だ。チップメーカー17社のうち、9社を中国企業が占め、システムベンダー10社のうち、7社を中国企業が占めている。中国企業が生産したTD-LTEデータカードはすでに多くの国外キャリアによって選ばれている。

 李副総経理は「各メーカーを組織して6都市で行った大規模テストによると、2012年5月の時点で産業チェーンは基本的に成熟している。今年末までに基地局の数は3万カ所を超える見込みだ。2013年にTD-LTEのさらなる大規模試験が成功した後、TD-SCDMAからのアップグレードや新設により、基地局は20万カ所に達する見通し」としている。

 TD-LTEを世界的に普及させるため、中国移動は昨年、海外の通信キャリア6社と共同で推進団体「Global TD-LTE Initiative(GTI)」を設立、その後約1年間で加盟キャリアは48に増えた。これは中国の通信業界史上、過去に例を見ない規模だ。

 李副総経理は「GTIの発展目標は、2014年までに世界のTD-LTE基地局を50万カ所とし、端末を100種類以上とし、ユーザー人口を20億人以上とすること」と語る。

 中国移動が6億3千万人のユーザーを抱えることを鑑みると、世界の機器メーカーはどうしても中国移動の「顔色を伺う」必要がある。このため、GTIの目標が実現できるかどうかは、中国移動の技術選択にかかっていると言える。

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