2012年07月16日-07月20日
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がん再発の原因となる腫瘍形成性細胞の分離法を発見

2012年07月16日

 放射線治療、化学療法などを含む現代のがん治療法では、どうして全てのがん細胞を死滅させることができないのだろうか?化学療法を行っても、なぜ多くのがんが再発するのだろうか?この問題は長い間医学界を苦しめてきた。

 華中科技大学生命学院の汪寧教授と同済医学院の黄波教授による研究成果が、この問題を解く手がかりとなるかもしれない。両氏の論文は米国時間1日、米「NATURE MATERIALS」誌に掲載された。科技日報が報じた。

 汪寧教授によると、ほとんどのがん細胞は命に関わるものではない。致命的ながんの元凶となるのは腫瘍形成性細胞だ。この細胞は生命力が強く、一旦人体に潜伏すると、増殖して悪性腫瘍を形成し、これが致命的となる。腫瘍形成性細胞の潜伏期と生長周期はいずれも長く、しかも絶えず増殖するため、最終的に悪性腫瘍が形成される。普通のがん細胞を「働きアリ」に例えるならば、腫瘍形成性細胞は「女王アリ」のようなものだ。

 長年、各国の科学者が様々な方法でこの「女王アリ」を分離しようとしてきた。汪寧教授は「これまでの分離方法はいずれも不足があるが、我々の新方法ならこれらの問題を解決できる可能性がある。現在、8種の異なるがん細胞に対する実験に成功している」と語る。

 汪寧教授らは黒色腫(悪性腫瘍)の腫瘍形成性細胞メカニズム研究において、腫瘍形成性細胞は胚性幹細胞と良く似た、独特な生体力学的性質を持ち、誘導性アポトーシスに対して強い耐性を持つことを発見した。

 この研究成果は、一部のがんが再発する理由を初歩的に説明し、致命的ながんの元凶を見つけ出すことにつながると見られている。汪寧教授は「腫瘍形成性細胞を分離できれば、この細胞をより深く研究することができ、がん治療と抗がん薬の開発に役立つ」と語る。

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