中国は世界四大文明の一つを育んだ伝統ある国であり、そして唯一途絶えることなく、現在まで続いてきた文明を持つ国である。さまざまな学科が総合的に手がける、中国最大規模の人文科学重大課題研究の国家プロジェクト「中華文明探源プロジェクト」は、現在まで10年余りに渡り実施されている。同プロジェクトの担当者の一人、中国社会科学院考古研究所の王巍所長は、「考古学に基づく調査により、5000年の中華文明の源が解明されつつある」と述べた。
◆古代中華文明の成り立ち
中国の古文書は、黄帝と炎帝の時代を中国史の始まりとしている。中華文明は、5000年の歴史を持つとされている。
しかし、黄帝・炎帝、堯・舜・禹の時代については後の古文書に記述されており、神話的な内容が多い。これらの記述のみでは、中華文明の起源・形成・発展の歴史を全面的に研究することができず、当時の社会の様子を判断することもできない。そのため学術界では、中国が5000年の文明史を持つことを疑問視する声があがっていた。
王所長は、「社会と学術界に存在するこれらの疑問を解消するためには、発掘により新たな資料を得るしかない。最新の考古学研究成果により、中華文明が5000年の歴史を持つ根拠を探る必要がある」と語った。
◆考古学が重要証拠を提供
王所長は、「同プロジェクトを10数年に渡り実施し、中華文明の形成、発展の過程と段階について、全面的に理解できるようになった」と述べた。
遼寧省牛河梁遺跡、安徽省凌家灘遺跡等は約5000年前の遺跡で、精巧な副葬品と大規模な祭祀の遺跡が見つかっており、5000年以上前から身分の差が存在したことを示している。
王所長は、「良渚や陶寺等の都、大型宮殿の跡地、大規模な墓が発見されていることから、一部の文化と社会が発達した地域では、夏王朝より前から国家が形成されており、文明史が始まっていたことが分かる」と指摘した。
◆各地の古代文明を研究
王所長は、「今後は古代中国の各地の文明を研究する。また各地域の文明化の道のりを研究した上で、全体的な中華文明の起源と形成、その後いかにして発展しどのような過程を経たのか、発展の段階を区分することができるか、各段階の間にはどのような関係があるか等を研究する。中国古代文明が形成された歴史を論証し、牛河梁遺跡や凌家灘遺跡等の発掘を推進する」と語った。