2012年07月23日-07月27日
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日本の衛星打ち上げ、海外からの受注不足が悩み

2012年07月24日

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は日本時間7月21日11時6分、宇宙ステーション補給機「こうのとり」3号機(HTV3)を搭載したH2Bロケット3号機を、種子島宇宙センターから打ち上げた。同補給機は約4.6トンの物資を搭載している。順調に行けば7月27日に国際宇宙ステーション(ISS)に到着し、宇宙飛行士がロボットアームを操作してドッキングさせる予定。人民日報が報じた。

 古川元久宇宙政策担当相は「今回の打ち上げ成功で、日本のロケット技術の信頼性の高さを示すことができた」と語った。H2Aロケットをベースに開発されたH2Bロケットは、重量531トン、全長56.6メートル、日本最大の宇宙ロケットで、打ち上げ能力は最大8トン。業界関係者は、「補給機の打ち上げ成功は非常に喜ばしい出来事。H2Bロケットには日本各界からの期待が寄せられている」との見方を示す。

 JAXAは今後、H2Bの打ち上げ事業を三菱重工へ移管する。これにより、日本の民間企業による大型通信衛星の打ち上げがより完備され、日本の宇宙経済が促進される見通しだ。三菱重工は今後、H2AとH2Bを2本柱とし、海外の商業衛星打ち上げ業務を開拓していく。

 日本は今年5月18日、韓国の多目的実用衛星「アリラン3号」とJAXAの水循環変動観測衛星「しずく」を搭載 したH2Aロケットを種子島宇宙センターから打ち上げた。日本が外国の衛星を打ち上げたのはこれが初となる。しかし、業界内では「三菱重工が衛星打ち上げ分野で熾烈な国際競争に勝ち抜くのは難しい」との見方が普遍的だ。原因は打ち上げ費用の高さにある。H2Aの打ち上げ費用は約85億円―100億円、H2Bは約140億円―150億円に達し、急激な円高によってさらに割高となり、不利な立場に追いやられている。このほか、H2AとH2Bロケットの打ち上げ成功率は95%に達しているが、打ち上げ成功回数はH2Aが20回、H2Bが3回とまだ少なく、EU、ロシア、米国、中国と比べると見劣りする。

 商業衛星は主に静止衛星であり、毎年世界で打ち上げられる20―25基のうち、ほとんどがロシア、米国、EUによって打ち上げられている。技術の進歩に伴い、海底ケーブルの容量はますます大きくなり、新たに敷設される海底ケーブルも増えている。このため、地上の通信設備でほとんどの大陸間データ転送ニーズを満たすことができるようになり、衛星打ち上げ回数が今後大幅に増えることはないだろう。さらに、衛星は徐々に「大容量化」、「長寿化」しつつあり、これも打上げ回数の減少を招いている。

 三菱重工は2009年、初めて海外から衛星の打ち上げ(韓国のアリラン3号)を受注した。以降、100カ国あまりの機関と交渉したものの、次の受注がなかなか得られていない。今年になってからは打ち上げ費用の値下げを行っている。

 文部科学省の関係者は「韓国の衛星打ち上げは日本政府の負担を軽減すると共に、三菱重工にとっても実績となった」としている。

 三菱重工は、H2Bロケットの安定的な生産のためには、毎年少なくとも4回の打ち上げが必要としているが、日本政府は2012年以降の打ち上げ回数を年2-3回としており、このため海外からの受注を得られるかどうかが日本の商業衛星打ち上げ業務の存亡に関わっている。

 日本政府は今月12日、宇宙戦略室を発足した。同部門は日本各省庁の宇宙開発を統括し、宇宙政策の制定を担当するほか、産業利用分野を担当する経済産業省、研究開発を担う文部科学省などと調整して、政策の重点化、効率化を進める。宇宙戦略室の発足からも、日本政府の衛星打ち上げを含む宇宙産業への重視が伺える。

 業界関係者は「三菱重工は政府からの『救いの手』を待っているわけにはいかない。自力更生が必要だ」と分析する。三菱重工はH2AとH2Bの部品を統一化することでコスト低減を図る計画だという。

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