老化メカニズムに関する研究は、生物学者の間で関心の高い研究課題であるが、これまで大きな成果が得られていない。このほど、カリフォルニア大学サンフランシスコ校に在籍する中国人学者の潘登氏は、生物体の老化を招く重要な遺伝子を発見した。同研究成果は学術界を震撼させ、老化メカニズムと高齢者の疾病に関する最も権威ある科学誌「Aging Cell」に論文が掲載された。米「チャイナ・プレス」が7月21日に伝えた。
潘氏は、「これまでの老化メカニズムの研究において、人体細胞に損傷が生じると、人体がp53タンパク質を生成することが知られていた。このタンパク質は癌細胞の生成を防ぎ、癌を抑制するが、同時に老化した細胞を生み出し、人体の老化を招く」と語った。
p53タンパク質を調節することにより老化を防ぐためには、p53タンパク質が生物の体内においていかに調節されているのか、どのような物質によって調節されているのかを知る必要がある。
潘氏の最新の研究成果は、この問いに答えるものであった。
潘氏は実験・研究により、生物の体内でp53タンパク質を調節する物質はSnoNと呼ばれるタンパク質であることを突き止めた。同タンパク質は正常な細胞内ではほとんど見られないが、細胞に損傷が生じた際に生成され、p53タンパク質を刺激する。
老化防止剤を選定する重要な根拠となるため、潘氏はこの発見に対して喜びを隠せなかった。薬剤によりSnoNタンパク質の見られる細胞を除去できれば、将来的な老化細胞を除去することにつながり、老化防止に役立てることができる。潘氏は、「実験室は提携先となる医薬品メーカーを探している。この老化防止剤が1日も早く開発されることを望む」と語った。
潘氏は同研究のために、6年の歳月を費やし、数えきれないほどの失敗を経験したという。
世界の生物学者のうち、華人が高い比率を占めている。潘氏は、「生物学の研究は、その90%が失敗に終わるが、その失敗があるから10%の成功が生まれるのだ」と述べた。
潘氏は2003年に客員研究員として、アモイ大学から米国を訪れた。2006年にカリフォルニア大学バークレー校で博士課程に在籍し、主に細胞の分子生物学を研究した。老化メカニズムの研究も、この頃より開始された。潘氏は2011年にバークレー校の博士課程を卒業すると、サンフランシスコ校で博士研究員となり、老化防止に関する研究を続けた。