2012年09月17日-09月21日
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携帯電話の使用、発がんリスクはあるのか

2012年09月21日

 WHOの下部機関であるIARC(国際がん研究機関)は昨年、携帯電話の使用を「発がん性の可能性あり」のカテゴリーに入れ、脳腫瘍の一種である神経膠腫と関係があるとの見方を示した。WHOの関連組織が携帯電話とがんの関連性に言及したのは初めて。

 これを受け、世間では携帯電話の電磁波に対する注目度が一気に高まった。WHOによると現在世界の携帯電話ユーザーは50億人に達し、中国では昨年7億人を突破している。携帯の普及率はますます高まり、電磁波の危険性をめぐる論争も絶えない。

 2009年、スウェーデンなどヨーロッパ各国の調査で、携帯電話を10年以上使用すると脳腫瘍や口腔癌リスクが上がるという結果が出た。携帯電話の電磁波が不眠症、アルツハイマー病、子どもの行動障害、男性不妊症などと密接に関係があると指摘したオランダの研究もある。

 2010年3月、英国のがん専門家は研究の結果、驚くべき結論を出した。携帯電話の使用を原因とする死者数は、喫煙による死者数を上回っているという。これはこれまでに発せられた携帯の健康リスクに関する警告の中でも、最も深刻なものだ。

 フランス・ドイツ政府は今年初め、頻繁な携帯電話の使用に対する警告、とりわけ子どもに対する警告を発表した。

 一方で、携帯電話に発がん性があるかどうかについて、保守的な見方をしている専門家も多い。英国がん研究所の関係者は「携帯電話とがんの絶対的な関連性を突き止めた研究はまだなく、有力な証明に欠ける」とした。調査によると、携帯電話を使う人に脳腫瘍が生じるリスクは、使わない人のリスクと同程度だという。

 しかし、これまで携帯電話の発がん性は「可能性」の段階に留まっていたが、WHOがこのような見方を示した以上、携帯電話とがんには確かに何らかの関連性があると言える。IARCの幹部、クリストファー・ワイルド氏は「これは携帯電話が健康に及ぼす潜在的な結果であって、長期間、頻繁に携帯電話を使った場合の研究を重ねる必要がある」と指摘する。

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