2013年02月25日-02月28日
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人造生命の開発 生物兵器転用の可能性は?

2013年02月25日

 合成生命とは、その他の生命体から遺伝子を取り出し、新たな染色体を作ることを指す。これをさらに遺伝子コードを取り除いた細胞に埋め込めば、これらの人工染色体により細胞をコントロールし、新たな生命体を生み出すことが可能となる。同技術は2010年に米「サイエンス」、「タイムズ」の選出する10大科学ニュースに選ばれた。合成生命の誕生は、生命科学の研究に新たな活力を注ぎ込む。人民日報が伝えた。

 2010年5月22日、米国の生物学者クレイグ・ヴェンター氏は、実験室内で世界初の人造生命細胞を生成した。

 この人造生命は、シンシア(人造の子)と名付けられた。シンシアの価値は、人工的に合成した細菌が独自の力で複製・増殖することが可能になった点だ。これは生命の特徴である。この歴史的な意義を持つ実験により、進化によってではなく、実験室で新たな生命体を創造することが可能になった。

 英国の科学者は2012年、XNAと呼ばれる物質の人工合成に成功したと発表した。XNAはDNAの多くの重要な機能を代替することが可能であり、生命の起源および「人造生命」の研究にとって重大な意義を持つ。DNA(デオキシリボ核酸)は、周知の通り生命の遺伝子コードの重要な担い手である。人工合成されたXNAもDNAと同様、遺伝情報を保存できる。XNAはDNAと同じベースを持つため、XNAとDNAが絡み合うことにより、遺伝情報の伝達が可能となる。XNAはDNAの二つの重要な機能、つまり遺伝と進化を持つ。

 同研究は、人造生命の道で重要な一歩を踏み出したと評価された。しかし一部の専門家は、人類がXNAを用い遺伝情報を人工的に作成し新たな生命を創造するまでは、まだ長い道のりを歩む必要があると指摘している。

 多くの科学者、クレイグ・ヴェンター氏の研究チームは、「我々の研究は、人々が創造するような神の手を汚す行為から、大きくかけ離れたものだ」と主張している。彼らが合成しているのは細胞全体ではなく、細胞の一部である染色体だけだ。染色体が受納者に移植された場合、染色体は細胞内の既存の生命材料・メカニズムを利用し、自らのタンパク質を生成する。これはパソコンのOSを変更したようなもので、新たなパソコンを購入したのとは異なっている。また人工合成された染色体は、自然界に存在するゲノムをモジュールにすることが可能だ。科学者らは、大規模な生命創造の行動を見せていない。

 この新たな方法が、さまざまな生物兵器に用いられる懸念はないだろうか。その可能性は非常に低い。人類の生物に対する認識は、自由自在に創造可能な程度まで達していない。積み木のように、特定の遺伝子を組み合わせることにより、特定の生命を創造することもできない。そのため世界の急激な変化を恐れる心配はない。

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