2013年02月25日-02月28日
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低温環境の寿命延長メカニズム 中国人科学者が証明

2013年02月26日

 華中科技大学生命科学・技術学院が参加した研究の成果が今月14日、世界的な科学誌「セル」に掲載された。研究者らは、寒さが遺伝子の調節に直接的な影響を与えることを初めて発見した。低温は人を長寿にするという伝統的な考えがあるが、これに科学的な根拠が備わったことになる。長江日報が伝えた。

 論文作成者の一人、華中科技大学生命科学・技術学院分子生物物理教育部重点実験室の劉剣峰教授は、「本校は2年前にミシガン大学に研究者を派遣し、同校の生命科学研究所教授、本校の許献忠客員教授を指導者とし同研究を行った」と説明した。

 劉教授によると、線形動物・ショウジョウバエ・魚類などの冷血動物が、寒冷環境において長期間生存することが可能であることは科学的にすでに明らかにされていたが、約1世紀に渡りその原因を突き止めることができずにいたという。人類においても、中国医学では伝統的に、寒冷地域の北方に住む人は寿命が長く、四季を通じて(特に夏)気温が高い南方に住む人は寿命が短いとされている。寒さにより体温が下がり、細胞の分裂および代謝が緩慢になり、「省エネ」が可能だという説もある。

 劉教授は、「研究により、事実が異なることが明らかになった。低温環境における寿命の延長は、実際には遺伝子調節という自主的な働きによるものだ。中国と米国の科学者は今回の線形動物を使った実験により、低温環境において、より細やかな遺伝子調節のプログラムが作動することを突き止めた。この調節プログラムは線形動物のような冷血動物の他に、人類を含む恒温動物にも存在する」と指摘。「寒冷環境は、線形動物の神経細胞・脂肪細胞から発見されたTRPA1チャネルタンパクの受体を刺激し、カルシウムイオンを細胞内に取り入れる。これによって生まれる一連の信号は、最終的に寿命を司る遺伝子に到達する」と語った。

 科学者らはまた、低温の他にわさびもTRPA1を刺激することを発見した。許教授は、「外に出て冬の寒さを体感する他に、頻繁に寿司屋に足を運ぶべきかもしれない」と冗談を交えて説明した。

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