2013年03月04日-03月08日
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水溶液リチウム電池が開発 電気自動車の問題解決に期待

2013年03月14日

 ネイチャー・パブリッシング・グループ(NPG)の学術誌Scientific Reportsの最新号はこのほど、復旦大学の呉宇平教授の研究チームが実施した、水溶液リチウム電池に関する重要研究の成果を掲載した。同研究によると、これまでのリチウム電池の性能を80%向上させることが可能だ。電気自動車は10秒間の充電で400キロの走行が可能となる。このバッテリーはコストが割安で、安全性が高く爆発が生じにくい。中国新聞社が伝えた。

 呉教授の研究チームは13日、本紙に対してこのリチウム電池の構造を示した。薄いリチウムを特製の複合膜で密封し、ペーハー値が中性の水溶液に入れ、リチウムイオン電池の伝統的な正極材料であるLiMn2O4を使用することで、平均充電電圧4.2V、放電電圧4.0Vの新型水溶液リチウム電池が完成する。この成果により、水溶液の理論上の分解電圧であった1.23Vが、大きく引き上げられた。

 現在一般的に採用されているのは、有機電解質を動力とするリチウムイオン電池だ。大型バッテリーの場合、伝統的なリチウム電池はコストが割高で、生産の上で厳しい条件が存在する。また有機電解質の物理化学性質により、安全リスクが存在する。これは電気自動車という新エネルギー商品の、大規模な普及を妨げている要因だ。

 呉教授の研究チームの同成果は、低コストで大規模生産がしやすい、安全かつエコロジーな新型バッテリーの発展を可能とした。新型の水溶液リチウム電池は、水溶液を電解質とし、難燃性を高め、バッテリーの使用による発熱が生じにくくなり、安全性が高まった。また高分子材料と無機材料により複合膜を作り、電池のエネルギー消耗を5%以下に抑えた。

 このバッテリーが携帯電話に使用されれば、同じ大きさのバッテリーで通話時間が2倍以上に延長され、コストもこれまでの半分になる見通しだ。自動車についても同じであり、環境汚染も既存のリチウム電池より低減できる。

 呉教授によると、米国のエネルギー研究所はすでに同研究に目をつけており、呉教授に提携意向を示している。しかし呉教授は、国内の先見性のある企業との提携を希望しており、「新型水溶液リチウム電池は、生活のさまざまな面で具体的に応用できる。水溶液リチウム電池の技術革新が、安全性に対する安心、許容可能なコストを提供し、世界的に普及が滞っている電気自動車産業の問題を解決できればと思う」と語った。

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