今年6-8月に打ち上げを予定している中国の有人宇宙船「神舟10号」は3月31日、Il-76輸送機により酒泉衛星発射センターに輸送された。これは神舟10号が打ち上げ準備段階に入ったことを意味する。神舟10号の張柏楠総設計士は、「神舟10号とのドッキングに向け宇宙で待機中の実験用宇宙ステーション・天宮1号のコンディションは良好だ。神舟10号の打ち上げ用ロケットも組立を完了し、発射センターに空輸される」と説明した。中国航天科技集団科学技術委員会主任、中国科学院院士の包為民氏は、「神舟10号の主な任務は、実験型から応用型に向けたさらなる検証で、有人宇宙-地球往還応用性飛行を初めて実施し、さらに旋回などの新たな試験を実施する」と表明した。京華時報が伝えた。
■神舟10号の基本情報
全長:約9メートル
重量:約8トン
最大直径:2.8メートル
構造:推進モジュール、帰還モジュール、軌道モジュール、付加セグメント
打ち上げ予定日:2013年6-8月、6月上旬が候補
飛行速度:毎秒7.9キロ、1時間当たり2万8000キロ、90分で地球を一周
飛行時間:軌道上で15日間。そのうち12日は天宮1号とドッキングし飛行
初期軌道:地球から約200-330キロ離れた楕円形の軌道でドッキングし、343キロ離れた円形軌道にのる
宇宙飛行士の人数:3人。男性が2人、女性が1人か
有人宇宙飛行プロジェクトの第2ステップ第1段階:ドッキング任務を完了し、有人宇宙船の宇宙-地球往復輸送システムを完成させる
試験内容:自動・手動のドッキング、ドッキング後の飛行・旋回など
■神舟10号の新任務
包氏は、「神舟10号は宇宙空間で、目標物(天宮1号)の周辺を旋回するなどの新実験を実施する。これは今後の宇宙ステーションの建設に向けた準備だ」と語った。
将来的に建設される宇宙ステーションは、複数のドッキング位置を持つ可能性がある。宇宙船は一つの方向からのみドッキングするとは限らず、ステーションを旋回して別の位置からドッキングする可能性がある。そのため宇宙船は旋回の技術をつける必要があり、今回はその機能が試されることになる。
張総設計士は、「神舟10号はこれまでの実験内容を引き継ぎ、今後の実験を発展させる任務を担う。現在は、宇宙ステーション建設のコア技術の把握に重点的に取り組む段階だ。宇宙ステーションの建設と運営の過程で生じうる問題を、天宮1号の飛行によって発見・解決・検証する」と説明した。
中国有人宇宙飛行プロジェクトの周建平チーフエンジニアは今年の「両会」(全国人民代表大会と全国政治協商会議)の開催期間に、「神舟10号は青少年向けの宇宙科学教育活動を初実施する。これは今回の任務の注目点だ。天宮1号は宇宙の教室になり、神舟10号の宇宙飛行士が地球に向け科学教育を行い、宇宙実験を実演する。興味がある人は、テレビで受講することが可能だ」と語った。
周チーフエンジニアは、「中国は現在、大推力のロケットと補給機の開発に取り組んでおり、建設中の海南発射センターは2年内に使用可能になる。同センターは主に宇宙ステーションのモジュールと補給機の打ち上げに用いられ、将来的に宇宙ステーションプロジェクトの重要発射センターになる」と述べた。
■唯一の女性候補者
周チーフエンジニアは両会の開催期間、「今年は3人の宇宙飛行士が神舟10号に搭乗する。彼らは天宮1号で12日間滞在し、打ち上げと帰還を含め宇宙空間に15日間滞在する。神舟9号の3人の宇宙飛行士は、神舟10号の選抜に加わっていない。王亜平さんは、選抜訓練に参加している唯一の女性宇宙飛行士だ」と語った。
中国航天基金会理事長、人民解放軍総装備部元副部長の張建啓氏はメディアの取材に応じた際に、「神舟10号の宇宙飛行士は男性2人、女性1人を予定している。健康状態に問題がなければ、王亜平さんが神舟10号に搭乗する可能性が高い」と話した。