2013年04月08日-04月12日
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新型鳥インフルエンザ ウイルスの遺伝子再集合により発生か

2013年04月11日

 中国科学院微生物・免疫学重点実験室がこのほど、H7N9型鳥インフルエンザのヒト感染ウイルスの遺伝子を分析したところ、同ウイルスはユーラシア大陸から東アジアに移動した野鳥が運んできた鳥インフルエンザウイルスと、上海・浙江省・江蘇省などのアヒル・ニワトリの持つ鳥インフルエンザウイルスの遺伝子再集合により発生した可能性が出てきた。またウイルスそのものの遺伝子変異、特にN9遺伝子セグメントの異常が、H7N9型鳥インフルエンザのヒト感染、および高い死亡率の原因である可能性がある。人民日報が伝えた。

 ■野鳥とニワトリ・アヒルの遺伝子再集合

 中国科学院微生物研究所病原微生物・免疫学重点実験室の劉文軍副主任は、「ウイルスの遺伝子再集合は、自然界でよく見られる現象だ。ウイルスは寄生主の接触により、その遺伝子セグメントを交換できる」と指摘した。

 同実験室が、中国疾病予防控制センターから提供されたH7N9型鳥インフルエンザウイルスの遺伝子データを分析した結果、H7N9型ウイルスの8つの遺伝子セグメントのうち、H7遺伝子セグメントが浙江省のアヒルから発見された鳥インフルエンザウイルスと相似していた(浙江省のアヒルから発見されたウイルスを遡ると、東アジアの野鳥から発見された鳥インフルエンザウイルスに相似している)。N9遺伝子セグメントは、東アジアの野鳥から分離された鳥インフルエンザウイスルに相似している。その他の6つの遺伝子セグメント(PB2、PB1、PA、NP、M、NS)は、H9N2鳥インフルエンザウイルスと相似している。ウイルスのゲノム比較および血族関係の分析によると、H9N2鳥インフルエンザウイルスは、上海・浙江省・江蘇省などのニワトリから発生したことになる。

 生物情報分析に従事している劉タク副研究員は、「今回のウイルスが長江デルタで発生したのは、ユーラシア大陸から移動してきたH亜型(H7N3・H7N9亜型鳥インフルエンザウイルスを含む)を持つ野鳥が自然法則に基づき移動する間(韓国などの東アジアを経由)、中国の長江デルタ地区のアヒル・ニワトリが持つH9N2鳥インフルエンザウイルスと、遺伝子再集合を起こしたためである可能性がある」と分析した。

 これまでメディアはH7N9型ウイルスは「中韓のハーフ」としてきたが、劉副主任は、「野鳥は移動を続けるため、同ウイルスが両国のハーフであるとすることはできない」と訂正した。

 同チームの研究結果によると、H7N9型鳥インフルエンザウイルスは、今のところブタの間で進化した痕跡が認められない。つまりブタは今回のウイルスの遺伝子再集合の中で、寄生主にならなかったことになる。具体的な結論は、関連部門のさらなる裏付けを待つ必要がある。

 同実験室の研究者は、「新型H7N9型鳥インフルエンザウイルスのヒト感染は、ウイルスの変異によるものである可能性がある。現在すでにN9の変異が確認されており、その遺伝子セグメントは一般的なN9遺伝子セグメントより短いが、この変異により具体的にどのようなことが起きるかは不明だ」と語った。

 劉副主任は、「各種インフルエンザに効果のあるワクチンの研究は、現時点では依然として困難だ。インフルエンザの変異のペースは非常に速く、どのような変異が生じるか予測しがたいためだ。またワクチンを濫用すれば、ウイルス変異の速度を上げる可能性がある」と指摘した。

 劉副主任は今後の研究について、「H7N9型ウイルスの感染メカニズムの研究を続け、今後の予防に向け理論的基礎を提供する」と表明した。

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