2013年04月15日-04月19日
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次世代動画圧縮規格が商用化、HDの基準を再定義

2013年04月18日

 中国動画サイトの迅雷看看は、最新の動画圧縮規格「H.265」をサポートするアップグレード版クライアントのリリースを発表した。同規格は今年1月に国際電気通信連合(ITU)で承認されたが、同規格を商用化した商品が公開されるのは中国初だ。人民日報が伝えた。

 動画サイトのPPS網路電視もまた、このほど発表した「PPS影音V3.1.0」は、H.265規格をサポートする独自開発・国内初の体験版であると発表した。同サイトはさらに「臻HD」を同サイトのHDブランドとし、「インターネット全体で最高画質」のスローガンを掲げた。次世代動画規格が、普及に近づいてきた。

 ■技術

 同画質の場合は必要なバンド幅が半分に、同バンド幅の場合は画質が2倍に向上

 インターネット動画業界で広く採用されている動画圧縮・伝送規格は、2003年に発表された動画圧縮規格H.264だ。統計データによると、2012年末までに90%の動画がH.264コードを使用している。しかしながら、動画は高画質・高フレームレート・高圧縮率に向かい発展しており、H.264の有限性が表面化している。

 北京大学コンピュータ科学技術研究所の孫俊副教授は、「2011年の世界データ総量は1.8ZBで、そのうち動画データが90%を占めた。ネット伝送・記憶のうち、動画が全体の66%を占めた。大データ時代における大量の動画の伝送・記憶の問題を根本的に解決する方法は、より高圧縮率・高画質の動画圧縮コア技術の発展だ。H.265はまさにこの時代に誕生した」と語った。

 迅雷看看プレイヤーの技術総監、プロジェクト責任者の胡賀軍氏は、「H.265は高性能動画コードで、最新の動画圧縮国際規格だ。通俗的に言えば、H.265は効率の高い動画圧縮技術と理解することが可能だ。圧縮比が1000:1に達する場合も、その画面は映画館と同じように鮮明だ」と説明した。

 胡氏はさらに、「例えば約100分間の動画の容量は、圧縮しなければ約1000GBだ。しかしH.265規格を使用すれば、これを1GBに圧縮できる。圧縮後の動画の画面は、映画館と同じように鮮明だ」と語った。

 孫副教授は、「H.264と比べると、H.265の必要なバンド幅は同画質であれば半分になり、同バンド幅の場合は画質が2倍に向上する」と述べた。

体験

 HD動画のバッファ時間が半分に、動画サイトのブロードバンド費用が大幅削減

 動画サイトにとって、ブロードバンド費用は最大の悩みだ。統計データによると、優酷網の2012年のブロードバンド支出は約1億1320万元となり、純収入の42%を占めた。土豆網は6610万元で37.87%を占めた。愛奇芸の鞏宇CEOも、「動画の著作権価格が安定化に向かうと、動画サイトのコストの30%を占めるブロードバンド費用は、収益創出の唯一の障害物となった」と指摘した。

 H.265の使用と商品の応用に伴い、企業のブロードバンド費用が大幅削減される可能性がある。迅雷看看の劉豊CEOは、「H.265技術により、ブロードバンド費用を半減させることが可能だ」と語った。

 ユーザーの利便性も高まる。胡氏は、「低回線速度のユーザーはこれまで、SDの効果しか得られていなかったが、現在はより高画質の動画を楽しめるようになった。高回線速度のユーザーの場合、現在のバッファ時間はこれまでの半分になり、待ち時間が大幅に短縮される。また動画再生もよりスムーズになり、中断やフリーズの確率が大幅に低下する。ユーザーの使用しているハードが、クアッドコアプロセッサの要求に達していれば、スムーズに動画を視聴できる」と話した。

 企業とユーザーばかりではなく、H.265規格とその技術の応用は、業界全体に大きな影響を及ぼす。胡氏は、「まずはHDの定義の見直し、次にブロードバンド費用の競争、それからクライアントの優勢の発見が続くだろう」と予想した。

 業界関係者は、「HD動画基準の切り上げにより、業界は著作権・通信量の争奪から、技術争奪の段階に入る」と指摘した。

 将来性

 草案の可決から商用化までわずか7カ月、モバイルネットワーク・オフライン事業が開拓可

 H.264基準は2003年に承認され、2011年にオンラインHD動画市場で80%のシェアを占めるまで8年を費やした。しかし激しい商業競争を受け、H.265は昨年8月に草案が可決されてからわずか7カ月後の3月末に商業化を実現した。

 迅雷看看は3月30日、H.265規格を採用した動画を全国で初めて公開した。迅雷看看は、北京大学コンピュータ科学技術研究所から独占支援を受けた技術を採用したと表明した。孫副教授は、「長年の積み重ねを元に、当研究所は1年間でH.265規格に合致するLentoidコーデック技術を開発し、3月末に商業化を実現した。測定結果によると、同技術はすでに世界先進水準に達した」と説明した。

 劉CEOは、「新技術はまだ調整段階にある。当サイトは現在、約30本の動画に新技術を採用している」と述べた。

 劉CEOはH.265の広範な商業化応用が実現される時期について、「技術の普及のペースは、そのビジネス価値によって決まる。新規格は3-4年内に普及するが、これはユーザーの許容の程度に基づく必要がある。当サイトは今回、パソコンおよびパソコン環境での応用を実現したが、今後はモバイルネットワークが真の原動力となる」と指摘した。

 孫副教授は、「インターネットの他にも、動画を使える分野(ビデオ監視システムや携帯電話向け動画などのオフライン事業)であれば、H.265を採用できると思う」と語った。

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