長江はいつ頃誕生したのだろう?これは、興味深い科学の問題でもあり、地理学・地質学における「世紀の謎」でもある。南京師範大学地理科学学院の鄭洪波教授率いるチームは10年にわたる研究の結果、長江の東西貫通は今から2300万年前にさかのぼるとする見解を発表した。同研究結果は最新号の米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された。揚子晩報が伝えた。
▽長江の年齢は「世紀の謎」
長江はアジア大陸で1番、世界で3番目に長い川だ。長江が誕生した時期については諸説あり、今から4500万年前とする学者もいる。中国の学術界では今から100-200万年前の更新世に長江が形成されたとする説が有力だ。かつて長江研究は地理学・地形学からアプローチすることが多かったが、時代の移り変わりに伴い地形が変化し、元の形を完全に留めていないなどの問題が存在した。鄭教授は「我々は今回、今までとは異なり地質学の角度から研究を行った。先進的で成熟した技術である沈殿物トレーサ法を駆使し、長江中下流にある盆地の堆積物を研究することで、長江上流の物質がいつごろ下流に到達したのかを判別し、長江の形成時期を間接的に明らかにした」と語る。
▽2300万年前には上流の鉱物が南京へ
鄭教授は「10年間にわたる実地調査と採掘の結果、長江の上流区間から、河口域にある南京の雨花石地層と同じ鉱物(ジルコン)を発見した。これは、これらの鉱物が長江の流れに沿って、数千キロ離れた南京にまで到達したこと、つまり長江はこのときすでに東西が貫通していたことを意味する。南京の六合桂子山・方山の玄武岩は今から約2000万年前のものであり、ここから雨花石地層の年齢を推測すると約2300万年前となる。ゆえに長江が誕生したのもこの頃だと推測できる」と語る。
▽次なる目標は黄河の年齢測定
長江の年齢解明には、どのような意義があるのだろう?青蔵高原の隆起およびその環境影響の研究も行っている鄭教授は、「地質学において、青蔵高原の形成と隆起は大きな課題だ。長江の変化と貫通は、青蔵高原の隆起と密接な関係がある。長江の研究を通じて、青蔵高原の起源を逆解析することができる。次の目標は黄河の年齢測定だ。黄河の年齢は、今予測されているよりずっと古いと私は予想する。黄河と長江はいずれも青蔵高原に源を発し、多くの類似点があるためだ」と語る。