2013年06月03日-06月07日
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翁震平氏、メタンハイドレート研究の加速を提言

2013年06月04日

 雑誌「科学中国人」が主宰する「科学中国人マン・オブ・ザ・イヤー」の選考活動が行われている。中国船舶重工集団公司第702研究所の翁震平所長も候補者の1人だが、翁氏は「今は自分の『名誉』などを気にしている暇はない」と語る。翁氏は今、有人潜水艇「蛟竜号」の試験的応用に向け、山のような準備作業に追われている。翁氏が今最も注目しているのはメタンハイドレートの研究だ。

 ▽蛟竜号そのものではなく、科学的応用こそが目標

 有人潜水艇「蛟竜号」は6月10日、試験的応用のため南中国海へと出発する。翁氏はインタビューの中で、これまでの研究開発で得た成果についてほとんど語らず、研究の不足点や、今後の重点について主に紹介した。

 翁氏は「中国と世界先進レベルの間にはまだ格差が存在する。蛟竜号そのものではなく、科学的応用こそが目標であり、応用することで初めて蛟竜号の真の価値が体現される。深海設備の成果とは、実際に深海資源を開発し、海洋科学研究を実施し、海洋権益を保護する中で、より大きな役割を発揮することだ。まだ多くの重要技術を把握する必要がある」と指摘、「応用型の有人潜水艇にとって、潜水深度は作業区域の大きさを示すものでしかない。科学者が重視するのは、一定の深度において希望する作業を完了できるかどうかだ。蛟竜号の今後の技術改良では、深度ばかりを追い求めるのではなく、作業能力と使用コストの削減を重視することになる」と語った。

 国家863計画海洋技術分野弁公室が蛟竜号の開発・海上試験プロジェクトの検収を行った際、専門家グループは「蛟竜号は、世界の同タイプの有人潜水艇の中で最大深度となる7000メートルの潜水を実現し、様々な高性能の海底作業能力を実現した。世界の同タイプ潜水艇と比べても十分な安全保障措置が講じられている」との見方を示した。

 ▽イノベーションは一朝一夕でできるものではない

 日本は少し前、世界で初めて海底からのメタンハイドレート採掘を実現し、特殊技術を使ってメタンハイドレートからメタンガスを取り出すことに成功した。

 翁氏はこのニュースに焦りを隠せない。「エネルギー戦略という点から見れば、メタンハイドレートのような未来の資源は、急いで研究を始めなければ戦略的な影響をきたす恐れがある」。

 翁氏は、702研究所の深海設備開発における強みを活かし、できるだけ早く海底新エネルギーの開発を計画するよう主張している。

 国家海洋局は今年、江蘇省で「海洋強国建設座談会」を開催した。内陸都市からの唯一の出席者となった翁氏は「江蘇省が筆頭となってメタンハイドレート採掘企業を設立し、採掘から運輸・販売にいたる一連の産業チェーンを形成するべき。これは早めに計画し、急ぎ実施しなければならない。日本はメタンハイドレートの研究に20年間を費やしてきた。米国もシェールガスの基礎研究から商業化まで20年かかった。イノベーションは一朝一夕でできるものではなく、長期的なたゆまぬ努力が必要だ」と指摘した。

 702研究所がこのほど開催した江蘇省海洋設備産業技術協力連盟シンポジウムにおいて、翁氏は中国石油大学の陳光進教授を招き、「天然ガス水和物の利用とリスク制御」と題する報告を行い、メタンハイドレートの貯蔵と各国の現状について紹介した。翁氏はまた、702研究所の技術を背景とし、メタンハイドレートの採掘に向け、深海設備技術が抱える問題を提起し、参加者討論を行い、メタンハイドレートへの認識と理解を深めた。

 翁氏は「私の考えが、多くの部門や弁公室の指導者および専門家・学者からの肯定と支持を得ることができてうれしい。今回の試験的応用では科学者も蛟竜号に乗って海底に潜り、メタンハイドレートの海底の出口である冷湧水孔の調査を行う」と語る。

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