2013年07月01日-07月05日
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原子力緊急時対応マニュアルが発表 原発の安全性向上に期待

2013年07月04日

 国務院緊急管理弁公室と国家核事故緊急対応弁公室が7月3日に明らかにしたところによると、「国家原子力緊急時対応マニュアル」(改正版)がこのほど国務院に認可された。新しいマニュアルにはどのような特徴があるのだろうか、高度発展する原発はいかに安全稼働を実現するのだろうか?国家核緊急協調委員会の関係者および専門家が、この疑問に答えた。人民日報が伝えた。

 ◆原子力事故緊急時対応の枠組み

 改正版のマニュアルは2005年版を基礎とし、ブン川地震(ブン=さんずい+文)や福島原発事故など、近年の国内外の緊急対策の経験と教訓を総括した。

 国家原子力緊急協調委員会副主任委員、中国工業・情報化部(工業・情報化省)副部長兼国家国防科技工業局局長の馬興瑞氏は、「改正版のマニュアルは狙いを明確にし、施行の柔軟性を高め、事故に応じて講じる措置を明記した。これは国民に安心してもらえるマニュアルだ」と指摘した。

 国家原子力事故緊急対応弁公室副主任、国家国防科技工業局原子力緊急安全司副司長の許平氏は、「同マニュアルは、中国の原子力緊急対応組織体系が国家・省・稼働部門による3レベルの原子力緊急対応組織によって構成されると規定し、3レベルの原子力緊急対応組織の職責を明記した。同マニュアルは、中国の原子力事故緊急対応を4レベルに分け、異なるレベルの対応の具体的な職責および対応の内容を記述・規定した」と説明した。

 同マニュアルはまた、情報公開の原則に基づき、事故発生後に真っ先に正確かつ権威ある情報を公開することを求めた。また国際通報・国際救援などの関連事項についても、原則的な規定を設けた。

 統一的な協調には、事故の緩和・抑制の協調、放射能のモニタリング、観測・予報、被害の予測、ヨウ素剤配布、遮断・隔離、緊急避難・避難先での定住、食品・飲水の管理、出入り口の管理、除染・医療支援、港の管理、市場モニタリング・管理、社会の治安維持、情報の報告・発表、国際通報・救援などの業務が含まれる。

 国家原子力事故緊急対応弁公室副主任、国家国防科技工業局核緊急安全司司長の姚斌氏は、「重大・特大原子力事故が発生した場合、国務院は1級レベルの対応を発動する。必要な場合は指揮部を設置し、国務院の指導者が総指揮を担当する」と述べた。

 国家原子力緊急協調委員会委員、国家原子力緊急対応弁公室主任、国家国防科技工業局副局長の姚斌�艟氏は、「この協調の枠組みを通じて、中国の原子力緊急対応は急速な進展を実現した。原子力緊急対応体系が絶えず改善され、核緊急対応能力が絶えず強化され、中国の核安全に有力な保障を提供する」と語った。

 ◆中国大陸部の原子炉安全稼働、5本の防衛線を設置

 中国大陸部ですでに稼働中の原子炉は17基に達し、安全稼働を実現しており、国際原子力事象評価尺度レベル2以上の事件が発生しておらず、人・環境の汚染・被害が生じていない。長年の環境モニタリング結果によると、原発の気体・液体排出物は国家基準の上限値を大きく下回っており、原発周辺の環境も原発稼働により変化していない。

 放射能汚染防止専門家の柴国旱氏は、「中国の原発は設計・建設・稼働・管理に到るまで、世界各国の数十年間の経験を汲み取っており、安全水準が高い」と説明した。

 福島原発事故後、国務院は「原発安全計画」、「核安全・放射能汚染防止第12次五カ年計画および2020年の目標」を発表し、原発の本質的な安全性を高めた。

 中国広東核電集団副総経理の譚建生氏は、「福島原発事故は世界の原発産業に深刻な影響を及ぼし、業界全体が真剣に見直しを行った。事故の予防と緊急対応を同じ重要な位置に据え、予防・緊急対応の協調管理を実現しなければならない」と表明した。

 福島原発事故後、同社は原子力安全検査の結論を真剣に対照し、全体的な改善を実施した。また同社は緊急対応に関して、傘下企業に対する指導と協調を強化し、同社の核緊急対応技術支援センターの職能を強化した。稼働中の原発は短期安全緊急対応改善プロジェクトを実施し、建設中の原発は計画に基づき短・中・長期安全緊急対応改善プロジェクトを推進中だ。

 同グループは独自の知的財産権を持つ100万kW級第3世代原発技術の開発に取り組んでおり、安全性・先進性・経済性、特に耐震性別の電源・低熱源の耐用性などについて、10種類の重大技術イノベーションを実施した。新技術を採用し建設された原発は、複数の故障が同時発生するといった過酷な状況に対応できるようになった。

 中国工程院院士の潘自強氏は、「原発は深刻な事故が生じる可能性が低いが、技術面から見れば、確率がゼロではないことを知っておかなければならない。我々は原発事故緊急対応の準備作業をさらに強化するべきだ。原発は通常ならば5本の防衛線を設置しているが、原子力事故緊急対応は最後の防衛線であり、万が一原子力事故が発生した場合に迅速に対策を講じ、放射能汚染を最低限に引き下げる」と語った。

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