2013年07月08日-07月12日
トップ  > 科学技術ニュース>  2013年07月08日-07月12日 >  日本 原発の新規制基準が施行、5原発10基が再稼働申請

日本 原発の新規制基準が施行、5原発10基が再稼働申請

2013年07月09日

 日本の原発新規制基準が8日に施行された。北海道電力、関西電力、四国電力、九州電力の4社は同日午前、5原発10基の適合性審査(安全審査)を原子力規制委員会に申請した。申請したのは、北海道電力の泊原発1号機、2号機、3号機▽関西電力の大飯原発3号機、4号機、高浜原発3号機、4号機▽四国電力の伊方原発3号機、▽九州電力の川内原発1号機、2号機。人民日報が伝えた。

 新規制基準は福島原発事故の教訓を踏まえ、シビアアクシデント(重大事故)・地震・津波への対策を強化したほか、再稼働に当たっては、新基準に適合しているか確認する審査に通過することが条件となる。また、原発の運転期間を原則40年以内とする制度も導入された。条件を満たせば20年までの延長を認めるものだが、これも新基準の規定に適合していることが条件で、特別検査が必要となる。

 地震対策面を見ると、新基準の耐震指針では活断層の調査対象期間を、従来の「13万から12万年前以降」から、およそ「約40万年前以降」に拡大、さらに原子炉建屋など重要施設を活断層の上に設置してはならないとした。津波対策面では、基準津波を策定し、これに耐えられる防潮堤や防潮扉の設置が求められた。

 一橋大学大学院商学研究科の橘川武郎教授は、「新安全基準は全体的に見て非常に厳格」と指摘し、特に重要なポイントとして以下の2点を挙げた。

 ・事故発生時に格納容器の圧力を下げるため蒸気を排出する際、放射性物質の大気中への放出を抑える「フィルター付きベント(排気)装置」を設置する。また、電源車や移動可能な注水ポンプ車を十分に配備する。

 ・地震や津波などが発生した場合、状況の変化に基づき、随時要求を調整する。

 新基準は電力各社にとっても厳しいもので、現在日本にある50基の原発のうち、審査を申請したのはわずか10基だった。原発所在地の自治体も再稼動には慎重な姿勢を見せている。九州電力川内原発がある鹿児島県の伊藤祐一郎知事は、「再稼働にあたっては国が安全性を保証するとともに、地域住民に十分な説明を行い、理解を得ていく必要がある」と語った。

 同日、規制委員会がある東京・六本木のビル周辺には、全国各地から脱原発を訴える市民ら約80人が集まり「申請に反対」などと書かれた紙を掲げて抗議した。

 適合性審査には約半年かかる見込み。原子力規制委員会は再稼動するかどうかを最終決定する権限を持たず、原発が審査を通過し、地元自治体の同意を得た後、政府が再稼動を最終決定する。

 橘川教授は「(申請を提出した)10基の原発が全て審査を通過するのは難しい」との見方を示す。現状で有力候補と見られるのは四国電力伊方原発3号機と、九州電力川内原発1、2号機で、再稼動は来年以降になると見られる。

 橘川教授は、「原発は今の日本にとって欠かせないエネルギー。電力会社が原発を再稼動させたいのは、巨額の赤字から脱却するため」と語る。日本電気事業連合会のデータによると、福島原発の事故前、原子力発電は日本の電気の約30%を担っていたが、2012年度にはこれが1.7%に低下し、火力発電が88.3%を占めるようになった。火力発電所の燃料費が大幅に増加したため、2012年度は日本の電力会社10社のうち8社が巨額の赤字を計上し、うち5社の赤字額は過去最高となった。

 原発の再稼動は安倍政権にとっても重要な意義を持つ。安定的な電力供給を保障できるだけでなく、原発輸出を促進できるためだ。橘川教授は「円安はアベノミクスの最大のポイントだが、エネルギーを輸入に依存する日本にとって、円安はエネルギー価格の上昇を意味する。原発を再稼動させることで、このマイナス影響を減らすことができる」と語る。

 電力各社は電気料金の値上げにあたり、原子力発電所の再稼働を考慮に入れて価格を設定している。もし再稼動できなければ、電力会社は再度値上げをするしかない。これは日本経済と国民生活にとって重い負担となる。メディアの試算では、原発を1基輸出するたびに4千億円の収入を得ることができるという。安倍氏は原発輸出を経済復興の切り札とすることができる。


資料写真
※掲載された記事、写真の無断転載を禁じます