2013年07月22日-07月26日
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日本の温泉地 地熱発電の開発に着手

2013年07月25日

 福島原発事故後にエネルギー不足に陥っている日本は、発電用の再生可能エネルギーを積極的に発展させている。九州の大分県は、再生可能エネルギーの自給率が日本一となっている。大分県には日本最大の地熱発電所があり、その発電量は全国地熱発電量の40.36%、大分県の再生可能エネルギーの53.1%を占めている。大分県別府市は来年より、トータルフロー地熱発電システムの稼働開始を予定しており、世界で初めて地熱発電システムを実験段階から実用化稼働段階に移らせる可能性が出てきた。人民日報が伝えた。

 別府市は九州の北東部に位置し、同市に入ると街のあちこちから吹き出す「湯けむり」を目にすることができる。同市のトータルフロー地熱発電システムを取材したところ、同システムの出力は2000Wに達し、敷地面積は車一台分の停車スペースほどで、構造も極めてシンプルだ。

 同システムの開発者である林正基氏は、「同システムは蒸気と温水を同時に利用し、出力効率を60%高め、地下の温泉水の半分のエネルギーを電力に変換できる。同システムは既存の温泉井を利用でき、わざわざ穴を掘る必要はない。通常ならば、温泉井から得られた地熱水を各家庭まで送る場合は、100度以上の水温を約90度まで引き下げる必要がある。同システムは地熱水をそのまま発電機に入れ、温水と蒸気で二つのタービンを回転させ発電する。中から出てくる温水はちょうど90度まで水温が下がっており、そのまま家庭に送ることができる」と説明した。

 日本の地熱資源は豊富だが、多くの資源は国立公園内にあり、現行の法制度では開発が困難だ。その他の地熱資源が豊富な地域は温泉地に発展しており、現地住民は地熱発電所の建設により温泉に影響が出ることを懸念している。

 林氏は、「トータルフロー地熱発電システムは新たに穴を掘る必要はなく、周辺住民の温泉利用に影響を与えず、環境に副作用をもたらすこともない。また住民に一定の収入をもたらすため、それほど強い反発にはあっていない」と語った。同システムは敷地面積が小さく、普及させやすい。周辺住民の温泉利用を妨げないようにするため、実用化段階の出力は20-30KWに抑えられる。出力は大きくないが、稼働率は95%に達する。別府市の同システムに適した温泉井のすべてに同システムを取り付けた場合、3000世帯の電力を賄える。調査によると、全国の約500カ所の温泉井が同システムの取り付けに適しているという。設備はシンプルなものでコストも低いことから、3-5年で設備のコストを取り戻すことができる。

 別府大学国際経営学部の阿部博光教授は、「同システムは大きな影響を生む。まず、これまで廃棄されていた地熱資源で発電することにより、現地の関連産業が刺激され、雇用機会の創出、地方経済全体の活性化につながる。また別府市が全国に先駆けて同システムを建設した場合、多くの観光客が現地を訪れることになる。同システムが示す環境意識もまた、日本全体に積極的な影響をもたらすだろう」と指摘した。

 大分県商工労働部工業振興課エネルギー対策班の宮本賢一氏は、「同システムはすでに実験段階を終えており、技術面の難題もすでに克服された。早ければ来年の初め頃に実用化され、3カ月の試験段階を経てから大幅な普及に入る」と語った。しかし同設備は、温泉井の温水の温度と気圧に応じ再調整する必要があり、大規模普及の課題となる。

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