2013年10月14日-10月18日
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肺がんの発症 大気汚染・タバコ・ストレスが原因に

2013年10月23日

 世界保健機関(WHO)の外部組織である国際がん研究機関(IARC)はこのほど、微小粒子状物質「PM2.5」など大気汚染物質の発がんリスクを、全5段階のうち危険度が最も高い水準に引き上げたと発表した。これらの大気汚染物質は発がんの主な環境要素であり、同時に人の呼吸器疾患や心臓病のリスクを引き上げるという。記者は権威ある専門家を取材し、市民が関心を寄せる問題について答えてもらった。光明日報が伝えた。
 ◆環境・暮らしに関する肺がん発症率・死亡率が上昇傾向
 IARCは、中国などの新興国・開発途上国において、大気汚染問題が日増しに深刻化していると強調した。大気汚染が肺がんを引き起こすことは、十分な証拠によって示されている。2010年には世界の約22万3000人が、大気汚染による肺がんで死亡した。

 人々は大気汚染が健康を損ねることについて理解している。報道によると、中国の約10億人が微小粒子状物質の漂う環境で生活しており、6億人の生活環境に存在する二酸化硫黄が基準を超過しているという。別のデータによると、中国では毎年、都市部の大気汚染による呼吸器疾患で診断を受ける患者数が35万人に、急診を受ける患者が680万人に達している。大気汚染による環境・健康の損失は、中国のGDPの7%を占めるという。
 中国国家衛生・計画生育委員会の調査からも、環境・暮らしに関する肺がんの発症率・死亡率が明らかな上昇傾向にあることが分かり、過去30年間で465%上昇した。肺がんは肝臓がんに代わり、中国の悪性腫瘍による死亡の主因となっている。中国工程院院士の鐘南山氏は、「粒径が5マイクロメートルであれば、気管・気管支に達する。1-3マイクロメートルであれば肺胞に達し、永遠に肺胞の中に留まることになる」と指摘した。またこれまでは喫煙が発がんの最も重要な要因であるとされていたが、今や大気汚染の影響も侮れなくなっている。なぜなら肺がんの発症率が大幅に上昇する中、中国の近年の喫煙率は横ばいになっているからだ。それに都市部と農村部の喫煙率には大きな差がないにも関わらず、都市部の住民が肺がんにかかる比率は農村部の2-3倍に達しており、特に都市部の非喫煙女性が肺腺がんにかかる比率が大きく上昇している。
◆肺がんは汚れた空気とストレスによるもの
 大気汚染の他に、多くの「空気」が肺がん発症の元凶になっている。首都医科大学肺がん診療センター長、北京宣武医院胸外科主任の支修益氏は、肺がんは汚れた空気とストレスによるものだと指摘した。
 支氏によると、この空気には4種類があり、大気汚染を除き最も恐ろしいのは煙草の煙だという。研究結果によると、8割以上の肺がんの誘因はタバコだ。その他にも肺がんの発症率を高める、見落とされやすい2種類の空気がある。まず屋内の装飾や装飾材による室内空気の汚染、次に中国特有の調理法による油煙の汚染だ。その他にも、ストレスを溜め込みやすい性格は、がんになりやすい性格だという。
 支氏によると、家の装飾の際に発生するベンゼンやラドンなどの有害気体が肺がんを引き起こすため、新居の装飾材には環境保護部門が認定したクリーンな装飾材を選択するべきで、他にも室内の喫煙と受動喫煙による健康被害にも注意が必要だ。それからキッチンの油煙汚染は、人々の健康を脅かす目立たぬ要因になっている。菜種油と大豆油を270-280度に加熱した際に発生する油煙凝縮物(有害物質と発ガン物質を多く含む)は、呼吸器を通じ体内に入り細胞の染色体を傷つける。これは発がんの発症と関連するとされている。他にも性格面の問題は発症と関連しているが、そのうちストレスを溜め込みやすい性格は、がんにかかりやすい性格とされている。調査によると、嫌なことがあっても他人に愚痴をこぼさず、黙ってイライラしてばかりいる人は、開放的な性格の人よりも肺がんにかかる確率が大幅に上がるという。

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