2013年11月11日-11月15日
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マクロスケールの超潤滑が発見、永遠に止まらない時計も可能に

2013年11月21日

 清華大学の魏飛教授が率いる研究チームはこのほど、大気環境中のマクロスケールの超潤滑現象を世界で初めて測定したと発表した。これは、摩擦現象を克服するための希望の光となった。超潤滑の材料・部品が製造されば、ぜんまいを1回巻くだけで永遠に止まらない時計や、永遠に磨損しない軸受けが誕生することになる。人民日報が伝えた。
 データによると、世界の約3分の1から2分の1の一次エネルギーは、摩擦によって消耗している。工業発展国の摩擦・磨損による損失は、GDPの5-7%を占める。ナノスケールにおいては、材料の表面積が拡大するに伴い、表面摩擦が部品の性能と寿命を損ねる重要な要素となる。
 摩擦・磨損という問題を解決する「良薬」は、超潤滑の実現だ。超潤滑は本当に存在するのだろうか?過去20年間の多くの科学実験によると、超潤滑は特殊なナノスケールの中でのみ存在し、かつ大多数は超高真空状態においてのみ実現されるが、これは実用化とは程遠い。科学者はマクロスケールでの超潤滑は、実現がほぼ不可能としていた。
 魏教授が率いる研究チームは10年間に渡り、カーボンナノチューブ関連の多くの研究を行った。同チームは、カーボンナノチューブの隣り合う2層の管壁の間で、大スケールの相対すべりが生じることを発見した。これは超潤滑を研究するための理想的な材料だ。同チームはその後、清華大学ナノ力学・多学科学際革新研究センター、北京大学情報学院と共同実験を実施した。
 研究者は初めに、「完璧」と呼べるカーボンナノチューブを作り、かつその数センチに渡る範囲内にいかなる欠陥もないことを証明した。研究者は実験の中で、cm級のカーボンナノチューブの内外壁の間で高速の相対すべりが生じることを観察し、かつ管壁の間の超低摩擦力を測定し、超潤滑現象を証明した。興味深いことに、この摩擦力はカーボンナノチューブの長さとは関係がなく、どれほど長くても内層が簡単に滑り出すという。
 研究者はまた、両端が断裂したカーボンナノチューブの外壁にナノ片状構造を取り付けることで、自然に「ミクロ風車」が形成され、そっと息を吹くだけで高速回転することを発見した。これもまた、超潤滑現象を間接的に証明した。
 世界的に有名な摩擦理論の専門家、テルアビブ大学のMichael Urbakh教授は、「これは歴史的な節目となる新たな発見で、マクロスケールの超潤滑の存在を確かに証明した。ミクロ・マクロスケールで、これほど弱い摩擦力が観察されたのはこれが初めてだ」と評価した。
 魏教授は、「我々は超潤滑の実現のために理想的な模型を提供した。その他の材料でも条件さえ満たせば、同じく超潤滑を実現できる。今後ナノ部品への幅広い応用が期待できる」と語った。

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