嫦娥3号計画、軍用・民間用の新技術を生む可能性

2013年 12月3日

 米国のアポロ計画は3000件以上の新技術を生み、そのうち1000件以上(バーコード技術、カラードプラ法など)が民間用に改良された。月探査機「嫦娥3号」のプロジェクトは、中国が持つ動力・制御・エネルギー・通信など各分野の高水準技術の集大成でり、その意義は人々の注目を集めている。多くの専門家は、「今回の月探査に使用される高精度技術は、軍用・民間用で幅広い活用が可能だ。月探査の成果についても大いに期待できる」と指摘した。京華時報が伝えた。
 ◆軍用 誘導技術、ミサイル開発に応用可能
 月探査プロジェクトのロケットシステム総設計士の姜傑氏は1日、「今回の打上げ任務は、近地点200キロ、遠地点約38万キロの地球から月に向かう遷移軌道に投入しなければならず、打上げの際に少しの誤差が生じただけで、大きなミスにつながる」と指摘した。
 姜氏は、「精度を保証するため、嫦娥3号の打上げ任務を担う長征3号乙(改良型)ロケットは、初めてレーザー慣性計測ユニットと衛星測位修正を組み合わせた複合誘導方式を採用した」と説明した。
 複合誘導とは複数の誘導方式を採用した誘導のことで、通常ならば中距離以上のミサイルにのみ使用できる。中国のHQ-9防空ミサイルは、同技術を採用した。
 姜氏は、「レーザー慣性計測ユニットは内蔵型の測定器で、人の小脳と同じように、ジャイロスコープなどの計測器によりロケットの飛行姿勢を判断し、かつデジタル化方程式により修正方法を導き出す。同時にその慣性環境を利用し、ロケットをそれることなく予定軌道に乗せる」と述べ、「これを踏まえ、嫦娥3号は衛星測位修正装置を追加した。レーザー慣性計測ユニットは内蔵型の設備であり、ロケットの飛行中にシステムの誤差が発生し、飛行軌道に異常が生じた場合、衛星測位修正装置がこの不足を補える」と指摘した。
 軍事専門家の李大光氏は、「嫦娥3号の誘導技術は非常に先進的で、遠隔操作による誘導も動力システムも、中国のミサイル開発に応用できる」と語った。
 ◆民間用 断熱技術、温水器の製造に応用可能
 中国航天科技集団空間技術研究院の研究員であるホウ之宏氏(ホウ=まだれ+龍)は、「中華人民共和国の建国以来、わが国は2000種以上の新材料を開発した。そのうち80%は、宇宙技術のけん引を受け開発されたものだ。宇宙事業は材料に高い要求を突きつけるため、材料技術の開発をリードする。例えば太陽熱温水器は、宇宙事業の断熱技術を利用し保温を実現する」と述べた。
 ホウ氏は、「月の温度変化は激しいため、嫦娥3号が使用する材料は軽量・高耐熱性の特長を持たなければならない。これらの新材料は今後、民間用に改良できる。また嫦娥3号が使用する新材料・遠隔操作技術も、スマートロボットの製造、自動車製造などに使用できる」と説明した。
 専門家は、「月は地球よりも安定的で、かつ低重力・高清浄度という特殊な自然条件と環境を持つため、物理・生命科学の実験に適している。そのため地球上では生産できないもの、例えば高級なバイオ製品、薬品、多くの特殊材料を生産できる」と指摘した。
 ◆宇宙事業 人類の火星上陸の基礎を築く
 中国月探査プロジェクト首席科学者の欧陽自遠氏は、「月は将来的に、豊富なエネルギーを提供する拠点になる。月には尽きることのない太陽熱資源があり、月面の太陽熱の密度は地球より高い。月の土壌にはヘリウム3が多く存在する。ヘリウム3は核融合の材料で、月の埋蔵量は約100万トンに達し、人類社会の1万年以上のエネルギー需要を満たせる」と語った。
 専門家は、「資源利用能力の強化に伴い、人類は将来的に月にロケット燃料加工場、もしくは『ガソリンスタンド』を建設することで、宇宙輸送のコストを大幅に削減し、有人宇宙飛行をより経済的にし、利便性を高めることができる」と予想した。
 月はまた天体観測・科学実験の拠点となり、人類の深宇宙探査の中継ステーションにもなる。宇宙船は月面では大きな推進力を必要としない。これは少ないロケット燃料とコストにより、月の引力から離れ別の星に向かえることを意味する。米国の宇宙探査構想は、先に月に到達してから、火星に向かうことを計画している。ゆえに月は人類が火星に向かい、深宇宙探査・太陽系探査を実施するための、自然の港になる。


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