2013年12月09日-12月13日
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「ブタの血や黒キクラゲが肺のPM2.5を掃除」は都市伝説

2013年12月11日

 ここ数日、中国の多くの都市で大気汚染が原因の煙霧が発生し、ネット上ではさまざまな煙霧防御アイテムが話題になっている。中には、ブタの血や鴨の血、黒キクラゲなどには、肺をきれいにする働きがあるとの投稿もある。これは本当なのだろうか?関連の食品専門家や環境専門家を取材してみると、「ぜんそくや気管支炎を引き起こす微小粒子状物質『PM2.5』は、呼吸で肺胞に入る。しかし、ブタの血や黒キクラゲなどを食べても胃腸に入るだけで、呼吸器系の中にあるPM2.5に触れることはない。ネット上の関連の投稿には全く科学的根拠がない」と指摘した。 新京報が報じた。
 PM2.5を掃除してくれる食品はない
 ネット上の投稿によると、ブタの血、鴨の血、黒キクラゲなどを食べると、肺に入ったPM2.5を掃除することができる。
 しかし、北京大学公共衛生学院の潘小川・教授は、「PM2.5は、複数の化学物質が構成する微小粒子状物質。各地のPM2.5の成分はとても複雑で、場所によって異なる。PM2.5を防御したり、掃除したりする食品はない。効果があるとされている各種食品も防御などにそれほど効果を発揮することはない。つまり、PM2.5の防御にあるとされる食品に科学的根拠はない」と明確に述べている。
 また、中国農業大学食品科学・栄養工程学院の朱毅・准教授も、「PM2.5は肺の細い気管にまで達し、蓄積する。ブタの血、鴨の血、黒キクラゲは消化された後、PM2.5が蓄積する場所にまで達し、掃除してくれるという投稿に科学的証拠はない」としている。
「ブタの血が肺を掃除」は都市伝説
 では、ブタの血や鴨の血が肺を掃除してくれるという説はどこから来たのだろう?朱准教授は、「ブタの血や鴨の血に肺を掃除する効果があるというのは、単なる都市伝説で、中国医学にそのような見解は存在しない」としたものの、「ブタの血や鴨の血のヘム鉄は、腸の粘膜上の細胞で吸収され、吸收、利用率はとても高い。食用のブタの血や鴨の血は、有毒物質の吸収を減らし、有毒物質の体外排出を加速させることが研究によって証明されている。この点、ブタの血などは、人の体に有益であると言え、適度に食べることは健康に有益」との見方を示した。
 また、潘教授は、解剖学上で言われているPM2.5の肺への悪影響を軽減してくれる食べ物は今のところないとし、「肺を掃除してくれる食品という情報を軽々しく信じてはならない」と注意を呼び掛けている。潘教授によると、「中国医学で言う『肺の掃除』とは、実際には、肺の乾燥した状態を改善することで、現代医学で言う、肺の汚染物質除去とは全く異なる概念」と指摘している。
 バランスの良い食習慣が最も効果的
 朱准教授は、「最も効果的な煙霧対策は、外出や喫煙を控えること、さらにさっぱりしたものを食べること、刺激のある食べ物を控えることなど。また、新鮮な野菜や果物をたくさん食べること。1日少なくとも500グラムの野菜と250グラムの果物を食べて、ビタミンを補充するようにするのがいい。また、水をたくさん飲むこと。総じて言うなら、バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠を心がけ、健康な状態を保つのが最も効果的ということ」とアドバイスしている。

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