嫦娥3号が間もなく月面着陸、5つの課題に直面

2013年 12月13日

 月探査機「嫦娥3号」は12月14日夜に月面軟着陸を実施する。これは嫦娥3号の最も困難な作業であり、任務の成敗のカギとなる。嫦娥3号は月から15キロ離れた地点から放物線を描くにようにして降下し、速度を毎秒1.7キロからゼロに落としていく。このすべての過程に、約12分の時間がかかる。
 中国月探査プロジェクト総設計者の呉偉仁氏は、「打ち上げ・月接近に伴う制動・軌道変更と、月面降下を比べると、後者の方がより重要になる。これは我々にとって新しい、最も重要な試練だ」と指摘した。
 ◆課題1 虹の入江に着陸できるか
 指定された「虹の入江」に正確に降下できるか否かは、嫦娥3号の軟着陸が初めに直面する難題だ。
 これまで月周回衛星「嫦娥1号」と「嫦娥2号」が、月周回飛行の技術問題を解消していた。嫦娥3号は今回、月周回の成功後に、指定されたエリアに降下できるかが問題となる。
 これは高速道路を自動車で走るようなもので、速度が遅ければ時間がかかり、速すぎればブレーキが間に合わなくなる。目的地を通り過ぎるか、衝突してしまえば、任務失敗だ。
 ゆえに嫦娥3号の「ブレーキ」のタイミング、遠近の正確な把握が、今回の任務の技術的な課題・カギとなる。
 ◆課題2 最終的な着陸地点の選択
 嫦娥3号の着陸地点は、比較的平坦な虹の入江が選ばれている。しかし月の地形の不確定性により、最終的な着陸地点の選択には、一定の難度が存在する。
 呉氏は、「月面は全体的に見れば比較的平坦であるが、50×50メートル、10×10メートルといった狭い範囲の小さな環境において、地形がどのような状況であるかはっきり把握できない。また最終的にどこに着陸するかも不明だ。これは我々にとって大きな試練だ。さまざまな措置を講じてはいるが、高いリスクが存在する。月は岩とクレーターが多く、岩にぶつかることもあれば、クレーターにはまることもある」と説明した。
◆課題3 空気摩擦による減速が不可能
 月には大気がないため、月面着陸と地球上の着陸の方法がまったく異なっている。月では、真空状態での軟着陸となる。
 嫦娥3号探査機システムの総設計者である孫沢洲氏は、「大気がないということは、空気摩擦を利用した減速ができないことを意味する。嫦娥3号を月面で安全に軟着陸させるためには、伝統的なロケットエンジンと推進システムでは不可能だ。月という大気のない天体の表面で軟着陸を実施する際に、伝統的なエンジンでは推進力を変化させられないからだ」と語った。
 今回新たに開発された7500Nの、推進力を連続調節できるエンジンは、嫦娥3号の正確なコントロールを実現し、この課題を解決できる。しかし初めての開発と使用のため、同エンジンが最終的にどのような働きをするかについては、軟着陸当日の様子を見守る必要がある。
 ◆課題4 ほぼ全自動で着陸
 着陸の過程においては、探査機の速度・高度をリアルタイムで測定し、これを随時調整する必要がある。また月面の地形は複雑で、安全に着陸できるエリアを選択しなければならない。孫氏は、「これらの作業は短い時間内に完了させなければならず、すべて探査機が自動的に実施するため、自主コントロールの課題が生まれる」と指摘した。
 15キロの高度から始まる「動力降下」の段階は、業界関係者によって「最もスリルあふれる段階」と称されている。嫦娥3号は完全に独力でコントロールを実施し、降下・着陸地点の確定、軟着陸など一連の重要な動作を完了しなければならず、人間が干渉できる可能性はほぼゼロだ。
 嫦娥3号探査機システム副総指揮の譚梅氏は、「この段階でのコントロールは間に合わず、事前にプログラミングしておくしかない」と述べた。
 ◆課題5 月面粉塵の付着、探査機故障の可能性も
 月の土壌には一定の厚みがあり、着陸機の着陸、月面ローバーの走行といった人為的な要素により、粉塵が舞い上がる。月面粉塵が探査機の表面に付着すれば、光学システムの敏感度が低下し、機械構造がフリーズするなどの故障が発生する可能性がある。
 また探査機の月面着陸の際に、月面からの強い衝撃エネルギーと、探査機から生まれるプルームが、安全着陸の最大の脅威となる。探査機の着陸緩衝構造がこの試練を乗り越えられるか否かは、当日にならなければ分からない。


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