2015年09月21日-09月25日
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中国の暗黒物質研究に進展、発見まであと一歩に迫る

2015年09月24日

 世界で最も深い場所にある暗黒物質(ダークマター)実験室、中国錦屏地下実験室の第2期拡張工事は順調に進められている。また、中国の「宇宙の目」と呼ばれる世界最大口径の球面電波望遠鏡(FAST)は、反射鏡ユニットの取り付けが始まった。さらに、世界で観測範囲が最も広く、エネルギー分解能が最も優れた「暗黒物質粒子検出衛星」が、年末に酒泉衛星発射センターから打ち上げられようとしている。新華網が伝えた。
 近頃の中国の一連の科学研究計画は、「宇宙の幽霊」と呼ばれる暗黒物質に焦点を絞っている。暗黒物質を探索する道に、中国が姿を現す機会が増えている。
 世界の暗黒物質探索は、宇宙のほかに、地中奥深くの地下実験室内でも数多く実施されている。こうすることで、地球上のどこにでも存在する宇宙線と放射線の干渉を減らすことが可能だ。中国錦屏地下実験室の上部は2.4キロメートルの岩石に覆われており、世界で最も深い場所にある暗黒物質実験室となっている。また、洞窟内の岩の多くが大理石で、放射材料が少なく、間違った信号を発する放射源から遠く離れている。2010年の稼働開始後、清華大学が担当するCDEX実験チーム、上海交通大学が担当するPandaX実験チームの2組の実験チームが入居している。
 過去5年間で、中国の暗黒物質の研究が急速に進められた。CDEX実験チームは2014年に、高純度ゲルマニウム探索機で世界で最も感度の高い実験結果を得た。これにより、暗黒物質が存在する可能性のある範囲が狭められた。
 PandaX実験チームも同年、第1期実験で得られた初のデータを公開し、世界でこれまで発見されていた軽質量暗黒物質の信号に疑問を呈した。
 錦屏地下実験室は第2期拡張工事を進めている。実験室の容積は現在の4000立方メートルから約30万立方メートルに拡大し、より多くの実験チームを受け入れられるようになる。
中国「千人計画」(ハイレベル外国専門家プロジェクト)専門家、上海交通大学教授の季向東氏は、「実験・探索の感度の向上に伴い、中国人は世界に先駆け、理論上予言されていた暗黒物質を発見する可能性がある。我々はすでに暗黒物質発見まであと一歩に迫ろうとしている」と話した。

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