2016年04月11日-04月15日
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中国の自動運転車、テスト走行の全過程を追う 重慶—北京

2016年04月19日

 野を越え山越え、砂埃をあげながら一路疾走する。中国初の長距離自動運転テストを実施する2台の自動運転車が16日午後、5日間の走行を経て北京入りに成功した。新華社が伝えた。
◆自動運転を初体験
 2台のシルバーの自動運転車が12日午前11時頃に重慶の市街地を出発し、中国初の長距離自動運転テストを開始した。
 発車後、運転席に座るテストドライバーの李増文氏は、ディスプレイの「自動運転」をタップし、ハンドルの両側に触れた。車は自動運転モードになり、時速110キロまで加速した。李氏はハンドルから手を、アクセルとブレーキから足を離すと、シートを後ろ側に倒した。ハンドルは自ら方向を調節し、車は安定的に前進した。
 前方の車が急に減速したり、障害物が現れた場合、自動運転車は問題ないのだろうか?記者が心配していると、前方の車が急に減速した。「ブレーキ」と記者が言い終える前に、車は自動的にブレーキを掛け減速した。
 李氏は、「心配ない、車線変更と追い越しも問題ない」と言いながら、方向指示器を操作した。車はスムーズに車線変更し、加速し前方の車を追い越した。
◆秦巴山地のトンネルという試練
 車は13日午前に運転を再開し、そびえ立つ秦嶺山脈を突破し、「千年の古都」西安に向かおうとしていた。ところが自動運転車と「千年の古都」の間には、多くの急カーブと連続するトンネルが横たわっていた。
 長安汽車工学研究総院チーフエンジニアの黎予生氏は、「車は間もなく、最も厳しい試練を迎える。トンネル内は往々にして薄暗く、車線が汚れていたり摩耗していることがあるので、車の目である感知システムの試練となる。急カーブは脳の中央制御システム、執行システムにとっても大きな試練となる」と述べた。
 車は午後2時頃、長さ18キロ(全国最長)の秦嶺終南山大トンネルに入った。長いトンネル内で、各種照明が交錯するように反射した。しかし車は複雑な交通状況を識別し、安定的に走行した。
 午後4時頃、車は西安市に入った。
◆無人運転を実現する方法とは?
 車は14日、次の目的地の鄭州市に向かった。
 車が高速道路を走行する間、李氏は携帯電話でNBA選手コービー・ブライアントの引退試合を観戦した。李氏は記者に対して、「平野部に入り、テストの難易度が下がった」と話した。
 「自動運転車はなぜ自動的にブレーキを掛けられるのか」との質問に、李氏は、「車に内蔵されているセンサー、5つのミリ波レーダーは、車の目と耳のようなものだ。360度の周辺環境を感知し、自動的にブレーキを掛ける前に、周囲の環境が安全か、交通ルールに合致するかを確認し、メインシステムに情報を伝える。車内のメインシステムは脳のようなもので、伝えられた情報を処理した上で判断を下し、方向転換、制動、動力システムの操作を自動的に完了させる」と説明した。
 車は午後5時頃、順調に鄭州市に到着した。
◆危険区間、車のジャングル
 15日には、鄭州市から石家荘市に移動した。李氏は、「今は平野部の工業地帯に差し掛かっており、多くの大型車が走行する。これは感知システムにとって厳しい試練だ。一部の大型トラックは走行中、タイヤが車線内であっても、車体もしくは不規則な形状をした貨物がこちら側の車道に入ってくる。自動運転車は識別の際に、判断ミスを犯しやすい」と語った。
 平野部では、強い光も自動運転車の「敵」になる。日差しが路面に差し込むと、反射や光散乱が生じやすく、車線と道路の見分けがつきにくくなる。これは感知システムの車線識別に影響を及ぼす。またすれ違う車によるハイビームで、自動運転車のカメラも人の目と同じように、車線の見分けがつきにくくなる。李氏は、「この難題を解消するためには、レーザーレーダーなどの技術による補助が必要だ。レーザーレーダーは市街地内のテスト車で使用したことがある。今後はこれを小型化し、高速道路のテスト車に内蔵するために、研究を進めなければならない」と述べた。
 午後5時頃、車は石家荘市に到着した。
◆北京にゴール、新記録が誕生
 車は16日、国道107号線を丸一日走行し、午後6時頃に北京に到着した。中国製造業が誇りとする新記録が、これにて誕生した。自動運転車の1度のテストによる走行距離で、世界2位を記録したのだ。独アウディの自動運転車は昨年、米国の西海岸から東海岸までを横断し、世界最長記録を樹立した。
 記者はテストの全過程を見守り、重慶市を出発し、西安市、鄭州市、石家荘市を経由した。総走行距離は1700キロ以上。交通状況は複雑で変化が激しかったが、テスト車は長時間に渡り自動運転状態を維持した。

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