愛らしいジャイアントパンダはかつて肉食動物だったが、長期的な進化により「菜食主義者」になった。大きく鋭く頑丈な歯は竹などを粉々にし胃袋に収めることができる。中国科学院金属研究所材料疲労・断裂実験室の劉増乾博士が率いる研究チームはこのほど、パンダの歯が自己修復できることを初めて発見した。これは新型バイオニクス材料の開発に新たな発想をもたらした。また人の義歯複合材料、高強度・高電導接触材料などの研究において新たな進展を遂げた。科技日報が伝えた。
歯は動物が生まれ持つ攻撃と防御用の武器及び食物を咀嚼して消化を助けるための道具で、バイオニクス材料の重点研究対象でもある。研究によると、パンダの歯は自己修復が可能なのは主にそのエナメル質に高密度かつ有機物質が豊富なミネラル隙間と巧妙な組織構造があるためだ。劉氏によると、パンダの歯のミネラル質は樹木のように垂直かつ緊密に並んでおり、エナメル質の「堅固な森」を形成している。有機物質は「ミネラル質の樹木」の間の細い隙間を埋める。ミクロレベルで見ると、エナメル質の変形・損傷・自動回復は、この小さな隙間によって実現される。
説明によると、パンダの歯のエナメル質の界面には天然の有機質があり、水和条件のもと膨潤し、高分子チェーンの柔軟性が上がり、透化温度が下がるといった現象が生じる。これによりエナメル質の自己修復が実現される。パンダの唾液に含まれる水分子は、歯の自己修復に対して強い促進作用を発揮している。
研究チームはさらに、パンダの歯の主な種類、形式、組織構造の特徴を明らかにした。材料科学と力学の角度から、攻撃と防御の効果を同時に発揮する性能改善メカニズムを解明し、共通性を持つバイオニクス材料の設計の原則を導き出した。