中国で実施されている「山東へのトキ帰還」トキ野生化放鳥プロジェクトで、番号162のトキが3月19日に11時間、260キロという長時間、長距離の移動を行い、中国のトキ野生化個体群移動観測における「1日当たりの飛行時間」と「連続飛行距離」の2つの記録を達成した。新華社が伝えた。
3月19日、番号162のトキは山東省東営市利津県塩窩鎮から飛び立った。1時間後には陸地を離れて渤海に入り、そこから4時間連続で海を横断して天津港エリアを経由して河北省滄州市に入った。
研究チームは北斗衛星追跡システムにより、この個体が強い気流の中でも時速30~50キロで渤海横断に成功したことを確認。渤海海峡の強い気流と着地点のない飛行環境は、翼幅1.5メートルにも満たないトキにとってはまさに「生死をかけた試練」となった。
全国鳥類標識センターの劉冬平副研究員は「この発見は学界の認識を塗り替えるものだった。トキは短距離を移動する鳥類とされてきた。これまで確認された連続飛行距離は約40キロに過ぎなかったが番号162は200キロ近く連続飛行した上、正確な海を越えるナビゲーション能力も発揮した。この成果はトキ東部移動個体群の再構築に新たな希望をもたらしている」と述べた。
山東黄河デルタ国家レベル自然保護区の王安東シニアエンジニアは「保護区のトキは野生化放鳥科学研究のため、陝西省と河北省から導入されたものだ。2024年10月に放鳥された第1陣の6羽のうち、4羽には衛星追跡装置と足輪が装着された。番号162以外の3羽はそれぞれ、寿光市、東営区、利津県に向かった。自然保護区のトキは現在すでに繁殖期に入っている。繁殖期終了後には、採餌能力と飛行能力が高いトキを3~4組選び、第2陣の野生化放鳥を実施し、第1陣のトキに仲間を送り、中国東部沿岸湿地で野外個体群の形成を目指す」と説明した。
トキは中国の国家1級保護動物で、「東洋の宝石」「鳥類のジャイアントパンダ」と呼ばれている。
(画像提供:人民網)