2025年06月02日-06月06日
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深圳国際文化産業博覧交易会、AIに注目集まる

2025年06月03日

 中国広東省深圳市で5月22~26日に開かれた第21回中国(深圳)国際文化産業博覧交易会(以下、「文博会」)では、人工知能(AI)技術が来場者の注目を集め、主役を務めた。人民網が伝えた。

 文博会の会場では、来場者がロボットによる案内を聞きながら展示を見たり、裸眼3Dやリアルタイム多言語翻訳を体験することができた。

 大規模言語モデルを活用したスマートな創作活動から、人型ロボットの「十八番芸」、仮想と現実を融合した没入型空間、そしてオープンな共創による知的エコシステムまで、AIは「どこにでもいて、何でもできる」存在として、文化産業の在り方や境界を再構築している。

ソフトパワー:大規模言語モデルとAIエージェントが文化の創造力を再構築

 文博会では、AI大規模言語モデルがさまざまな「AIエージェント」として、文化の創作から発信、消費に至るあらゆるプロセスに深く関わっていた。

 文博会が騰訊雲(テンセントクラウド)と共同開発したAI展示アシスタント「文小博」も初登場した。騰訊のAI大規模言語モデル「混元(Hunyuan)」と「DeepSeek(ディープシーク)」をベースに、20年分の文博会のデータを活用した「文小博」は、出展者に対して的確な提携相手を紹介できるほか、多言語翻訳や博覧会レポートなどのコンテンツをリアルタイムで生成することが可能だ。

 人民網が発表したAIエージェントプラットフォーム「初芯」は、独自開発したAI大規模言語モデル「人民智媒」のほか、複数の主流AI大規模言語モデルを基盤として導入。価値観の整合技術を搭載しており、ノーコードでQ&Aや世論分析などのアプリ開発を可能にし、報道制作や政策解説などで力を発揮する。

コアテクノロジー:ロボットとスマートハードウェアが文化の新たな媒体に

 ハードウェアの分野では、「触れて感じられる」形のAI技術が人気を集めた。コーヒーロボットは、90秒でラテアートを描いたコーヒーを提供できるほか、ユーザーの写真を使ってラテアートを作ることもでき、コーヒーをコンテンツ創作にまで高めている。また、人型ロボットがピアノや古筝を演奏したり、AIによって「復活」した詩人の李白や杜甫が、タイムスリップしたかのような体験を来場者に提供しており、外国からの来場者も「言語の壁を意識することなく、漢詩の魅力を感じることができた」と評価していた。

 深圳発の企業「雷鳥創新」が展示したAIグラスも大きな注目を集めた。わずか76グラムと軽量化されたAIグラスには、マルチモーダルAI大規模言語モデルとクアルコムの「Snapdragon AR1」チップが搭載されている。また、AIエージェントのアプリストアを展開しており、ユーザーはメガネ一つで、音声や画像の翻訳、情報メモ、スマートQ&A、物体認識、道路ナビ、一人称視点の画像・動画撮影といった機能を利用することができる。

 人民網のスマートハードウェア「AI之眼」も注目を浴びた。コンピュータビジョンと音声認識が一体化したこのデバイスは、人間のガイドのように、展示品の背景にある歴史や文化を解説するほか、マルチモーダルインタラクションにより、ユーザーが千年以上の歴史を誇る文化財との「対話」を実現でき、「カスタムメイド」の鑑賞体験を提供することができる。

新たな空間:没入型体験が文化体験を再構築

 AI技術によって、文化体験の範囲が無限に広がっている。バーチャルと現実の境界線が少しずつあいまいになり、「見る」から「没入する」への変革が起きており、AIが文化産業に新たな活力を注入している。

 文博会では、複数の出展者が展示した「AI+VRビッグスペース」が人気を集め、文化とテクノロジーのコラボレーションを体験するために、長蛇の列ができていた。VR映画体験ホールでは、VRヘッドセットを装着すると、唐の時代の楽舞俑の映像を360度全方向から楽しめるほか、千年以上の歴史を誇る文化財に「触れる」ことができた。展示エリア「塞上江南・神奇寧夏」では、VRゴーグルを装着すると、寧夏の観光地に一瞬で移動し、そこにある文化財を鑑賞したり、古代文明の秘密に迫ることができる。

 人民網のAI展示センター「夢幻霊境」のmini版も人気のスポットとなった。モジュール化設計された没入型空間では、北宋の政治家・文人である蘇軾が目の前に現れるAIパフォーマンスが披露された。そのモジュール化設計は48時間で解体したり、組み立てたりすることができ、地域住民向け文化施設のアップデートに、標準化されたサンプルを提供している。

大規模エコシステム:産業の原動力を引き出す

 文博会は、テクノロジーを披露する場としてだけでなく、産業エコシステムのインキュベーターにもなった。

 人民網が打ち出した「データスマートパートナーシップ計画」は、計算能力、データ、モデル、利用シーンといった資源を集約し、文化産業にワンストップ式のAIソリューションを提供することを目指している。その「主流バリューコーパス」には、3000万件以上のハイクオリティのコンテンツが収録されており、AI大規模言語モデルの価値観の整合性をバックアップしている。また、河北日報との協力によるメディアデータの権利確定システムアプリは、メディアデータを資産化して財務諸表に組み込むことができるようになっている。

 AIが文化に息を吹き込み、未来へとつなげる。AI大規模言語モデルから、スマートハードウェア、VRスペースから、エコシステム連携に至るまで、文博会が示したのは、テクノロジーによる文化の活性化だけではない。デジタル時代の中で、創造的な変革やイノベーションを通じて、中華文明がいかに世界と対話し、未来へ進んでいくのか。その生き生きとした姿が会場で映し出されていた。

(画像提供:人民網)

 
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