2025年10月20日-10月24日
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固体電池の新たな進展 新エネ車の航続距離が1000キロ超へ

2025年10月22日

 中国の研究者がこのほど、全固体金属リチウム電池の「ボトルネック」を克服し、固体電池の性能を向上させた。従来は100kgの電池で最長500kmの航続距離が限界だったが、今回の技術により1000kmを超える可能性が出てきた。中央テレビニュースアプリが伝えた。

 この成果を理解するには、なぜ固体電池がまだ広く実用化されていないのかを知る必要がある。電池は、リチウムイオンが正極と負極の間を行き来することで充放電を行う。リチウムイオンは言わば電子を運ぶ「配達員」であり、固体電解質はその「配達」を行う「高速道路」に当たる。現在よく使われる硫化物系固体電解質は、硬くてもろいセラミックのような性質で、金属リチウム電極は粘土のように柔らかい。この二つの材料を貼り合わせると界面が凹凸だらけになる。このような「走行困難な道」は、電池の充放電効率に大きく影響する。

 今回、中国の複数の研究チームがこの問題に挑み、3つの重要技術によって「陶板」と「粘土」をぴたりと密着させることに成功。固体電池の最大の課題である固体-固体界面の接触問題について解決の見通しが立った。

 第一の技術は、中国科学院物理研究所が複数機関の研究チームと共同で開発した「特殊な接着剤」であるヨウ素イオンだ。電池作動中、ヨウ素イオンは「交通警察」のように電場に沿って電極と電解質の界面に移動し、リチウムイオンを積極的に引き寄せる。わずかな隙間や穴があると、まるで流砂のようにそこへ流れ込み、自然に埋めてしまう。この「修復作業」によって電極と電解質が密着し、全固体電池実用化の最大のボトルネックを突破した。

 第二の技術は、中国科学院金属研究所による「柔軟構造化技術」だ。科学者たちはポリマー材料で電解質に「骨格」を持たせ、電池をまるで強化版ラップフィルムのように柔軟かつ丈夫にした。2万回の折り曲げやねじり試験でも破損せず、日常的な変形に強い。また、この柔軟な骨格には「化学的な小さな部品」も組み込み、リチウムイオンの移動速度を上げるもの、より多くのイオンを保持するものなどがあり、蓄電能力を86%向上させた。

 第三の技術は、清華大学による「フッ素強化技術」だ。研究チームは含フッ素ポリエーテル材料を用いて電解質を改良し、フッ素の高耐圧特性を活かして電極表面に「フッ化物保護層」を形成した。これにより高電圧による電解質の絶縁破壊を防ぎ、満充電状態での針刺し試験や120℃の高温試験でも爆発せず、安全性と航続距離の両立を確保できる。

 固体電池技術の進展は、新エネルギー車の「未来」を現実のものにしつつある。

 
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