1.1 ライフサイエンス分野の概要

(5) 国際研究活動の展開

1)国際プロジェクトへの参加

 中国政府が参加している国際科学技術プロジェクトのうち、ライフサイエンスに関するものは以下の通りである。

① ヒトゲノム計画(Human Genome Project:HGP)

 中国は1999年9月、「ヒトゲノム計画」に正式に加入し、1%のヒトゲノム(約3000万個の塩基)解読の責任を負った。

 フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、中国の6カ国は2003年4月、共同で「ヒトゲノム配列解読完了に関する6カ国首脳共同宣言」を発表し、生命活動に関係するとみられる28億6000万塩基対のうち、技術的に読み取りが不可能な1%を除く28億3000万塩基対を、予定よりも2年前倒しで、99.99%以上の精度で解読し終えた。

② 国際ヒト肝臓プロテオーム計画(Human Liver Proteome Project:HLPP)

 この計画は、2001年2月に創設されたヒトプロテオーム機構(Human Proteome Organisation:HUPO)の下で中国が主導して行うプロジェクトであり、2002年に北京プロテオーム研究センターの賀福初教授の指導のもとで設立された。現在、中国、アメリカ、カナダ、フランスなど18カ国と100以上の実験室が参加している。

③ 中医薬国際科学技術協力計画

 中国政府の提唱によって制定された「中医薬国際科学技術協力計画」は、国内外の漢方薬の資源を統合し、様々なルートを通じて漢方医薬での国際協力の機会を積極的に模索することを目的としている。

 同計画では、神経精神性疾病、心臓・脳血管疾病、腫瘍、エイズなどの重大な難病の漢方治療と予防・健康づくりの臨床研究、国際市場のニーズに適合した近代的な漢方薬製品を研究・開発するだけでなく、二国間・多国間の中国医薬臨床研究センターと共同実験室の設立などを優先的かつ重点的に実施することになっている。これによって、2020年までに漢方医薬の国際科学技術協力ネットワークがほぼ構築される。

 現在、世界の70以上の国・地域との間で漢方医薬の協力を含む政府間合意書が調印されている。このうちオーストラリアや南アフリカなどでは漢方医薬は法的に承認・保護されている。

④ 人間と生物圏計画(Man and the Biosphere Programme:MAB)

 国連教育科学文化機関(UNESCO)が1971年に設立した生態学の国際プロジェクトであり、生物圏に依存する資源の合理的利用と保全を促進し、人間と環境の関係を改善するために、自然科学および社会科学の基礎を発展させることを目的としている。

 現在、この計画には世界中の1万人以上の研究者が参加しており、中国の研究者もいくつかの研究プロジェクトに参加している。

⑤ 国際長期生態学研究ネットワーク(International Long-Term Ecological Research Network:ILTER)

 「国際長期生態学研究ネットワーク」は、国際研究ネットワークを構築するプロジェクトであり、その正式なメンバーとして1988年に中国生態系統研究ネットワーク(Chinese Ecosystem Research Network:CERN)が設立されている。

 CERNは現在、農地生態系試験ステーション16ヵ所、森林生態系試験ステーション11ヵ所、草地生態系試験ステーション3ヵ所、砂漠生態系試験ステーション3ヵ所、沼地生態系試験ステーション1ヵ所、湖泊生態系試験ステーション2ヵ所、海洋生態系試験ステーション3ヵ所、都市生態系ステーション1ヵ所に加えて、水、土壤、大気、生物、水域生態の5ヵ所の学科センターと1ヵ所の総合研究センターで構成されている。

⑥ ジャイアントパンダ遺伝子配列研究プロジェクト

 深圳華大遺伝子研究院は2008年10月11日、パンダの遺伝子配列が世界で初めて解明されたと発表した。パンダが竹を食べる理由や目の周りが黒くなっていることの解明に役立つと期待されている。

 パンダの遺伝子配列研究は2008年3月、中国や英国、米国、デンマーク、カナダの研究者が参加する国際プロジェクトとしてスタートしている。

2)二国間協力

 中国は、国際プロジェクトへの参加だけでなく、各国の政府および関係機関ともライフサイエンスに関する協定を結び、二国間での協力関係を構築している。具体的には、政府間(科学技術部などの政府部門)での協力協定と、中国科学院による協力、国家自然科学基金委員会による協力の3種類のパターンがある。

① 政府(部門)間でのライフサイエンス分野の国際協力

相手国

協定・プロジェクト

概要

日本

「日中科学技術協力協定」

2008年2月の日中科学技術協力委員会で、生物技術と生命科学を重点分野とすることを確認。

日本

食糧政策と農業構造などの共同研究

農業モデル地区での食糧政策と農業構造の変化および食糧供給・需要の変化など7つのテーマについて幅広い研究を展開する。

アメリカ

「中米科学技術協力協定」

2004年に今後の重点領域として農業科学と衛生健康分野を含めることで合意。

アメリカ

「農業科学技術協力協定」

水土保持・環境保護研究センター、草地牧畜業持続可能発展研究センター、農業品加工研究センター、小麦品質・病害研究センターの設立を決定。

英国

「中英科学技術協力協定」

2006年に今後の重点領域としてバイオ医薬と伝統医薬の近代化、伝染病を含めることで合意。

ドイツ

「中独科学技術協力協定」

2006年に今後の重点領域としてライフサイエンスを含めることで合意。

ドイツ

中独分子医学実験室を開設

中国医学科学院とドイツのマックス・デルブリュック分子医学研究センター(MDC)が共同で北京に開設。

ドイツ

中独計算生物学研究所を開設 

中国科学院とドイツのマックス・プランク協会が共同で上海に開設。

フランス

「中仏先進研究計画(PRA)協力協議」

協力分野は、①生物医学、②バイオ技術、③環境、④情報、⑤材料、⑥地学である。現在までに専門家委員会を10回以上開催しており、382のプロジェクトの実施を確定している。

フランス

「中仏予防・伝染病の制御に関する協力協議」

中国科学院武漢病毒研究所に中仏P4実験室と生物安全実験室を設置し人員の研修を行っている。

ロシア

「中露科学技術協力協定」

優先分野に生物、バイオ領域などが含まれる。

ロシア

山東煙台中露ハイテク産業化協力モデル基地の建設

重点分野は、①新材料、②電機一体化技術、③バイオ技術、④高効率農業である。

韓国

「中韓科学技術協力協定」

漢方薬、海洋、林業などのプロジェクトが含まれる。

中国科学院によるライフサイエンス分野での国際協力(一部)

学科

2003年

2004年

2005年

順位

合計

SCI

EI

ISTP

順位

合計

SCI

EI

ISTP

順位

合計

SCI

EI

ISTP

ライフサイエンス分野合計

 

9862

7184

1419

1259

 

12140

8903

1363

1874

 

16669

11349

3062

2258

ライフサイエンス分野が全体に占める割合(%)

 

12.2

18.9

5.3

8.1

 

12.7

19.6

4.1

10.8

 

10.9

18.0

5.1

7.7

生物学

5

4202

3165

853

184

6

5099

3441

1190

468

6

8039

4963

2627

449

予防医学と衛生学

29

276

111

12

153

32

156

135

 

21

32

321

300

 

21

基礎医学

13

1872

1209

501

162

17

1838

1528

84

226

18

2240

1698

166

376

薬学

22

700

691

 

9

22

821

779

 

42

27

886

864

 

22

臨床医学

12

2145

1485

 

660

12

3400

2521

 

879

12

3677

2393

 

1284

漢方医学

37

83

82

 

1

38

43

43

 

 

40

9

7

 

2

軍事医学と特種医学

35

86

78

 

8

37

55

55

 

 

33

253

253

 

 

農学

24

454

319

53

82

23

668

344

89

235

25

1048

678

269

101

畜産・獣医科学

38

44

44

 

 

36

60

57

 

3

35

196

193

 

3

国家自然科学基金委員会によるライフサイエンス分野での国際協力(一部)

相手国

提携機関

主要提携内容

主要交流方式

カナダ

医学研究評議会

医学

研修、訪問

フランス

農業研究所

農業科学

プロジェクト単位で決定

イギリス

バイオ技術・生物学研究委員会

バイオ技術とバイオ科学

プロジェクト単位で決定

カナダ

ケベック医学研究評議会

医学

研修、訪問

メキシコ

国際トウモロコシ小麦改良センター

農業科学

プロジェクト単位で決定

フィリピン

国際水稻研究所

農業科学

プロジェクト単位で決定

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