トップ >科学技術中国の科学技術分野別状況1.ライフサイエンス分野> 1.2 ライフサイエンス分野の現状および動向

1.2 ライフサイエンス分野の現状および動向

(2) 細胞機能(再生・発生、免疫・癌)

1)癌ゲノム治療

 中国の遺伝子治療の基礎研究と臨床試験は比較的に早い時期から行われている。1970年代に、中国人研究者の呉旻氏は遺伝性疾病の予防と治療に対し遺伝子治療を提示し、1985年には遺伝子治療の重要目標が腫瘍であることを指摘した。

 1991年には、中国初の遺伝子治療臨床試験となるB型血友病に対する遺伝子治療臨床試験が行われ、その後、以下に紹介するように、多くの重大疾病に対し遺伝子治療の基礎研究と臨床試験が行われてきた。こうした基礎研究と臨床試験は中国の遺伝子治療の全体レベルを上げる結果となった。

  • 上海市腫瘍研究所のターゲット遺伝子治療キャリア研究は国際特許を取得し、TK遺伝子による悪性神経膠腫(グリオーマ)の治療は、1996~2000年に上海長征病院、北京天壇病院でI期臨床試験が行われた。
  • 軍事医学科学院は悪性腫瘍、梗塞性血管病と病理性瘢痕遺伝子治療に関して基礎研究を行った。
  • 北京大学医学部はペプタイド抗原による肝臓癌の治療に対し基礎研究を行った。
  • 第2軍医大学のDC細胞ワクチンおよび腫瘍細胞と抗原提示細胞の融合ワクチンによる腫瘍遺伝子治療は効果が得られた。また、細胞因子による遺伝子治療に対しても多くの基礎研究が行われた。
  • 四川大学は、異種免疫遺伝子による担癌マウスの治療によって、良好な腫瘍抵抗性と血管再生作用を実証した。
  • 深圳市賽百諾遺伝子技術有限会社よって研究開発された組換えアデノウイルス-P53抗癌注射液による多種悪性腫瘍の治療はⅡ期臨床試験段階に入った。

 「863計画」、「973計画」、国家自然科学基金などの国家科学技術計画では、遺伝子治療の研究と臨床試験をサポートしており、十数年に及ぶ発展を経て遺伝子導入と遺伝子治療臨床試験が着実に進展した。具体的には、複数の国家遺伝子治療モデル基地が建設され、B型血友病、悪性神経膠腫(グリオーマ)、悪性腫瘍、梗塞性末梢血管疾病など6つの遺伝子治療プランが臨床試験の段階に入っている。このほか、20~30の自主知的財産権を有する遺伝子治療プランも臨床試験段階に入っている。

2)幹細胞移植の研究

 中国は、世界最大の人口を抱えるなかで幹細胞移植の治療が必要な疾病の発病率が他の国とほとんど変わらないことから、肝細胞移植の需要が非常に大きい。また、「1人っ子政策」を実施しているため、兄弟などからの同一あるいは類似した遺伝子の幹細胞が提供される可能性が他の国と比べると低いため、幹細胞移植の研究と応用が急がれている。

 中国の幹細胞研究と応用は一定の基盤が整えられた段階にある。最も研究・応用が進んでいるのは造血幹細胞であり、1960年代に骨髄移植の研究が始まり、70年代末から80年代初期にかけて臨床骨髄移植による血液病の治療が主要な都市で続々と行われた。90年代以降は骨髄移植以外にも末梢血と臍血幹細胞の移植が血液病と腫瘍の治療として普及してきている。

 2001年には北京で中国初の「生命バンク」(「北京協和臍帯血幹細胞貯蔵バンク」)が設立され、新生児の臍帯血を冷凍保存し、将来、血液病あるいは悪性腫瘍などの病気にかかった場合、保存されている本人の臍帯血を移植して治療することが可能となった。

 組織幹細胞に関しては、骨、軟骨、皮膚、腱などの再生で成果が得られている。第4軍医大学と艾尓膚会社は、既に国家食品薬品監督管理局から人工皮膚(組織工程皮膚)の臨床試験実施許可を取得したうえで臨床試験を行い、製品登録証明書を取得している。

 造血支持、心筋再生(心臓衰弱など)、血管再生などの前期研究も基本的に完了しており、一部の製品は既に中国薬品生物製品検定所から認証されている。

 組織器官代用品の研究は、人工血液が既に臨床試験実施許可を取得しているほか、人工股関節も生産許可を取得し、大量生産を開始している。

3)人工多能性幹細胞(iPS細胞)

 再生医療を大きく進歩させると期待されている人工多能性幹細胞(iPS細胞)の研究については国際的に競争が激しさを増しているが、中国でも中国科学院広州生物医薬・健康研究院や上海生命科学研究院の生物化学・細胞生物学研究所、北京生命科学研究所などを含む複数の研究機関がすでにiPS研究のプラットフォームを確立している。中国政府もiPS細胞研究を重視しており、国内の約20の研究室が政府の支援を受けて、基礎研究や動物を使った治療研究を行っている。

 そうしたなかで、北京大学などの研究グループはサルの皮膚からiPS細胞を作ることに世界で初めて成功した。将来、iPS細胞を治療で使用する際の安全性確認にはヒトに近いサルでの検証が必要と言われている。

 研究グループは、京都大学の山中伸弥教授らが使った4因子をアカゲザルの皮膚細胞に導入してiPS細胞を作った。2008年12月4日付の米専門誌「Cell Stem Cell」電子版に発表された。


さくらサイエンスプランウェブサイト

さくらサイエンスプランウェブサイト

 

中国関連ニュース 関連リンク

オリジナルコンテンツ

柯隆が読み解く

2014/2/18更新
「中国の歴史問題」

富坂聰が斬る!

2013/12/27更新
「中国賃金事情」

和中清の日中論壇

2014/2/3更新
「失望」に潜む米国のメッセージと日本の「積み木崩し」

田中修の中国経済分析

2014/2/7 新コーナー開設
「中央経済工作会議のポイント」

服部健治の追跡!中国動向

2014/2/27 新コーナー開設 「安倍総理の靖国神社参拝に想う(上)」

川島真の歴史と現在

気鋭の研究者が日中関係を歴史から説き起こす。幅広い視点から新しい時代の関係を探る。

科学技術トピック

New

2014/3/5更新
「赤外線カメラと簡牘資料の日中共同研究」
工藤 元男

取材リポート

New

日中関連、科学技術関連のシンポジウム・講演等を取材し、新鮮なリポートをお伝えします。

中国の法律事情

New

2014/3/7更新
「百度(バイドウ)の著作権侵害をめぐる攻防の結末」朱根全

日中交流の過去・現在・未来

日中交流のこれまでの歩みとこれから

日中の教育最前線

日中の教育現場の今をレポート

中国国家重点大学一覧

 

中国関連書籍紹介

New

2014/3/12 書評追加掲載

文化の交差点

New

2014/3/18更新
「日本における中国古代絵画」朱新林

中国実感

日本人が実感した中国をレポート

印象日本

中国が日本に滞在して感じたことをレポート

CRCC研究会

過去の講演資料、講演レポート

CRCC中国研究サロン

過去の講演資料、講演レポート

アクセス数:31043468