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1.2 ライフサイエンス分野の現状および動向

(4) 臨床医学、医療設備・器具

1)重大伝染病の予防と治療の研究

 近年、中国で関心が高まっている重大な伝染病として、SARS、結核、エイズ、ウイルス性肝炎、狂犬病、住血吸虫症、炭疽病などの疾病がある。このうち、中国の医学会で特に重点的に研究されているのは以下の4つの病気である。

① SARS

 SARSは2002年から2004年にかけて中国各地で猛威をふるい、経済損失と社会不安を招いたが、SARSの発生直後から多くの医学的研究が行われ、大きな成果を挙げている。

 軍事医学科学院微生物流行病研究所と中国科学院北京ゲノム研究所は2003年4月、63株のSARSのサンプルからSARSのゲノムを解読することに成功し、初期に流行したSARS-CoVウイルスのゲノムが動物のSARSウイルスのゲノムに酷似していることを解明した。

 また、ウイルスが流行の途中で変異したことにより、中期、後期の流行時にはウイルスの感染力が増加したことも判明した。さらに、SARSウイルス中のN蛋白の測定方法が確立し、発病から7日以内のウイルスを早期診断できるようになった。

 治療方面では、エイズ治療薬であるロピナビル(Lopinavir)、リトナビル(Ritonavir)、グルココルチコイド(Glucocorticoid)がSARS治療に有効であることが判明し、また漢方医学と西洋医学の結合による治療方法も研究された。北京での症例524例のうち、漢方医学と西洋医学の結合による治療が行われた322例は、西洋医学のみの治療を行った204例と比べ完治までの時間が早かったことが明らかになっている。

 ワクチンも開発され、試験的に60名に予防接種を行った。今のところ被験者のSARS感染および副作用などは見られず、現在、その持続性の研究が引き続き行われている。

 SARSのゲノム解読と治療、予防方法の確立は「2003年 国家10大科学技術進展ニュース」の一つに選ばれた。

② 結核

 中国は世界で二番目の結核発生国である。このため、結核の予防と治療の研究・応用が広く進められており、2005年には世界の結核抑制目標を達成し、「直接監視下短期治療」(Directly Observed Therapy Short-course:DOTS)カバー率100%、患者発見率70%、治癒率85%となった。化学療法による治療は治療期間が~9ヵ月にまで短縮され、新規塗抹陽性肺結核の臨床治癒率も85%以上まで高まっている。

③ エイズ

 中国では近年エイズ患者が急速に増加しており、エイズ治療研究のニーズが強まってきている。中国が独自に開発したエイズワクチンの臨床実験が2004年末からスタートしている。治療コストを抑制するため、エイズ治療薬の国産化が進められている。

 現在、西洋医学と漢方医学を結合したエイズ治療と予防の研究が行われているほか、エイズ防止に関する教育広報キャンペーンが積極的に展開されている。

④ ウイルス性肝炎

 中国は世界で最もウイルス性肝炎の発生が多い国である、世界保健機関(WHO)の統計によると、中国のB型肝炎感染者数は世界の感染者数の10%を占め、約1億3000万人に達する。現在、B型肝炎、C型肝炎、G型肝炎の研究が主に進められており、B型肝炎のワクチンに関する研究では世界でもトップクラスにある。

 復旦大学と北京生物製品研究所によって開発されたB型肝炎ワクチンは2002年に国家食品薬品監督管理局から臨床試験が許可された。Ⅰ期、Ⅱ期臨床試験では良好な結果が得られ、現在Ⅲ期臨床試験が行われている。また、第3軍医大学による「治療用B型肝炎ワクチン」もⅠ期臨床試験が終了し、Ⅱ期臨床試験が行われている。

 B型肝炎ワクチンは国家Ⅰ類新バイオ製品に指定されており、中国の医薬製品特許の中で最も多くの特許数を取得している。B型肝炎ワクチン開発は「2006年 国家10大科学技術進展ニュース」にも選ばれた。

2)慢性疾患の予防・治療の研究

 中国では急速な経済成長と生活の近代化に伴い、脳・心臓血管病や高血圧、腫瘍、糖尿病、自律神経症などの生活習慣病が増加している。近年、大規模な生活習慣病の全国調査が行われ、疾病の流行の傾向などが把握されるようになった。臨床医療においては、生活習慣病に対し「予防と治療の統合、予防第一」という方針が採用されている。

3)診断技術と医療設備

 近年の経済成長に伴い、診断用の医療設備と技術が向上し、中国の疾病の発見率は飛躍的に高まってきている。

① 撮影設備と技術

 CT設備は、64列CTが臨床実用段階に入っている。MRI設備は、旧来の1.0Tから徐々に1.5Tにシフトしてきており、3T設備も臨床実験段階に入っている。X線設備はデジタル化X線設備が導入されており、血管撮影装置も撮影フレーム速度が60フレーム/秒のものが導入されている。

② 超音波撮影装置と技術

 超音波撮影はSonoVue造影剤が導入されており、心臓血管と肝臓の臨床診断と治療に大きな発展をもたらしている。3D撮影装置は心臓、腹部、産婦人科器官の診断で応用されている。

4)治療技術と医療器具

 中国では1984年にPCI治療を開始して以来、短期間に広範囲に利用されるようになっている。近年は国産の薬物溶出性ステント(DES)が販売され、多くの患者がPCI治療を受けられるようになっている。

 しかし、地域的に偏在があり、2005年の統計によると、全国754ヵ所の病院で計9万5912件のPCI手術が行われたが、このうち約50%が北京、上海、山東、遼寧、陜西で実施されている。このため、内陸部への普及が課題になっている。

 先天性動脈管開存症の手術は比較的進展が速く、年間4000件程度の手術が行われている。腹部大動脈瘤(AAA)のゼニス応用例は年間200例ほどである。

 中国では、ペースメーカーの導入は、価格が非常に高いこともあり、導入されるのは人口100万人あたり年間10台程度しかない。また埋め込み型除細動器(ICD)も価格が高いため、同じく100万人あたり年間150台前後にとどまっている。両心室ペースメーカー応用例は年間150件程度である。

 中国での腹腔鏡の応用は、世界とほぼ同じペースで進展している。1990年代末に14万件の腹腔鏡手術が行われたと伝えられているほか、1ヵ所の病院で10年間に2万例以上の腹腔鏡手術を行ったとの報道(2002年)もある。


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