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1.2 ライフサイエンス分野の現状および動向

(5) 食品の持続的生産に関する研究開発(植物科学、農業関連)

 中国では人口の増加と生活の近代化に伴い食料需要が急速に拡大している。こうしたことから、遺伝子工学や発酵工学、酵素工学、分子育種などの生物技術を用いて、動植物の新品種育成、バイオ農薬・家畜薬・ワクチンの生産、生物肥料、生物農業用材料などの農業生物技術産業に関する研究開発が進められている。

1)遺伝子組換え動物

 中国科学院発育生物学研究所の研究チームは1990年、中国で初めてのクローン哺乳動物である胚胎細胞クローンウサギを作製することに成功した。その後、中国はヤギ、ウシ、マウス、ブタの5種類の胚胎細胞クローン動物を作製したが、体細胞クローン技術を応用した遺伝子組換えクローンヒツジ「ドリー」の誕生(1997年)を受け、中国における動物クローン研究はさらに加速した。

 中国科学院発育生物学研究所は1999年10月15日、揚州大学と協力し、中国で最初の体細胞クローン動物である体細胞クローンヤギを作製した。この成功は、その他の動物における研究の進展を加速させた(「中国クローン技術の展望」石 徳順・中国広西大学動物繁殖研究所副所長、科学技術振興機構「Science Portal China」、http://www.spc.jst.go.jp/trend/hottopics/report0402.html)。

 最近では、中国農業大学のプロジェクトチームが、ヒトラクトフェリンの遺伝子組換え乳牛の育種に成功した。「中国国際放送局日本語部」が新華社電として2008年10月19日に伝えたもので、新しいタイプの乳幼児用粉ミルクや健康食品、薬品などの開発への応用だけでなく、乳房炎を予防・治療することもできると期待されている。2年~3年で臨床試験を終了する予定という。

 また、2008年11月24日には、中国で初めての体細胞クローンヤギ「津英」が天津市牧畜獣医研究所で2頭のヤギを出産した。

 このほか中国の研究者は絶滅危惧動物のクローン分野においても積極的に研究を進めており、1998年からは異種クローン・ジャイアントパンダの可能性が研究されている。なお2008年3月には、ジャイアントパンダの遺伝子配列を研究する国際プロジェクトが発足している。

2)遺伝子組換え農作物

 中国では遺伝子組換え農作物の研究開発が進んでおり、遺伝子組換え抗害虫綿を独自に開発し、世界で2番目に自主知的財産権を有する国となった。

 これまでに中国では、以下のようなの遺伝子組換え植物の商品化生産が承認されている。

  • 華中農業大学の遺伝子組換え長持ちトマト
  • 北京大学のカルコンシンターゼ遺伝子組換えペチュニア、ウイルス抵抗性ピメント、ウイルス抵抗性トマト
  • 中国農業科学院の抗害虫綿
  • アメリカモンサント会社のボルガード綿

 このうち抗害虫綿に関しては、1980年代末から90年代初頭にかけて綿の害虫被害が深刻になったことから、1997年に中国政府が正式に抗害虫綿の商業化を認めた。中国の抗害虫綿の栽培面積は2001年には全綿栽培面積の30%以上を占め、2007年には25万ヘクタールに達した。

 中国政府はいくつかの遺伝子組換え植物の商品化生産を許可しているが、科学研究成果を大規模に応用できるような大型農業企業が存在していないこともあり、遺伝子組換え農作物の栽培面積が農作物総栽培面積に占める割合はまだ数パーセント程度に過ぎない。

3)交配種の研究

 中国では1960年代から雑交種の研究と応用を開始しており、現在、既にトウモロコシの90%以上が交配により開発された雑交種である。この数字は世界でもトップクラスにある。

 これまでに開発、応用されてきた交配種の農作物には、リシン含有量が通常品種より50%ほど高い飼料用トウモロコシ、含油量が2倍の高油トウモロコシ、各類加工食品と工業用の特殊トウモロコシ、人体の免疫力と抗癌能力を向上するαビタミンEと不飽和脂肪酸を多く含む油糧作物、抗癌作用のあるイチゴ、コレステロールを下げるマーガリン、抗癌蛋白を多く含む大豆、多産、高品質なスーパーハイブリッドライス、多産・高含油量の大豆、臭いのない大豆、油吸収量が少ないフライ用ジャガイモなどがある。

 その中でも、中国農業科学院が開発した多産・高含油量大豆の新品種「中黄35」は、2007年に新疆石河子新疆農垦科学院で実験的な栽培が実施されており、収穫高は1ムー(1/15ヘクタール)あたり371.8kgと、中国の大豆生産における最高記録を樹立した。この品種の含油量は23.45%に達しており、国家の食料油の生産に関する政策にも大きく貢献している。

 コメは中国で最も多く栽培されている食糧作物である。1950年代から60年代にかけて、水稲矮化育種を導入したことにより、もみの産量は20~30%増加した。さらに、1970年代に中国で開発された交配種によって、もみの生産量はさらに20%増加した。1976年から98年にかけて、もみの累計生産増加量は3.5億トン、社会利益は3500億元に達している。

 コメの生産量をさらに引き上げるため、中国は1996年から「中国スーパーライス種プロジェクト」を実施し、中国スーパーライス種モデル生産基地を複数箇所建設した。2003年に行われた検収では、モデル栽培地の1ムーあたりの平均生産量は800kg以上に達し、最高生産量は835.2kgを記録した。

4)植物組織の培養

 植物組織培養は、自然環境下で植物体の器官や組織、細胞を分離して、最適な培養環境条件の下で無菌培養し、植物体として完全な機能を持つ個体を再生させる技術を指す。この技術は主に、①植物微細繁殖②半数体細胞培養③ソマクローナル変異④遺伝資源保存――の4つの分野で利用されている。このうち、中国で最も成熟し広範に利用されているのが植物微細繁殖技術、すなわち試験管植物技術である。

 中国の試験管植物の応用は1970年代から始まり、80年代にはブドウ、イチゴ、リンゴ、バナナなどの商業化に成功している。90年代後半にはアロエとカトレアのブームが起こり、中国の試験管植物技術は飛躍的に進展した。2001年までに各規模の試験管植物の研究と生産機関は530社に達した。内訳は、農林大学が約150校、科学研究院・所などが約230ヵ所、民営あるいは合併企業が約150社となっている。

 うどんこ病、ジベレリン病、黄色矮化ウイルスなどに強い、細胞工学技術によって培養された小麦の新品種は栽培面積が73ヘクタールに達している。また、ジャガイモ、サトウキビ、花卉の生産に植物組織培養と快速繁殖解毒技術が重要な役割を果たしている。

5)バイオ農薬

 中国はバイオ農薬とグリーン薬品の発展を「中国21世紀議事日程」の目標に組み込んでいる。現在、BT遺伝子組換え微生物薬剤など3種類の農薬が既に商業化、あるいは商業化される予定になっている。中国のバイオ農薬の研究機関は30数ヵ所に及び、研究開発人員は約500人、生物農薬企業は約200社、登録品種は約50に達している。


種類

経緯

現状

動向

BT殺虫剤

1959年に導入、1965年に武漢で国内初の製造企業を設立

中国で登録されたBT殺虫剤粉剤は16種、液剤12種、製造企業は50数社、年間生産量約2万トン

既に自主知的財産権を有する遺伝子数十個のクローンを作成し、うち数個はパイロットプラント試験段階にある

農業用抗生物質

1950年代から研究が行われている

登録また製造している農薬は17種、製造企業は130数社、年間生産量は8万トン以上

新品種の選択、菌株の発酵レベルの向上を中心に研究が行われ、新薬剤の開発あるいは配合方法にも努力が傾注されている

植物性農薬

世界的にも早い時期から研究、応用が行われている

中国で正式あるいは臨時に登録され大量生産されている農薬には、サポニンニコチン可融性乳剤、ロテノン乳剤、マトリン、ニコチン硫酸塩、「8811」植物農薬などがある

 

ウイルス類農薬

開発、応用の見通しがあるウイルス株が十数株開発されている。このうち、ヘリオチス・アルミゲラの核多角体病ウイルスは既に登録され、100トン/年の薬剤生産ラインがある。ハスモンヨトウ核多核体病ウイルスとミクソウイルスなど9種類のウイルスも登録され、年間使用面積は6.6万ヘクタール以上に達している。

真菌類農薬

昆虫病原性糸状菌を主として、30年以上の開発の歴史がある

昆虫病原性糸状菌によりマツカレハとアワノメイガの退治は年間70万ヘクタール以上に達する
トリコデルマ・ビレンスの開発に成功。農薬登録済みで、野菜の灰色カビ病の退治に使用している。

サイトカラミン、紫赤きょう病菌、昆虫真菌、バーティシリウム・レカニなどが小規模試験およびパイロットプラント試験段階にある。

植物生長調節剤

主要品種のシベレリンは2期作のハイブリッドライスの分蘖と早熟に良好な作用を発揮し、需要量が急増しており、生産企業も既に40数社に達した。また、微生物による植物成長調節剤には細胞マイトジェンとアブシジン酸などがある。


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