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3.2 電子情報通信分野の現状および動向

(4) コンピューティング

1)ハードウェア

 中国科学院・計算技術研究所の李国傑・所長と清華大学高等教育センターの姚期智・教授は2008年11月11日、北京で開催された「情報とイノベーション学術フォーラム」で講演し、中国の計算機研究が世界に比べて2~3年、技術的には1.5世代程度遅れているとの認識を示した。

 両氏によると、チップ規模とソフトウェア分野で差が顕著であることに加えて、世界水準のオペレーティングシステム(OS)がなく、銀行や空港等の重要施設で使うアプリケーションソフトも海外製品に依存しているという。

 こうしたなかで、各国のIT技術水準を測る重要な指標と言われているスーパーコンピュータ分野で中国は大きな一歩を記した。2008年11月に公表されたスーパーコンピュータのトップ500ランキングで、上海スーパーコンピュータセンター(上海超級計算中心)に設置されている「曙光5000A」がトップ10入りを果たした。

 「曙光5000A」は、中国科学院計算技術研究所と中国の大手サーバーベンダーである曙光情報産業有限公司が共同で開発したもので、スーパーコンピュータの性能を測る代表的な数値であるLINPACKベンチマークで毎秒180兆6000億回の演算能力(180.6テラ・フロップス=TFLOPS)を持つ。

 同機は、「国家ハイテク研究開発発展計画」(「863計画」)における高性能コンピュータとコアソフトウェア重要特定プロジェクトの1つで、インターネット向けの高性能コンピュータであると同時に、情報サービス向けのスーパーサーバーなど、各種の目的に応じたサービスを提供することができる。

 「曙光」シリーズは1号からスタートし、その後、1000、2000、3000、4000を経て現在の5000Aに到達した。「曙光1000」が開発された時点では、中国の高性能コンピュータは世界の最先端水準から8年遅れていると見られていた。2004年6月には10TFLOPSを達成した「曙光4000A」を開発し、世界との差を4年程度に縮めた。

 曙光情報産業有限公司は2005年7月12日、スーパーコンピュータの浮動小数点演算(FPU)速度を100~200TFLOPSにまで引き上げ、2010年には1000TFLOPSを達成する第6世代スーパーコンピュータを完成させる計画を明らかにしていた。

 また、中国のスーパーコンピュータは、IBMやインテル、AMD等、国外メーカーのCPUチップを使用していたが、2007年末、中国国産のチップ「龍芯2F」を搭載した初めての1TFLOPS級のスーパーコンピュータが中国科学技術大学中国科学院計算技術研究所によって共同開発されている。

 国産チップを搭載したスーパーコンピュータの開発は、中国科学院の陳国良・院士を総括責任者として、世界トップレベルの大学をめざすことを目的として一部の大学を重点化する「985計画」に採択されて2007年5月にスタートした。

 なお、2008年10月7日付の新華社電は、曙光情報産業有限公司の歴軍・総裁が、中国が独自に開発した「龍芯4号」を用いて2010年に1000TFLOPSのスーパーコンピュータ「曙光6000」を完成させる方針を明らかにしたと報じている。

 歴軍・総裁は、今後の国産の「龍芯」がコンピュータの主役となり、技術上の障害はなくなるとの考えを示したうえで、「曙光6000」は高性能だけではなく、超高密度、超低価格、超省エネ、超汎用といった特徴を持つと述べた。

 中国高性能計算機標準工作委員会は2008年5月9日、IBMなどの海外の大手メーカーに対抗するため、中国高性能計算機産業連盟の発足を公表している。スーパーコンピュータの基準制定や産業化を推進するのが目的で、発足時点ではインテルやAMD、曙光、レノボといったメーカーのほか、中国科学院計算技術研究所、北京気象局などが参加している。

2)ソフトウェア

 工業・情報化部は2009年2月6日、国内ソフトウェア産業の2008年の業務収入が前年比29.8%の7572億9000万元に達したことを明らかにした。伸び率も、前年比で8.3ポイント上昇した。

 ソフトウェア産業の業務収入の内訳を見ると、ソフトウェア製品が対前年比で32%の増加を示し、業務収入全体の41.8%に相当する3165億8000万元となった。ソフトウェア技術サービスも前年に比べて39.9%の高い伸びを示し1455億元となり、業務収入全体の19.2%を占めた。このうち、アウトソーシングサービス収入は203億元に達した。

 また、システムインテグレーション(SI)収入は1616億4000万元となり、対前年比で25.2%増加した。このほか、組み込みシステムソフトウェア収入は1118億2000万元(対前年比17.8%)、IC設計収入217億4000万元(同16%増)などとなった。

 ソフトウェア産業の業務収入を地域別に見ると、北京市が最も多く約1573億元、以下、広東省1415億元、江蘇省1202億元などと続いている。

 中国ソフトウェア産業協会(中国軟件行業協会)によると、ソフトウェア産業の従業員は180万人に達しており、工業経済に占める割合も2007年の12%から13.6%に上昇している。同協会によると、巨大な国内市場の存在が、ソフトウェア産業の高成長を支える原動力になっている。

 中国政府は、ハード部分については量的にも質的にも国際競争力が上がってきたと判断しており、ソフトウェア産業の発展に力点を置くようになってきている。地方政府も競ってソフトウェア産業の発展に努力を払っている。

 こうしたなかで、黒龍江省におけるソフトウェア産業の発展を促進することを目的として、2008年6月16日、中国科学院ソフトウェア研究所ハルビン支部および国家基礎ソフトウェア・エンジニアリング研究センター・ハルビン分所が設立された。同省内での技術開発支援や成果の産業化、人材の育成等への貢献が期待されている。

 中国科学院ソフトウェア研究所はこれまでに国家重点実験室と国家エンジニアリング研究センターをそれぞれ3ヵ所ずつ設立しており、基礎的フロンティア研究、戦略的ハイテク研究、国防に関するハイテク研究の3大科学研究体系のさきがけとしている.

 国家基礎ソフトウェア・エンジニアリング研究センターは、中国における基本ソフト分野の革新的技術開発に取り組んでおり、独自の知的財産権による基本ソフト技術・製品を所有している。

 一方で、中国のソフトウェア産業の発展に対する海賊版の影響が懸念されている。2007年12月13日付「科学時報」によると、国家版権局はソフトウェアの海賊版が10ポイント増加すればソフトウェア産業における経済損失が70億元に達するとの試算結果を発表し、海賊版問題がソフトウェア産業成長の障害になっているとの考えを明らかにしている。

 なお、国家知識産権局が2008年4月に公表した「2007年度中国ソフトウェア海賊版比率調査」によると、ソフトウェアの海賊版比率は2006年の24%から20%に低下した。

表3.14 地域別に見たソフトウェア産業の主要指標(2008年)

地域名

企業数

ソフトウェア業務収入

ソフトウェア製品収入

システムインテグレーション収入

万元

増減(%)

万元

増減(%)

万元

増減(%)

合計

16194

75728773

29.8

31657855

32

16164477

25.2

北京市

4517

15729930

21.4

6518782

21.7

3990978

21.5

天津市

245

1348692

18.8

111111

75.9

52658

21.6

河北省

214

343769

30.3

194665

56.1

115624

16.4

山西省

76

49858

36.9

28946

27.3

8192

65.8

内蒙古

59

173404

30.3

106796

123.6

20073

54.4

遼寧省

550

3723198

59.1

1605241

20.2

844875

32.6

吉林省

188

1080000

16.1

320000

10.3

410000

17.1

黒龍江省

334

605248

17.5

199120

10.6

215632

2.7

上海市

1166

5700000

15.4

2410000

17.6

1210000

5.2

江蘇省

1457

12015384

30.8

2414536

31.9

1767431

29.4

浙江省

894

4222409

23.1

1020804

22.8

1219174

22.6

安徽省

149

364524

33.7

170413

38.2

141483

9.7

福建省

510

2602900

26.3

739500

31

843600

27.8

江西省

64

317516

70.7

92032

90.6

154240

63.9

山東省

561

3786611

23.7

1108995

37.2

1033148

31.6

河南省

191

772886

35

313265

34

343019

35.6

湖北省

208

919894

33.7

576838

63.3

178367

-12.3

湖南省

400

956198

33.6

511200

36.2

204902

31.1

広東省

2854

14148721

26.1

10126432

29.4

1237566

22.5

広西自治区

60

254896

22.8

128021

25.1

75646

17.7

海南省

22

15628.48

28.3

4004.88

4.9

2724.17

-22

四川省

420

3739885

56.1

2107550

66.3

956267

45.7

貴州省

70

170793

51.4

68098

40.4

92168

72.9

雲南省

62

174363

-11.6

36599

-1.1

122056

-12.5

重慶市

129

710201

13.5

289062

10

190283

4

陝西省

620

1562000

8.3

410400

122.1

580500

-13.6

甘粛省

48

99566

5

25217

4.8

59039

3.8

寧夏自治区

19

14477

16.7

3439

17.3

3590

29.8

新疆自治区

107

125822

32.2

16788

-0.2

91242

35.3

出典:工業・情報化部「2008年12月軟件産業主要経済指標完成情況」
(http://www.miit.gov.cn/n11293472/n11295057/n11298508/11957344.html)

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