トップ >科学技術中国の科学技術分野別状況6.社会基盤分野> 6.2 社会基盤分野の現状および動向

6.2 社会基盤分野の現状および動向

(2) 公共安全 (防災)

1)地震防災

 2008年5月12日に四川省で発生したマグニチュード8.0(中国地震局発表、米地質調査所はマグニチュード7.9)の地震(「四川省汶川大地震」)は、地震防災の重要性を改めて認識させる形になった。

 中国科技労働者退職者協会副会長で地震分会会長を務める何永年氏によると、中国では20世紀に入ってからの平均でマグニチュード5以上の地震が年20回、6以上が年4回、7以上が3年に2回の頻度で発生している。また、20世紀に関して言うと、中国で発生した各種自然災害による死者数のうち、地震によるものが50%以上を占め、全死傷被害の第1位になっている(「中国の地震防災の現状と展望」、科学技術振興機構「Science Portal China」、http://www.spc.jst.go.jp/trend/hottopics/r0901_he.html)。

 一方で、同氏によると、全国土の41%、都市部の50%、人口100万人以上の大・中規模都市の70%がレベル7以上の高震度危険エリア内に位置している。多くの都市が高震度危険地帯にあるため、地震防災対策は一層難しくなっている。

 こうしたことから中国政府は、一貫して地震防災のための取り組みを重視している。中国地震局は「地震観測予報システム」、「地震災害予防システム」、「緊急援助システム」という枠組みに従い、地震災害の予防と軽減に向けた取り組みを進めている。

 このうち地震観測予報システムについては、160ヵ所以上(何永年氏)の基本地震観測所で構成された国家地震観測所ネットワークが構築されており、24時間体制で観測が行われている。得られたデータは、北京の地震観測ネットワークセンターにリアルタイムで送られる。センターでは送られたデータを直ちに処理し、規定に基づいて関係部門に送達するほか、起こり得る地震の前兆現象について調査を行い、地震予知について研究している。表6.19に中国国内の地震観測所を示す。

表6.19 中国国内の地震観測所とネットワーク

地区

国家地震観測所

国家地震遠隔観測所

市・県の地震台

企業
観測所

国家級

省級

強震
観測点

地震ネット
ワーク数

支所

市・県級

目視
観測点

全国

139

276

681

82

1007

792

11659

107

北京

4

18

44

3

92

66

129

2

天津

4

4

34

1

28

 

 

 

河北

6

17

4

3

56

31

847

11

山西

5

20

27

5

58

78

1036

27

内蒙古

6

15

32

1

8

26

525

3

遼寧

6

11

37

5

71

28

672

3

吉林

5

5

10

1

5

13

500

 

黒龍江

6

5

64

4

20

4

47

1

上海

2

 

13

1

28

7

11

 

江蘇

8

7

50

9

59

56

235

4

浙江

3

2

5

4

27

28

4

 

安徽

3

10

9

1

9

14

357

1

福建

4

9

48

1

31

22

170

1

江西

2

4

 

1

8

6

243

 

山東

7

20

47

5

63

4

957

7

河南

2

12

 

1

8

12

676

4

湖北

4

5

4

5

54

28

157

 

湖南

2

5

1

1

10

17

183

2

広東

5

8

67

4

47

13

129

 

広西

3

5

19

5

53

1

513

3

海南

2

3

3

1

10

9

238

 

重慶

1

 

 

 

 

4

8

 

四川

7

14

69

7

84

89

476

12

貴州

 

 

 

 

 

 

 

 

雲南

10

20

23

1

32

92

1036

2

チベット

3

5

2

1

6

 

 

 

陝西

5

9

 

2

23

44

704

11

甘粛

9

20

24

3

27

42

814

7

青海

3

9

9

3

49

13

706

4

寧夏

4

3

6

1

7

14

227

 

新疆

8

11

30

2

34

31

59

2

出典:「2007中国科技統計年鑑」(国家統計局・科学技術部編、中国統計出版社)

 中国政府は、9万人近く(何永年氏)の死者を出した四川地震を受け、被害を受けた地域の再建計画と地震対策の強化を矢継ぎ早に打ち出している。

 まず再建計画については、国家発展改革委員会が関係部門と共同で2008年11月5日、土地利用や生態系の回復、農村建設、都市システム、公共サービス施設の建設、住宅建設など全部で7件の計画を公表した

 計画では、3年間に1兆元を投入し、地震による被害が深刻な四川省をはじめ、甘粛省、陝西省の地域再建を行うとともに、被災地域の基本的な生活や経済・社会の発展を被災前の水準以上にするとの目標が掲げられた。

また、科学技術部、国土資源部、中国地震局は2008年11月6日、「四川省汶川大地震」の断層のボーリング調査を開始した。地震の発生メカニズムを明らかにするのがねらいで、2ヵ所の断層に深さ1200mの先導井2本と深さ3000m級の主井2本を掘削し、観測機器を設置して将来の地震観測や予知、早期警戒のための基本的なデータを収集する。

 地震対策の最前線に立つ中国地震局の陰朝民・副局長は2008年7月19日、①地震予知理論研究の強化②地震監視網の構築・整備③国際協力の強化――という側面から中国における地震予知を継続的に進める考えを明らかにしている。

 省レベルでの地震防災対策もスタートしている。四川省科学技術庁は2008年6月6日、中国初となる耐震工学技術重点実験室と位置付けられる「抗震工程技術四川省重点実験室」を設立した。同省政府は、汶川大地震で家屋や橋梁、道路等の基盤施設に甚大な被害が出たのは西部山岳地帯における耐震技術の研究不足が一因と判断している。

 同実験室は、西南交通大学に設置され、土木工学や交通運輸工学、地質工学、測量・製図工学等、地震に関係する学科をベースとして、関連分野の研究者が研究活動を行う。耐震建築物の土木構造を重点的に研究し、震災復興と今後の再建への貢献が期待されている。

2)気象観測・災害早期警戒、衛星利用

 中国気象局は2008年5月8日、これまで気象部門で公共気象サービスを提供する組織がなかった現状を踏まえ、公共気象サービスセンターを設立した。公共気象サービスは国民の生命・財産の安全や経済社会の持続可能な発展と密接に関係しており、中国がめざす「小康社会」(いくらかゆとりのある社会)の実現に向けて重要な役割を果たすと位置付けられている。

 なお中国気象局は2008年1月30日、国が19億6000万元、各気象部が10億元を拠出し気象観測・災害警報体制構築に着手する考えを明らかにしている。具体的には、観測ステーションの増設、ハイテクを用いた予防・警報能力の向上、警報のスピードアップによる公共サービスシステムの強化、ソフト・ハード整備が柱になっている。実施期間は3~5年が予定されている。

 中国は、気象観測衛星の拡充も積極的に進めている。中国の気象観測衛星は「風雲」という名称がつけられており、2008年には、全世界と全天候をカバーする多スペクトル・3次元の遠隔探査能力を持つ「風雲3号A」が5月27日に、また気象や海洋、水文等の観測データの収集等に使われる「風雲2号06星」が同12月23日に打ち上げられた。

 中国気象局は、2020年までに合計22機の気象観測衛星を打ち上げ、アジア全体をカバーする衛星気象観測網を整備する意向を明らかにしている。投入が予定されている気象衛星は、「風雲2号」タイプの静止軌道衛星が4機、「風雲3号」タイプの太陽同期軌道の中高度・極軌道衛星が12機、「風雲4号」タイプの次世代静止軌道衛星が6機となっている。

 中国は、環境や災害の監視・予報用としても積極的に衛星を利用する方針を示している。2008年には、災害や生態系の破壊、環境汚染の進行などを観測し、災害の発生件数の減少や発生後の対応などに利用することを目的とした「環境1号A、B」衛星が9月6日に、また気象観測から自然災害、環境変化などを監視する小型実験衛星「創新1号02星」が11月5日に打ち上げられた。

 中国は、交通輸送や気象、石油、海洋、森林防火、災害予報、通信、公安警備などへの利用を目的とした「北斗」衛星ナビゲーション・システムの構築も積極的に進めている。同システムは、米国のGPS、ロシアのGNSS、欧州のガリレオ計画に対抗して進められている中国独自の衛星測位システムである。

 システム自体の構築は2000年にスタートし、これまでに5機の「北斗」衛星が打ち上げられている。2009年には12機の「北斗」衛星を打ち上げ、まずシステムを稼働させてから、最終的には30機以上でシステムを完成させる予定になっている。

このほか国家測絵(測量・製図)局も2009年1月13日に発表した今後の戦略方針の中で、中国版「グーグルアース」や「グーグルマップ」の構築に着手する考えを明らかにしている。


さくらサイエンスプランウェブサイト

さくらサイエンスプランウェブサイト

 

中国関連ニュース 関連リンク

オリジナルコンテンツ

柯隆が読み解く

2014/2/18更新
「中国の歴史問題」

富坂聰が斬る!

2013/12/27更新
「中国賃金事情」

和中清の日中論壇

2014/2/3更新
「失望」に潜む米国のメッセージと日本の「積み木崩し」

田中修の中国経済分析

2014/2/7 新コーナー開設
「中央経済工作会議のポイント」

服部健治の追跡!中国動向

2014/2/27 新コーナー開設 「安倍総理の靖国神社参拝に想う(上)」

川島真の歴史と現在

気鋭の研究者が日中関係を歴史から説き起こす。幅広い視点から新しい時代の関係を探る。

科学技術トピック

New

2014/3/5更新
「赤外線カメラと簡牘資料の日中共同研究」
工藤 元男

取材リポート

New

日中関連、科学技術関連のシンポジウム・講演等を取材し、新鮮なリポートをお伝えします。

中国の法律事情

New

2014/3/7更新
「百度(バイドウ)の著作権侵害をめぐる攻防の結末」朱根全

日中交流の過去・現在・未来

日中交流のこれまでの歩みとこれから

日中の教育最前線

日中の教育現場の今をレポート

中国国家重点大学一覧

 

中国関連書籍紹介

New

2014/3/12 書評追加掲載

文化の交差点

New

2014/3/18更新
「日本における中国古代絵画」朱新林

中国実感

日本人が実感した中国をレポート

印象日本

中国が日本に滞在して感じたことをレポート

CRCC研究会

過去の講演資料、講演レポート

CRCC中国研究サロン

過去の講演資料、講演レポート

アクセス数:31043468