7.2.2 原子力開発分野の動向

(2)原子力発電目標の上方修正

 「原子力発電中長期発展規画」の正式な発表は2007年11月2日であったが、内容そのものは2006年3月22日に国務院によって原則承認されていた。このため、同規画で公表されたデータには、2006年4月以降の動きは取り込まれていない。

 中国ではこれまで、沿海部が経済発展の中心であり、揚子江デルタだけで中国の国内総生産(GDP)の20%を、輸出入の3分の1を占めていた。しかし、そうした経済発展地域が、石炭や電力の不足に加えて環境の悪化という問題を抱えるようになった。

 さらに、土地価格も高騰した。2007年5月のデータによると、上海の主要工業地帯では土地の平均リース価格が2006年末から10%以上も上昇した。一方で、旺盛な土地需要に変化がなく、製造業の内陸部進出が顕著になってきた。

 こうしたなかで、内陸部での原子力発電所建設計画が大きく動き出した。石炭への過剰依存という、とくに内陸部での電力供給構造の脆弱さが2008年1月中旬から南西部を襲った大雪・寒波によって露呈したことも、原子力発電に対する期待を強めている。

図7.1 中国の原子力発電所立地点

図7.1 中国の原子力発電所立地点

地図出典:国家測絵局(http://www.sbsm.gov.cn/article/zxbs/dtfw/

出典:テピア総合研究所作成(2008年11月末現在)

 2008年11月現在、湖北や江西、湖南、吉林、安徽、河南、四川、重慶、甘粛といった省・直轄市で原子力発電所の建設計画が進められている。こうした計画の進捗状況にはかなりのバラツキがみられるものの、テピア総合研究所(日本テピア)の最新の集計によると、採用する炉型と出力規模が決まっている発電所に限定しても、16の省・自治区・直轄市で155基・約1億6000万kWの原子力発電所が計画されている。

 中国政府内では、「原子力発電中長期発展規画」で掲げられた目標と、実際の計画の進捗とのギャップが大きいとの判断から、同規画の目標を上方修正する動きが具体化してきた。

 2008年の省庁再編によって設立された国家エネルギー局の初代局長に就任した張国宝・国家発展改革委員会副主任は、中国の原子力発電設備容量が2020年までに総発電設備容量の5%以上に達するとの見通しを明らかにした(「中国新聞網」、2008年8月5日)。中国電力企業連合会は、2020年の総発電設備容量が15億kWを超すと予測していることから、単純に計算しても7500万kWの原子力発電所が稼働することが見込まれる。

 また、国家エネルギー局の黄鵬・省エネ科技装備司副司長は2008年11月3日、「原子力発電中長期発展規画」を改訂し、2020年の原子力発電設備容量を当初に掲げた4000万kWから7000万kW超に引き上げる意向を表明した。

 さらに中国政府は、国際的な金融危機に対応するための内需拡大・経済安定促進策の一環として原子力発電開発を加速する方針を打ち出した。温家宝首相が2008年11月12日に開いた国務院常務会議では、広東省の陽江と浙江省の方家山(秦山Ⅰ期拡張)両原子力発電プロジェクトが承認された。両プロジェクトの投資額は955億元(約1兆4325億円)と推定されている。

 また、国家発展改革委員会は同日、両原子力発電所に加えて、福建省の福清原子力発電所が2008年内に着工する見通しであることを明らかにした。3ヵ所の原子力発電所とも、100万kW級のPWRが採用されることになっており、陽江に6基、方家山と福清にそれぞれ2基ずつ建設される。

なお中国科学院の路甬祥院長は2008年3月23日、原子力発電と再生可能エネルギーによって2050年までに全電力の半分を賄う必要があるとした独自の長期戦略ロードマップを公表した。

 路院長は、2050年までに原子力発電によって全電力の25~30%を、また再生可能エネルギーによって20~25%を供給し、化石燃料による電力供給を半分にまで減らすという具体的な目標を掲げた。同院長は、こうした目標を達成することは不可能ではないとの見解を示している。

表7.7 中国で運転中、建設中、計画中の原子力発電所
  基数 出力(万kW)
運転中 11 906.8
建設中 12 1234
計画中 155 1億6042
合計 178 1億8182.8
出典:テピア総合研究所(日本テピア)が集計

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