7.2.2 原子力開発分野の動向

(3)「原子力産業『第11次5ヵ年』発展規画」

1)中国原子力産業の課題

 国防科学技術工業委員会(当時)が2006年8月に公表した「原子力産業『第11次5ヵ年』発展規画」は、中国の原子力産業が抱える課題を以下のように分析している。

  • 原子力発電規模が小さく長期にわたって仕事量が不足してきた
  • 原子力技術と原子力産業を発展させる牽引力が弱い
  • 技術水準が低く、工業力が弱い
  • 100万kWの先進的軽水炉の自主設計、設備製造能力がまだ完全に備わっていない

 このほか同規画では、原子力分野が長い間、閉鎖的な状況に置かれ、しかも計画経済体制化で培われてきた考え方がまだ根本的に変わっていないため、国家資金や政府援助に対する依存が非常に強く、管理体制と運営方法の改革が遅れているという認識も示されている。

2)原子力技術の応用拡大・産業化プロセスの加速

 同規画では、原子力産業の発展には産業としての裾野を拡大することが不可欠との考えから、中堅企業の育成に力点を置ている。

 また、エンジニアリング面において系統的な総合能力に秀でた産業化基地を建設し、独自の知的財産権を持つ技術・製品を開発し、大きな需要と技術基盤を有する原子力技術製品の産業化を加速するとの方針を打ち出した。

 具体的なプロジェクトとして、大出力照射加速器、医療用小型サイクロトロンを大量に生産できる生産基地の整備、放射線プロセス技術の応用推進モデルセンターの建設、都市部での照射施設の建設などがあげられている。

 同規画には、原子力を用いた計測やイメージング技術の研究強化のほか、税関や公共安全などの分野で利用される放射線計測装置と検査システムの開発が盛り込まれている。また、外国の先進的な技術を消化・吸収し、新型の放射線診断・治療装置と新しい放射性医薬品を研究開発し、早期診断と癌治療に利用するという方針も示された。

 このほか、環境保護分野における放射線技術応用の可能性を探り、放射線を用いた脱硫、脱窒素技術、放射線を利用した都市飲用水の浄化技術の開発が行われる。

3)基礎強化と科学技術の革新能力の向上

① 原子力技術研究基地の建設

 「原子力産業『第11次5ヵ年』発展規画」は、基礎研究に関して、先進的な機能を備えた大型研究施設を中国原子能科学研究院に建設・整備し、一体的な基礎科学研究力の充実をはかるとしている。

 また、現在の「HI-13」タンデム加速器の末端に超伝導直線加速器、およびそれと組み合わせる物理装置などを新たに建設し、耐放射線性の強化や核データの測定、核物理基礎研究のニーズに応えるとの方向性を打ち出した。

② 原子動力研究試験基地の建設

 同規画は、PWR技術に関して、設備や機能、技術的な面から見ても先進的な大型原子動力研究試験施設を中国核動力研究設計院に建設し、原子動力研究の基礎的な能力を高めるとの考えを明らかにした。

 具体的には、ソフト、ハードの両面から現有施設の改良を行い、100万kW級原子力発電所の「原子力級機器」(Nuclear Grade Equipments)の検定能力の整備がはかられる。

 同規画によると、中国政府は核燃料サイクルの中核技術や原子力安全、放射線防護などを中心とした研究試験施設も整備する。

 この中には、深地層ウラン資源探査や採鉱、製錬技術研究のほか、ウラン濃縮研究、核燃料部品の生産技術および主要設備の研究製造、再処理工程研究、高レベル放射性廃棄物の深地層処分地質条件の研究、放射線安全・防護総合技術研究などの試験システム・装置が含まれている。

④ 原子力基礎科学研究の強化

 原子力基礎科学を強化し、国際的な先進水準に追いつくことも同規画に盛り込まれた重要なテーマとなっている。

 具体的には、原子物理の応用研究、大強度加速器・パルス加速器の技術研究、新しい測定技術研究、放射化学・分析化学研究などを実施し、技術の応用に必要な理論的な根拠と技術手段を提供することを視野に入れている。

 原子力基準や計量、データ、成果管理と知的財産権、品質と信頼性、非破壊検査と理化学的な検査技術などの基礎研究を強化し体系化するとの目標も示されている。

⑤ 核融合

 同規画によると、核融合炉の研究については、トカマク型核融合試験2号装置「HL-2A」を用いて、高パラメータ領域での模擬炉心プラズマ実験、第一壁高温負荷能力実験を行うとともに、慣性核融合の課題技術について引き続き研究が行われる。

 また、中国が参加している国際熱核融合実験炉「ITER」については、中国が担当しているトリチウム生産ブランケット、遮蔽ブランケットの工事設計および関連技術の研究開発が実施される。

 なお、2008年10月10日にはITER計画の具体的作業を担当する中国国際核融合計画執行センターの設立式典が北京で開催された。

4)「加圧水型(PWR)原子力発電所の基準体系構築に関する『第11次5ヵ年』規画」

 国防科学技術工業委員会(当時)は2007年9月、多数の国の原子力技術が採用されており原子力発電基準・規格が統一されていないため中国の国情に見合ったものになっていないとの判断から、「加圧水型(PWR)原子力発電所の基準体系構築に関する『第11次5ヵ年』規画」を公表し、原子力発電基準・規格体系構築の全体設計作業を完了する方針を示した。

 同規画では、2015年までに中国の国情に適合したPWRを採用した原子力発電所の基準・規格体系を基本的に確立し、中国が原子力発電の自主的発展を実現するとの目標が掲げられた。

 「第11次5ヵ年」期については、原子力発電基準・規格体系構築の全体設計作業を完了するとともに、さらに完璧で詳細な原子力発電基準・規格の構築プランおよび路線を確定し、基準・規格体系構築の基礎を定めるとの目標が定められた。

 また、原子力発電所の建設と運転分野での要求を中心として、専門基準・規格を制定し、2010年までに以下の目標を実現するとした。

  •  -通用および基礎基準関係では、原子力発電プロジェクトの経済基準に加えて、放射線防護と環境安全基準の完備と一体化を実現する
  •  -原子力発電所の前期作業に関する基準に関しては、相互に関連した基準の完備と一体化を実現する
  •  -デジタル化技術に関して必要となる計器や制御、電力の基準体系を確立するとともに、建築物設計基準を作成する
  •  -設備基準に関しては、原子力発電国産化に必要な材料基準・規格体系および原子力発電所の機器、計器、制御、電力設備の設計、製造、検証、評価基準体系を確立する
  •  -建設、試験・調整、運転等に関しては、差し迫った重要基準の制定を完了する

 国家エネルギー局の省エネ・科技装備司の黄鵬・副司長は2008年11月3日、成都で開催された第1回中米原子力設備評価検討会において、今後5~8年をかけて中国としての原子力発電基準化体系を構築するとしたうえで、原子力発電基準化体系構築の基礎作りのため、関係部門や企業、専門家から意見を募っていることを明らかにした。


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