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9.1 フロンティアサイエンス分野の概要

(5) 国際研究活動の展開

 中国はフロンティア技術分野の国際交流・協力を非常に重視しており、各種政策の中でも国際協力を積極的に行う方針を明らかにしている。

1)数学

 中国の北京で2003年8月、第24回国際数学者会議が開催された。中国国内の1000人に加えて、約100の国・地域から2000人の数学者が参加した。同会議以降、中国では数学関係の国際会議が頻繁に開催されるようになった。2008年だけでも下記のような国際会議が開催された。

  • 2008年3月:「第3回東亜数学史研究国際学術シンポジウム」(天津)
  • 2008年6月:「International Conference:“Nonlinear Waves–Theory and Applications”」(北京)
  • 2008年7月:「幾何解析国際会議」(武漢)
  • 2008年11月:「第2回国際数値・代数・科学計算国際会議」(南京)

 数学分野における大学間の交流も盛んに行われている。例えば、ドイツの数学者Christian Reidys氏は2007年6月、南開大学から組合せ数学研究センターの副主任を任命された。任期は5年間で、同氏は高水準の計算生物学チームを創設する任務を負っている。

 数学関係の協会間の交流も多く行われている。上海数学会は米国数学会と2008年12月、上海復旦大学で最初の連合学術会議を行った。この会議は、両国の数学者にとって直接の交流機会となった。会議のテーマには数学の全ての分野が含まれていた。

2)物理学

 中国の研究者は欧州合同原子核研究機関(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器のプロジェクトに参加した。中国の合同チームはATLAS探測器の研究・製造、データ分析に加えて、CMS探測器と磁石部品の建設や分析ソフトと物理研究の準備作業にも参加した。中国の研究チームには、中国科学院高エネルギー物理研究所、北京大学清華大学、中国原子能科学研究院、中国科学技術大学南京大学山東大学などの研究者が含まれていた。

 高エネルギー物理分野での米国との研究交流・協力は長い歴史をもち、1970年代末には「中米高エネルギー物理協力執行協議」が締結された。これ以降、北京電子・陽電子衝突型加速器(BEPC)と北京電子・陽電子衝突スペクトロメータ(BES)、北京同時性輻射施設(シンクロトロン放射光施設)の建設に関して、様々な形、様々な分野で、協力、交流が行われてきた。

 また、中米間の新しい協力として、大亜湾でのニュートリノ実験における協力が世界から注目されている。この実験は、中国科学院によって2006年に承認され、5000万元の実験資金を受け、2011年からデータを収集する予定になっている。

 この実験は、中国科学技術部と米エネルギー省(DOE)および全米科学財団(NSF)の援助を受けている。香港、台湾、チェコ、ロシアからの資金援助も受けている。このプロジェクトは2008年10月に建設を開始し、2010年に竣工する予定になっている。

 2008年2月24日付「科技日報」によると、中国科学技術大学大微尺度物質科学国家実験室では、同大学の潘建偉教授らが参加する国際研究チームが世界で初めて、光子キュービット-原子キュービット間の量子状態における暗号伝送実験に成功した。

 潘建偉教授らの研究グループは、国家自然科学基金、「973計画」、中国科学院知識革新事業の支援を受け、ドイツ、オーストラリアなどの研究者と協力して、4年間にわたってこの問題と取り組んできた。

 中国科学院の管轄下にある中国科学技術大学の量子情報重点実験室とスウェーデン王立工科大学マイクロ電子・応用物理学科量子電子・量子工学グループの共同研究チームは、世界で初めて、「単一光子源によるデコイ法(decoy-pulse method)を用いた量子暗号実験」に成功した。2008年3月20日付「科学時報」が伝えた。

 両国の研究チームは、レーザーによって周期性非線形結晶体を励起させる方法を用いて、波長の異なる2つの関連光子対を同時に形成させることにより、暗号鍵の発生率と安全伝送距離を大幅に向上させることに成功した。

 また中国科学院は2008年3月20日、中国、日本、米国の研究者が共同で、中国が独自に開発した角度分解型光電子分光装置を用いて、世界初の真空紫外線レーザーによる電子カップリング状態の観察に成功したと発表した。中国からは科学院傘下の物理研究所など4つの研究グループが、また米国からブルックヘブン国立研究所のGenda Gu博士、日本から東京工業大学の笹川崇男博士が参加した。

 2008年6月には、Kavli基金会の援助を受け、中国科学院Kavli理論物理研究所(KITPC)が北京中関村に設立された。同研究所の研究プロジェクトは、量子凝集態物理、超弦理論、宇宙学である。米国、欧州、韓国、日本の20名の理論物理学者は2008年9月~11月、KITPCで「標準模型を超える物理」プロジェクトを実施した。

 物理学のフロンティア問題についても多くの国際会議が中国国内で開催されている。北京で2006年6月、国際弦理論大会が開催された。また、浙江大学物理学部と米ジョージア大学シミュレーション物理センターの共催で2006年11月、第3回杭州計算物理国際会議が浙江大学で開催された。

 武漢では2008年7月、中国科学院国家自然科学基金委員会の主催により第3回冷原子物理国際学術シンポジウムが開催された。また同月、鄭州大学中国科学院などが共催した第5回凝集物理フロンティア国際シンポジウムが鄭州大学で行われた。なお、2011年8月には中国生物物理学会の主催により第17回国際生物物理学会議が北京で開かれることになっている。

3)天文学

 天文学における国際交流に関しては、天球座標系の研究においてイタリア、米国、中国の3ヵ国が合同でまとめたGSC2.4は、中国天球座標系の創設と研究の基礎となった。また中国は、電波源位置座標系ICRF(International Celestial Reference Frame)-2の多国間研究では、流層モデルと短期波動改善プロジェクトに参加している。

 このほか中国は、国際地球自転サービス計画(IERS)、国際GPSサービス計画(IGS)、国際レーザー測距事業(ILRS)、欧州VLBI(Very Long Baseline Interferometry:超長基線電波干渉法)観測網(EVN)、米国NASAの固体地球・自然災害研究計画(SENH)、アジア太平洋宇宙測地観測(APSG)などの国際的な地球観測計画に参加している。

 なお、国際宇宙ステーションのAMS(Alpha Magnetic Spectrometer)プロジェクト、米国の南極周回気球プロジェクトで粒子収集装置「ATIC」(Advanced Thin Ionization Calorimeter)の開発と観測データの分析などを行った。

 中国の各地域に設置された天文望遠鏡は、EVNとIVS(国際VLBI事業)に参加している。中国とフランスが提携し、製造する空間天文衛星「空間変源モニター(SVOM)」は2012年に打ち上げられる予定になっている。

 中国科学院は、天文学分野における国際協力で以下のような成果が得られたと発表している。

  • ⅰ.中国科学院国家天文台とドイツのマックス・プランク天文学研究所が共同で銀河系質量の解析結果を発表(2008年5月29日):スローン・デジタルスカイ・サーベイ(SDSS)-Ⅱのデータを用いて、銀河系の質量がこれまで推定されていた太陽の約2兆倍よりも小さい約1兆倍であると算定した。
  • ⅱ.中国科学院国家天文台と日本の国立天文台が協力し、HD173416赤色巨星の周囲で、質量が木星質量の2.7個分に相当する太陽系外惑星の発見を発表(2009年1月6日):中国の天文学者が興隆観測所の2.16m天体望遠鏡を用いて発見した太陽系外惑星の第一号であり、観測は日本の国立天文台岡山天体物理観測所の光学望遠鏡(1.88m)も用いて、両国同時にHD173416赤色巨星を数回にわたって追跡観測を行った。
  • ⅲ.欧州宇宙機関の「ハーシェル宇宙望遠鏡」開発に関する英国との協力において、目標を達成と発表(2009年1月15日):中国科学院とウェールズ大学カーディフ校、ラザフォード・アップルトン研究所によって実施された共同プロジェクトで、ハーシェル宇宙望遠鏡の計画研究段階に関する評価が行われた。

 なお中国は、天文学関係の国際会議を積極的に開催しており、中国天文学会と国際天文学連合(IAU)は2012年に北京で第28回IAU総会を開催する合意書に正式に署名している。

4)海洋

 中国政府は海洋科学技術分野で掲げた目標の早期実現をめざし、海洋科学技術の自主革新能力を強化する一方で、国際的な協力を広範囲に展開する必要があるとの見解を示している。

 中国政府は、国際的な海洋フロンティア科学研究分野の研究に参加することによって、中国の国際海洋研究分野における影響力を高めることができるだけでなく、多くの優秀な海洋科学者を育成することができると見ている。

 中国は、米国やフランス、ドイツ、ロシア、韓国、タイ、日本との間で、政府部門間の海洋科学技術協力協議あるいは覚書を通じて、以下のような研究協力プロジェクトを実施している。

  • 米国:有害赤潮物質の分子学的特性とリモートセンシングの赤潮予報における応用に関する研究
  • 米国:渤海海岸地区総合管理および応急システム(ICMERS)プロジェクトの実行可能性研究
  • フランス:海洋生態健康監視・測定と評価
  • ドイツ:近海海岸地区海洋生態監視・測量技術と評価方法に関する研究
  • ロシア:海洋生態系統の安全評価体系および業務的応用
  • ロシア:極東海域生物体、海底沈積物、海水の主要汚染物に関する分析・研究
  • 韓国:黄海汚染軽減対策研究
  • 韓国:黄海沿岸地区TBT監視・測定とTBT災害防止研究
  • タイ:季節風突発と社会影響に関する研究
  • 日本:ルソン海峡流量とその変異の協力研究

 中国は、こうした二国間での共同研究に加えて、積極的に国際会議に参加するとともに、国際会議を主催している。2008年に中国で開催された海洋関係の国際会議を以下に紹介する。

  • 「海底観測国際シンポジウム」(2008年5月、同済大学
  • 「アジア―太平洋海岸ゾーン国際学術シンポジウム」(2008年10月、青島)
  • 「2008国際深海技術シンポジウム(Deepwater Offshore Technology Symposium 2008, DTec 2008)」(2008年11月、上海)
  • 「第9回環太平洋国際リモートセンシング会議(PORSEC2008)」(2008年12月、広州市)
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