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9.2 フロンティアサイエンス分野の現状および動向

(3) 天文学

 現在、中国の天文学は歴史的な転換点に立っている。中国の天文学分野における研究成果の大部分は、外国の一流の観測設備や理論研究、数値シミュレーション、データなどを用いて得られたもので、自主的な天文測量機器で得られたものが少ない。こうした背景には、中国では長い間、先進的な天文測量機器の研究開発と重要天文設備に対する投資が少なかったという事情がある。

 こうしたなかで、中国科学技術大学が国立天文台、南京天文光学技術院と共同で始めた重要な国家科学プロジェクトである広視野多目的ファイバ分光望遠鏡(LAMOST)は、中国の天文学研究に重要な貢献をすると期待されている。

 口径4m、視野角5度、4000のファイバという性能を持ったLAMOSTは、世界で最も強力な光学スペクトル観測望遠鏡である。LAMOSTの科学的目標は、銀河系外天文学,銀河系の構造と進化、および多波長帯の同定である。LAMOSTが2008年に完成したことによって、中国の天文学者は初めて国際的な水準の先進的な大型天文観測装置を持つことになった。

 なお科学技術部は2009年2月11日、2008年度の「中国基礎研究10大ニュース」を公表し、このなかでLAMOSTの完成をあげた。

 また、2008年1月12日に南極大陸最高点の「ドームA」に設置された「南極小型望遠鏡」(CSTAR)が同3月20日から観測を開始した。8月2日の故障によって観測を停止するまで135日間にわたって連続観測を実施した。CSTARは、中国科学院南京天文光学技術研究所、柴金山天文台、国家天文台が共同で開発した。

 このほか中国は、直径500mという世界最大の電波望遠鏡の建設に貴州省で着手した。中国科学院国家天文台が2008年12月29日に明らかにしたもので、FAST(Five-hundred-meter Aperture Spherical Radio Telescope)と呼ばれている。

FASTは2013年頃の完成が予定されている。完成後は、全米科学財団(NSF)が南米プエルトリコに保有しているアレシボ電波望遠鏡の350mを抜いて、単体の電波望遠鏡としては世界一になる。

 中国科学院国家天文台によると、建設費用は約7億元。完成後は、電波天文学の研究促進のほか、地球の周回軌道上の人工物(スペース・デブリ)の監視などにも使われることになっている。

 中国科学技術協会が2008年3月20日に明らかにしたところによると、中国は天文衛星「硬X線調整望遠鏡」(HXMT)の打ち上げを2010年に計画している。ブラックホールなど、天体物理分野での研究に大きく貢献すると期待されている。

 HXMT以外にも、中国とフランスが提携して製造する空間天文衛星「空間変源モニター(SVOM)」が2012年に打ち上げられる予定になっている。また、フランスとロシア主導の「小型衛星太陽爆発監視衛星」(SMESE)でも中国は重要な任務を引き受けている。

 天文学研究のインフラが徐々に整備されるなかで、課題も浮上してきている。中国では現在、天文学の研究者は中国科学院・国家天文台と一部の研究所に集中している。表9.8に示したように、天文学の専門研究員は絶対数でも少なく、人的資源の投入量もそれほど大きな伸びを示していない。

 中国国内のいくつかの大学には天文学の教育と研究を行っている優秀な学者がいるものの、外国と比較すると全体的に少ないのが現状である。

 中国科学院国家自然科学基金委員会が共同で設立した「天文共同基金」は、天文学研究を重点的に奨励するためのものである。同基金の設立は、大学での天文学研究を強力に後押しするものと期待されている。また、天文学分野での中国科学院と大学との協力を強化するため、大学の天文学科への資源投入を拡大することが計画されている。

 なお、中国の天文学研究は、2001年4月に設立された中国科学院国家天文台が中心になって行われている。国家天文台は、中国科学院所管の雲南天文台、南京天文光学技術研究所、ウルムチ天文台、長春天文台およびその他の3観測所・1研究所を統合してできたもので、中国科学院院士5名、教授クラスの研究者80名、准教授クラスの研究者140名のほか、博士課程修了の研究者22名が在籍している。また、修士課程146名と博士課程241名の学生が登録されている。

 国家天文台は、観測や理論天文学の研究に加え、基礎天文学に関連したハイテク技術研究開発を行うことを目的としている。以下のような幅広い分野が研究対象になっている。

  • 宇宙の大規模構造
  • 銀河の誕生と進化
  • 高エネルギー天文学
  • 星の誕生と進化
  • 太陽磁場および太陽・惑星間空間の環境
  • 宇宙での観測手法および宇宙探査
  • 太陽系天体の動力学
  • 天文学観測手法・技術

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