第十二次五ヶ年計画における緑色発展の実態と動向
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第1章 「第12次5ヵ年規画」を解読する

1.1 「第11次5ヵ年」期の回顧

(1) 「第11次5ヵ年」期の成果

 「第11次5ヵ年規画綱要」では、国民経済の発展速度を維持した健全な発展及び全面的な社会の進歩、小康社会に向けた重要な進展を実現するという目標が掲げられた。また、2010年の1人あたり国内総生産(GDP)を2000年比で倍増させるという経済目標が設定された。こうした目標については、単に経済成長のスピードを追求するのではなく、産業構造の最適化や効率の向上、消費削減を通じて達成することが求められた。省エネと排出削減についても、具体的な目標が設定された。第1-1-1表に、「第11次5ヵ年規画綱要」で設定された主な指標と達成状況を示す。

第1-1-1表

(2) 省エネ・排出削減

 中国政府は「第11次5ヵ年」期間中、体系的な省エネ及び汚染物質の排出削減策を打ち出した。中国では同期間以降、中央政府予算から894億元、中央財政の省エネ・排出削減特別資金から1338億元が省エネ・排出削減分野に投入された。

 こうした資金は、工業用石炭焚きボイラ改造プロジェクトや省エネ恵民プロジェクト、立ち遅れた生産設備の閉鎖、建築省エネ改造、大型公共建築物の省エネ、契約型エネルギー管理(EPC)、都市汚水処理インフラ建設、三河三湖(淮河、海河、遼河及び太湖、巣湖、填池)及び松花江流域水質汚染防止、省エネ技術研究開発及び産業化支援、省エネ・排出削減監督管理能力構築などの十大重点省エネプロジェクトに投入された。

 また、省エネ・排出削減の一環として、天然ガスの積極的な開発及び石油製品の品質向上、石炭及び石油の採掘率の向上、送電ロスの減少、省エネ調整・発電権取引が積極的に推進されたほか、水力発電や原子力発電、風力発電などの非化石エネルギーの開発も着実に進められた。

 低炭素経済を構築するうえで、産業構造の調整が重要な鍵を握っている。産業分類で見ると、第二次産業はエネルギー消費量が大きいだけでなく二酸化炭素の排出量も多い。中国では、第三次産業の占める割合が着実に上昇しており、エネルギー消費量が大きい工業分野のマーケットシェアが低下している。2005年との対比では、2009年におけるエネルギー消費原単位が小さい20産業の工業総生産額に占める割合が0.6%増加しており、このことは、わずかだが中国が低炭素化に向かっていることを示している。

 中国のエネルギー構成及びエネルギー消費の推移を見ると、過去30年間、石炭が大きなウェイトを占めるというエネルギー構造は大きく変わっていない。2009年の一次エネルギー消費に占める石炭の割合は70.4%となったものの、1980年時点の72.2%から1.8ポイントしか低下していない。一方で、一次エネルギー消費に占める非化石エネルギーの割合は4%から7.8%に上昇した。

(3) エネルギー消費原単位と二酸化炭素排出原単位

 中国のエネルギー消費原単位は、1980年時点では3.4標準炭㌧/万元であったが、2009年には1.08標準炭㌧/万元まで低下した。特徴は、各産業部門のエネルギー消費原単位がいずれも減少していることであり、1995年から2008年のデータで見ると、農業では34.3%、工業では44.8%、建築業では13.6%、サービス業では32.7%、それぞれ減少した。産業部門間のエネルギー消費原単位には大きな差が見られ、工業部門のエネルギー消費原単位が他の部門に比べて突出して大きい。

 中国では、エネルギー消費原単位の大きい工業部門のGDPに占める割合が一貫して増加傾向にあるのに対して、エネルギー消費原単位が相対的に小さい農業部門の割合は減少傾向にある。経済構造の変化から見ると、工業部門の拡大はエネルギー消費原単位にマイナスの影響を与え、これによってエネルギー消費原単位は上昇傾向を示すと予想されるが、中国のエネルギー消費原単位は減少している。このことは、各部門のエネルギー消費原単位が大幅に減少したことを示している。

第1-1-2表

  二酸化炭素排出原単位の変化は、エネルギー構造及びエネルギー消費原単位の変化に依存している。中国の過去30年間における二酸化炭素排出原単位の変化の主な要因は、エネルギー構造の変化ではなくエネルギー消費原単位の変化によるものと考えられている。第1-1-3表からも、各年の二酸化炭素排出原単位の変化の要因の約9割はエネルギー消費原単位の変化であることが分かる。

 産業構造の変化によって、全体のエネルギー消費原単位は減少している。具体的に産業ごとの寄与度からみると、全体のエネルギー効率の改善は主に工業分野におけるエネルギー消費原単位の減少に影響され、その全体への寄与度は75%を超える。

 工業分野だけとっても、主に各部門のエネルギー消費原単位の減少によって工業分野におけるエネルギー消費原単位は減少(寄与度は90%以上)し、その中でもエネルギー消費の大きい工業部門の寄与度は70%近くに上る。第1-1-4表に示すように、工業分野全体のエネルギー消費原単位の改善が二酸化炭素排出原単位に及ぼす影響は約70%で、その中でも重点エネルギー消費工業におけるエネルギー消費原単位の低下が中国の二酸化炭素排出原単位の変化に及ぼす影響は約50%に上る。

第1-1-3表
第1-1-4表

(4) 「第11次5ヵ年」期の未解決問題

 「第11次5ヵ年」期には一定の成果が収められた一方で、以下に示すような、発展にともなう問題も明らかになった。こうした問題の解決が「第12次5ヵ年」期の課題となる。

  • ①経済成長の不均衡
  • ②所得分配の不均衡
  • ③工業製品の拡大と弱い国際競争力
  • ④国民生活の改善と公共サービス分野の発展の遅れ
  • ⑤都市化率の大幅な上昇と都市・農村の二元構造の顕在化
  • ⑥生態文明建設への圧力
  • ⑦体制改革の必要性

 また、前述した未解決問題の発生要因としては、以下のようなものがあると考えられている。

  • ①従来の粗放型発展パターンからの未脱却
  • ②全要素生産性(TFP)の低下
  • ③過度の重工業化

 さらに「第11次5ヵ年」期に示された発展方式は、とくに以下の4つの面において基本的に持続不可能であると指摘されている。

  • ①資源、環境面での持続不可能性
  • ②貿易発展モデルの持続不可能性
  • ③産業構造の持続不可能性
  • ④需給バランスの持続不可能性

1.2 「第12次5ヵ年規画」の解読

(1) 「第12次5ヵ年規画」の特徴

 「第11次5ヵ年規画綱要」と比較すると「第12次5ヵ年規画綱要」には2つの特徴がある。1つは、内容が2つ追加された点である。具体的には、「内需拡大戦略を堅持し、安定的で比較的速い発展を維持する」ことと、「大幅な文化的発展、繁栄を促進し、国家の文化的ソフト・パワーを向上させる」ことである。もう1つは「第11次5ヵ年規画綱要」で示された体制改革と対外開放を「第12次5ヵ年規画綱要」では2つに分けた点である。

 「第12次5ヵ年規画綱要」では、「内需拡大」を最も優先すべき項目の一つとして掲げた。「第11次5ヵ年」期間中に発生した世界金融危機は中国にとって非常に大きな教訓となった。「第12次5ヵ年規画綱要」に盛り込まれた新たな項目は、中国のグローバル経済に与える影響及び国内状況を考慮した上で、科学的分析に基づき導出された結論である。中国の最も特筆すべき特徴として巨大な人口が挙げられる。人口は、これまでは中国にとって負担あるいはマイナス要因とされてきたが、現在ではむしろプラス要因として捉え、13億人の巨大な市場を国内経済の発展のために開発、利用する必要があるという考えに変わってきた。

(2) 発展方式の転換 

 中国の1人あたりGDPは2010年に4000米㌦を超えたと見られ、すでに中/高所得国家の1つに数えられるまでになったが、中間所得段階は国内の社会問題が増え、それまでの社会構造から脱却する重要な段階であると指摘されている。また、中程度の所得を確保した国家は、さらなる発展、1人あたりの所得水準の一層の向上を目指すなかで、その成長方式は本質的に変化し、発展方式を根本的に転換する必要が出てくるとの見方がある。

 こうしたことから「第12次5ヵ年規画綱要」では、今後5年間の発展方式の転換には、以下の内容が含まれるとしている。

① 経済構造の戦略的調整

 外需、投資に依存してきた中国経済を、内需と外需、投資と消費がバランスの取れた発展方式へと転換を図る。

 ―内需拡大を中国経済発展の基本、長期的な戦略方式、構造調整の核心的内容とする。中国は人口が多く、内需拡大ポテンシャルは非常に大きい。

 ―産業構造の調整。産業構造から見ると、農業インフラの強化、製造業における核心的競争力の向上、戦略的新興産業の育成、サービス業の発展を図る必要がある。現在は第二次産業に過度に依存しているが、第一次、第二次、第三次それぞれがバランスの取れた発展を促進する必要がある。

 ―都市と農村におけるバランスの取れた発展。「第12次5ヵ年」期間中に中国の都市化率を50%以上に引き上げることを目標とする。これは半数以上の国民が都市部で仕事あるいは生活することを意味する。

② 経済発展方式の転換における科学技術の進歩とイノベーション能力

 中国では重要産業における対外技術依存度は非常に高く、経済成長への技術進歩の貢献度は非常に低い。このため長期的な競争力を高めるため、経済成長を「投入要素への依存」から「科学技術の進歩、労働者の資質の向上、マネジメントのイノベーションに依存する」方向へと転換を促す。

③ 国民生活の改善を経済発展方式の出発点及び基点とする

④ 経済発展方式の原動力としての改革開放

 経済発展方式の転換の停滞は様々な要因によるが、根本的には非合理的なメカニズムによる。「第12次5ヵ年」期では発展方式の転換を加速するためのメカニズム構築が求められている。