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【13-009】中国の大学・研究機関等の知財問題及び中国著作権法に関する最新法律事情(第2回)中国商標法の概要

2013年 6月13日

遠藤 誠

遠藤 誠(Makoto Endo):BLJ法律事務所 弁護士/博士(法学)

2003年から森・濱田松本法律事務所で10年以上にわたり中国知財関連業務を取り扱ってきた。その後、同事務所から独立して、2013年4月に「BLJ法律事務所」を開設(http://bizlawjapan.com/)。『中国ビジネス法務がよ~くわかる本(第2版)』(秀和システム)、『中国特許法逐条解説』(日本機械輸出組合)等、中国知財に関わる書籍・論文の執筆のほか、セミナー・講演も多数行っている。

Ⅰ 「商標法」とは

 商標法は、商品や役務(サービス)の名称、即ち、ブランドを保護するための法律です。従来から、中国では、有名ブランドの商標権を侵害する模倣品が大きな問題とされてきましたが、近時、中国では、外国の有名なブランド等を、関係のない第三者が無断で商標の冒認出願・抜け駆け登録することがよく行われています。日本企業・日系企業としては、日本だけでなく、中国等でも商標登録を行うことが重要です。

Ⅱ 商標法及びその関連法令

 中国は、WTO加盟のため、2001年に商標法を全面改正し、これにより、中国の商標法は、国際水準をほぼ満たしました。中国は、パリ条約、マドリッド協定及び議定書(マドリッド・プロトコル)、ニース協定等の国際条約にも加入しており、商標の国際登録出願も認められています。

 商標法との関連では、商標法実施条例のほか、様々な行政法規及び司法解釈等が出されています。商標の登録管理部門である国家工商行政管理総局が制定・公布したものとしては、「著名商標の認定及び保護に関する規定」、「団体商標及び証明商標の登録管理規則」及び「マドリッド協定及びその議定書に基づく商標国際登録実施規則」等があります(いずれも2003年6月1日施行)。

Ⅲ 登録商標

 商標局の審査を経て登録を認められた商標のみが、登録商標となり、商標専用権の保護を受けることができるのが原則です(3条)。但し、商標法は、この原則を修正しており、例えば、次に述べる著名商標の保護の面では、中国で未登録の著名商標であっても、商標法により一定の保護を受けることができます(13条)。

 登録商標には、商品商標、サービスマークのほかに、団体商標及び証明商標(3条)が含まれます。登録商標の出願主体は、「自然人、法人又はその他の組織」(4条)です。商標として登録出願できる視覚的標章は、「文字、図形、アルファベット、数字、立体的形状及び色彩の組合せ、並びにこれらの要素の組合せを含む視覚的標章」です(8条)。

 登録商標の存続期間は登録日から10年です。10年ごとに更新登録を行えばさらに10年存続します。

Ⅳ 商標の登録出願

 中国は、商標の登録出願について、先使用主義ではなく、先願主義(先に出願を行ったものが優先的に商標権を取得することができるという原則)を採用しています(29条)。

 商標の登録出願にあたっては、一定の商品(サービスを含みます。以下同じ)を指定することが必要です。既に同一又は類似の商標が、同一又は類似の指定商品で出願又は登録されている場合は、当該登録出願は拒絶されることになります。

 商標登録手続には、①出願、②審査、③初期査定(公告)、④登録(公告)の4つの段階があります。また、商標の登録過程における紛争処理手続として、①出願拒絶に対する不服申立(32条)、②初期査定の公告がなされた商標に対する異議申立とこれに対する決定についての不服申立(33条)、③登録商標に関する紛争処理手続(5章)の3つがあります。

Ⅴ 著名商標の保護

 「著名商標」(中国語では「馳名商標」)とは、「中国において関係する公衆に熟知され、かつ比較的高い名声を有する商標」をいいます(「著名商標の認定及び保護に関する規定」2条1項)。「中国において」という限定があることから、日本でいくら有名であっても、中国で有名でなければ意味がありません。なお、「公衆」には、消費者のみならず、商品の生産者、サービスの提供者、及び販売者等も含まれます(「著名商標の認定及び保護に関する規定」2条2項)。

 著名商標の保護は、商標法の2001年改正の中で最も重要な改正の1つです。商標法は、まず、中国で商標登録を受けていない著名商標について、同一又は類似の商品上に当該著名商標を複製、模倣又は翻訳した商標を登録することを認めず、かつ当該商標の使用を禁止しました(13条1項)。さらに、既に中国で商標登録を受けている著名商標については、その保護の範囲を「同一又は類似」でない商品にまで拡大しました。すなわち、登録出願された商標が既に中国で商標登録を受けている著名商標を複製、模倣又は翻訳したもので、公衆の誤認を招き、商標権者の利益を侵害するおそれがあるときは、登録を認めず、かつ使用を禁止しました(13条2項)。著名商標の認定の際に考慮される要素としては、①関連する公衆の当該商標に対する認知度、②当該商標の継続的な使用期間、③当該商標のあらゆる宣伝業務の継続期間、程度及び地理的範囲、④当該商標の著名商標としての保護記録、⑤当該商標が著名であることのその他の要素、の5つが定められています(14条)。

 現在の著名商標の制度では、紛争案件(これには、商標局や商標評審委員会のような行政機関の場合もあれば、人民法院の場合もあります)ごとに、出願により、著名商標の認定をする制度になっています。また、著名商標の認定の効力は、基本的に当該紛争案件のみに及び、他の紛争案件には及びません。

 日本企業・日系企業関連で著名商標の認定を受けたものとしては、例えば、日産 NISSAN、YKK、大金DAIKIN、Panasonic、HONDA、豊田、SANYO、東芝TOSHIBA、JVC、NIKON、CASIO等があります。

Ⅵ 商標権侵害行為

 商標権侵害行為は、以下のような場合に成立します(52条、商標法実施条例50条、「商標民事紛争案件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈」1条)。

商標登録者の許諾を得ずに、同一商品又は類似商品に当該登録商標と同一又は類似の商標を使用した場合
登録商標専用権を侵害する商品を販売した場合
他人の登録商標の標章を偽造しもしくは無断で製造し、又は偽造しもしくは無断で製造した他人の登録商標の標章を販売した場合
商標登録者の同意を得ずに、当該登録商標を変更し、かつ変更した当該商標を使用する商品を市場に投入した場合
同一商品又は類似商品に、他人の登録商標と同様又は類似の標章を商品の名称又は商品の装飾に用い、かつ誤認させた場合
故意に他人の登録商標専用権を侵害する行為について、倉庫保管、輸送、郵送、隠匿などに便宜を供与した場合
他人の登録商標と同一又は類似する文字を企業の屋号とし、同一商品又は類似商品において際立つように使用し、容易に関連の公衆を誤認させた場合
他人の登録している著名商標又はその主要な部分を複製し、模倣し、又は翻訳し、同一ではない又は類似しない商品において商標として使用し、公衆の誤認を生じさせ、当該著名商標の登録者の利益に損害をもたらすおそれのある場合
他人の登録商標と同一又は類似の文字をドメインネームとして登録し、且つ当該ドメインネームにより関連商品の取引というインターネットビジネスを行ない、容易に関連の公衆を誤認させる場合

Ⅶ 商標使用許諾契約

 他人にその登録商標の使用を許諾した場合、ライセンサーは、商標使用許諾契約の締結日から3か月以内に契約の副本を商標局に届け出なければなりません(商標法実施条例第43条)。日本企業・日系企業がその有する商標を中国企業に使用許諾することにより対価を受け取るような場合には、上記の届出を確実に行っておくことが必要です。なお、届出が必要とされていることから、中国語の契約書を作成することが不可欠です(英語や日本語等で同じ内容の契約書を作成することは任意です)。

 商標使用許諾契約が届け出られていない場合、当該許諾契約の効力には影響しませんが、善意の第三者に対抗することができないとされています(商標紛争司法解釈19条)。

Ⅷ 商標の冒認出願・抜け駆け登録の問題

 近時、中国では、外国のブランド等が中国ではまだ商標登録されていないことを奇貨として、第三者が先に当該商標を出願・登録するという問題(「冒認出願」又は「抜け駆け登録」等と呼ばれます)が増加しています。日本企業が巻き込まれた事案としては、「クレヨンしんちゃん」のキャラクター及び中国語名、並びに、良品計画の「無印良品」及び「MUJI」が、中国の第三者によって商標登録されていた例が挙げられます。ちなみに、中国の商標登録・出願の状況は、ウェブサイト『中国商標網』(http://sbj.saic.gov.cn/)で調査することができます。

 もし、日本企業・日系企業のブランド等が中国で商標の抜け駆け登録をされてしまうと、将来、非常に困ったことになる可能性があります。例えば、当該商標を付した商品を中国に輸出・販売しようとしても、商標登録者により販売等を差し止められたり、損害賠償を請求されたりするおそれがあります。さらには、商標登録者から、当該商標を法外な値段で買い取るよう要求してくるおそれもあります。第三者による商標登録を取り消したり、異議を申し立てる法的手段については、いずれ、回を改めて解説することといたします。


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